家を建てる
この先、家を建てるには、どうしてもドアを作ってくれる人が必要になってくる。
だってドアをすっとばして壁を作ってしまったら、言うまでもなく出入りできないことは目に見えているからだ。
こんなことになってしまって、私の計画に問題があったことは重々分かっている。
でもただでこの山の土地がもらえて、その上、練習したいと言って基礎工事をただでやってくれる人が現れたのだ。
これは家を建てろと言われているようなものだと私が思ったからといって、誰も責めやしないだろう。
さらに基礎工事をしてくれた人は、練習で床と柱を作ってくれる人を連れてきてくれた。
もちろんただだ。
それで彼らが作業をしていると、それをどこかで聞き知った壁を作ってくれる人も現れ、間もなく窓を作ってくれる人もやって来た。
来月から彼らが家づくりの中心を担うことになる予定だ。
そう。そこまではすごく順調だった。
でもここへきて、ドアを作ってくれる人が一向に現れない。
昨日なんて電話がかかって来て、屋根を作りましょうかと言われて今週中にはその返事をしなければならない。
床も柱ももう少しで完成といったところだ。
彼らは今、時間が余ったからと言ってどこかからきれいな御影石を調達してきて、片手間に玄関を作ってくれている。
でももちろん屋根がないため、雨が降ればかぶせたシートのところどころが凹んで、水が溜まる。
色々なところに大小の蜘蛛が巣を作っている。
ピカピカのフローリングの床は土でざすざすするし、木の葉や小さな虫や、ゲジゲジやムカデ、栗なんかがいくら掃除してもきりがないくらいいつでも転がっている。
朝なんて霧がかかっているので滑るほどだ。
だから早く屋根も壁もつけたい。
でもこのままドアなしで工事を進めてしまえば、これは知らない人から見れば、少し立派な山の公衆トイレと間違われても仕方がないように思う。
ドアだけ単品で、業者とかホームセンターとかに頼んでつけてもらうことも考えた。でもそうすると、それ以外のただでやってくれている彼らが何て思うか。
だから私はこのまましばらくドアを作ってくれる人を待ち続けようと思う。深い土の中で光を待つ種のように。
もう後にも引けないし、すべて終わりにだってできない。
家づくりがこんなにも忍耐を強いられるものだったなんて。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?