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#ショートストーリー
【短編小説】おしゃべりの時間
「私カオリ。あなたはどうして、そんなところにぶら下がっているの?」
「それはね、揺れるのが好きだからさ」
「あなたはどうして、そんなにもしわしわなの?」
「それはね、たくさんの苦労を経験したからさ」
「あなたはどうして、そんなにも毛むくじゃらなの?」
「うーん、素顔を見せるのが少し恥ずかしいからなのかもしれないね」
「ふーん。あなたはどうして、そんなにも強いにおいを放っているの?」
「それは
【短編小説】大いなる意志
この作品内において、犬・猫が負傷および絶命する描写は含まれておりません。安心してお読みください。
その夜、浅倉五郎はサバイバルナイフを中年の女の締まりがない肉体に何度も繰り返し突き刺した。どくどくと溢れ出る血が、ゆっくりと路肩の溝に吸い込まれていく。女はすでに絶命していたが、それでもなお子犬をつないだリードを握りしめていた。人っ子一人いない、切れかけの街灯がパチパチとさえずる夜道にひとり残さ
【短編小説】あこがれのほうき
世の中には、二種類の人間がいます。学校の掃除時間にほうきを使っても許される人間と、許されない人間です。わたしの場合は、後者。ずっとずっと、手の汚れるぞうきん係でした。
小学校では、どの掃除用具を使えるかは早い者勝ちで決まりました。五時間目の終わりを告げるチャイムが鳴ると、クラスのみんなは教室の隅っこにある掃除用具入れに勢いよく群がります。ほうきの取り合いです。わたしはとてもどんくさかったけ
【短編小説】マリンライナーに乗って
今、電車が動き出した。ガコン、ガコンって、十七歳にもなって、生まれてはじめての感覚。この電車はマリンライナーっていうらしい。高松から岡山ってところまで行けるんだそう。私、ずっと高松に住んでるのにバカだから知らなかったわ。
二十分くらい前。高松駅で「遠くに行きたいんですが!」って駅員さんに元気いっぱい叫んだら、このマリンライナーのことを紹介してくれた。「海の向こうに行けますよ」って言うから即決。
【短編小説】宇宙人になった息子
私は今、夜空を眺めています。ある日の息子との会話を脳裏に浮かべながら、星々がさざめく、涙が出るほど美しい夜空を眺めています。
それは十二年前、息子の翔太(しょうた)が小学四年生だった頃の話です。
学校の先生によると、翔太は『ちょっとみんなと違う子』らしく、母子家庭なのも相まってか、同級生からちょっかいを出されることがよくありました。でも、当の本人はと言うと、この日だってお気に入りの消