不老不死薬希釈

 
 この前不老不死の薬を手に入れた。
 これを三十倍に希釈すれば、十年くらい生きられる薬を30本は作れるはずだ。
 
 なんて皮算用していると、あくる日に娘がことごとくカルピスやフルーチェやゼリーなんかの材料にしてしまった。

 朝起きると、枕もとに彼女が立っている。
赤い液体の入ったタッパーを持ち、お父さんが昨日持ってきた薬で今ゼリーを作ったとこなんて言っている。
 粗熱をとっているらしい。

 味見する過程で、彼女も犬もけっこうな量の薬をきこしめしたらしい。

 確かにテーブルの上に置いておいた自分も悪い。

 どれくらい飲んだか、ざっと計算すると、多分彼女も犬も、四十年くらい寿命も若さも伸びたはずである。

「婚期がのびるぞ」

 と、私は言った。

「いいもん」

 と、彼女はまったく意に介さない。

「私お父さんと結婚するから」

 うれしいことを言ってくれる。

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