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みじかいたんぺん

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みじかいたんぺんです。短いです。体感時間は長めです(たぶん)。
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#オリジナル小説

世界の終わり×7

世界の終わり×7

 『明日世界が終わるとして』という企画がテレビや動画を席巻していたことがあった。

 高畑君という人物と飲むことになった。
 そのとき彼は、7日連続でその企画をやっていた。

 違うテレビ局やら動画やらの依頼が次々きて、そういうことになっていた。

 1日目で彼は全財産を失った。明日世界が終わるのだから、金なんてもっていてもしかたないだろということで。
 もちろんテレビの企画だ。あとで返金される。

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燕雀

燕雀

 作並さんは理解が早い。
 プレゼンの資料を読んだだけで、それがどう発展して、やがて消えていくか、その後どんな類似のものが出てくるのかまで分かる。

 なんでそんなことまで分かってしまうのか、我々は尋ねるのだけど、

「…燕雀いずくんぞ」

 とぼそりと言って、それっきり。
 それも扇かなんかで口元を隠すような言い方なのだ。
 まことに失礼極まりないのだけど、その通りなので言い返せない。

 確か

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ハートランド

ハートランド

 瓶ビールをのんだ。飲み口になんとなく薬指を突っ込んだ。
 抜けなくなった。
 第二関節が入ったときから嫌な予感はしていたのだ。

 もうこれはそんじょそこらのやり方ではとうてい抜けっこないというのは分かっていた。
 自分の身体のことだ。分かる。

 金づちで破壊する。それが最初で最後の解決策だ。

「あのう」

 声が聞こえた。
 すぐ近く。
 小さな声だがはっきりと。

「あのう」

 間違い

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家を建てる

家を建てる

 この先、家を建てるには、どうしてもドアを作ってくれる人が必要になってくる。
 だってドアをすっとばして壁を作ってしまったら、言うまでもなく出入りできないことは目に見えているからだ。

 こんなことになってしまって、私の計画に問題があったことは重々分かっている。
 でもただでこの山の土地がもらえて、その上、練習したいと言って基礎工事をただでやってくれる人が現れたのだ。
 これは家を建てろと言われて

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ジュクジュク

ジュクジュク

 今日の私の担当はジュクジュクだった。

 先輩から今日の私の担当がジュクジュクだと言われたとき、一瞬抗議の気持ちが起きた。
 昨日はジクジクだったのに。

 でも飲みこんだ。
 新人が生意気なんて言えないのだ。

 それにそんなことを言えば、私が出始めの頃なんか、グズグズやネバネバなんかが立て続けに来たもんよなんて言い返されるのは目に見えている。

 結局私はそれに従った。
 文句も言わず、ジュ

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皆上さん、おこるおこるおこる

皆上さん、おこるおこるおこる

前回

 水虫のボーダー君と皆上さんの交際は順調のようだった。
 僕らはこれは何かの気まぐれか、あるいは冗談の類なのかと思っていた。

 でもしばらく彼らを見ているうち、二人はまあまあ出会うべくして出会ったお似合いの二人なんだろうと思えるようになっていった。

 例えば最近皆上さんは、周りに対してよく怒りを露わにするようになってきていた。
 するとボーダー君がまあまあと止めに入る。
 彼女はそんな

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ずんだ

ずんだ

 サドンデス戦に突入した午後からの試合は、例年通り足ジャンケンで行われるはずだった。でも何故か会場にはオムライスが並べられることになった。

 長机に横一列に八つのオムライスが湯気を立てている。
 この中に一つだけ中にワサビが入っているものがある。

 それを全部食べた者が優勝ということだ。

 よく分からない。

 ワサビが入っていなかった時点で、残りの選手たちは負けということか?
 それに、運

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皆上さん、おこるおこる

皆上さん、おこるおこる

 あの皆上さんが、僕らの前でこんなにも怒りを露にするなんて、まったくもって信じられないことだった。

 僕と彼女との付き合いは二年くらいになる。
 それまで声を荒げるどころか、悪口一つ聞いたことすらない。

 育ちも良い(京都嵐山の老舗旅館の一人娘)。もちろん礼儀作法やなんかも幼い頃から厳しく躾けられている。
 
 性格も慎ましい。竹林みたいに穏やかだ。 
 誰に話しかけられても、聞いてるこちらが

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