フォローしませんか?
シェア
森てく
2021年7月24日 21:07
今の時代、間違い電話なんてかけてくるのはリスかサルかクマかウサギくらいのものだと思っていた。 けど今日はカラスがそのリストの中に加えられた。 確かに思えばこいつがいた。今まで来なかったのが不思議なくらいだ。「はい、もしもし」「アーッ、アーアッ」「もしも…」「アアアアアー」 ずうっとこんな調子である。向こうはおそらく、これで話が通じていると思っているのだ。 でも読書百
2021年7月20日 16:00
この前不老不死の薬を手に入れた。 これを三十倍に希釈すれば、十年くらい生きられる薬を30本は作れるはずだ。 なんて皮算用していると、あくる日に娘がことごとくカルピスやフルーチェやゼリーなんかの材料にしてしまった。 朝起きると、枕もとに彼女が立っている。赤い液体の入ったタッパーを持ち、お父さんが昨日持ってきた薬で今ゼリーを作ったとこなんて言っている。 粗熱をとっているらしい。
2021年7月17日 20:02
扇風機を買った。自分だけの扇風機である。 今までは寒いところにいたので、もちろんこういうものがあることは知ってはいたけど、はっきり言ってなじみのないものだった。 でも、新たな引っ越し先が私の生活を一変させた! こんなに暑いだなんて!! それで私は泣く泣く扇風機を買ったのだ。様々な葛藤と、流れに逆らって進んでいくような精神的抵抗に合いながらも。 それまで私にとって暑さというもの
2021年7月13日 22:09
分身できるようになったまではいい。 その日は三人に分身して、二人にそれぞれ家事と仕事を任せた。 僕は寝ようとした。 すると、今別れた分身の二人も座布団を枕に僕の横に寝た。 彼らも一人ずつ分身を作って、彼らに自分たちの仕事を任せたのだ。 一時間後に職場から電話が来た。僕がきてないらしい。 熱があると言って今日は休んだ。 買い物に行くと言って出て行った一人も帰ってこない。
2021年7月8日 21:23
キャンペーンが始まった。 僕らはキャンペーンキャンディーと、キャンペーンパンを作り、キャンペーンに来てくれたお客さんに次々渡した。 初め子供にキャンディー、大人にパンを上げたが、どうも逆の方が喜ばれるみたいだった。 今日のキャンペーンは、タイムトラベルキャンペーンということで、やってきた人全員を三年前に戻すという試みがなされた。 契約すれば、30年前にでも、とにかくお好きな時間に戻す
2021年7月6日 21:13
星付きのシェフたちが会して、ジャンケンで星を奪い合うという闇の大会が、今年も新潟の市民センターで開催された。 今回の大会で世界でただ一人の13星シェフが誕生し、一方で50人のシェフが星を失い泣きながら会場を後にした。 大会は年々盛り上がりを欠いていく。やはり今回もその物議は再燃された。 まず、この大会が一番盛り上がっていたバブル期に導入された代返制である。 当シェフの代わりにジャン
2021年7月2日 18:12
クマ邸の防衛システムは時間を止めてしまう。 だから泥棒が何人いようが無力だ。 警報が鳴る。時が止まる。 するとその世界を一人自由に行き来できるクマばあさんが、がたがたと家の戸を開けて出てくる。 そうして入れ歯のない口をモグモグしたりしながら、曲がった腰で時間が止まった泥棒たち一人ひとり荒縄できつく縛り上げていくのだ。 彼らが気づいたときには干し柿や新巻鮭と並んで軒に吊るされてい