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COLOR 今の旅芝居・大衆演劇で最も人気の劇団を観て

今の旅芝居・大衆演劇界で最も人気のある劇団の舞台を観た、
ひさびさに、先日。
最も人気だなんて書いたが間違いではない。
正確に言うなら「最も人気のある劇団、の内のひとつ」か。
興行が盛んな関東、関西、九州、おおきく3つにわけた
どれもの地域でどこのどの劇場でもお客さんを集める劇団だ。
 
前楽、つまり千穐楽の前の日の夜だった。
関東のコースを6か月廻ってきての大千穐楽前夜。
二階席までぎっしりの満員の客席の熱に圧倒された。
拍手喝采、悲鳴のような歓声も上がる。
二階席から落ちるんじゃないかというほど
身を乗り出して観ている客も少なくなかった。
 
芝居は『文七元結』。
圓朝の人情噺、いい話なんだ。
でも人情の滲みよりもドタバタが目立つようなやり方だった。
前楽の空気や客席の熱と興奮によるものもあったのかもしれない。
艶ネタとまではいかないがそんなギャグや笑い、
劇団での立場が上の者から下の者への言葉や体による
いじりや笑いも少なくなかった。
客席は大いに受けていた。
パワハラじゃなくいじりと感じているのかな。
役者や劇団のことが「好き」だから笑う、笑える、というやつなのかもな。(心の)距離感によるものなんだろうな、と思った。
「いかにも」というセリフや幕締めでなんとか人情話ではあったが、
愁嘆場(など)でかかる
某ジブリ映画のしんみりしたインストゥルメンタルや
幕締めでかかる家族愛〜な星野源ソングなども含めて
「ああ、やっぱりイマドキ風やなあ」だった。
文七元結だが、文七元結だけど、今風イマドキ風彼ら版文七元結。
この劇団の芝居はどんな古典も
よい意味でもそうじゃないなと思う意味でもとても今風だ。
芝居がというより劇団の空気やカラーが、なんだかとても。
それも、とっつきやすく、
広く観やすく観られる理由にも繋がっているのかもしれない。
 
舞踊ショーでは客席にとても目線を配る。
二階席にも何度も何度も手を振り投げキッスも飛ばす。
ゴージャスな衣裳に身を包んでの女形が客席に愛想を振りまく。
ほとんど踊っていない、踊れない、踊る暇もない、
各々の胸元は華やかすぎるほどに花が咲く。
選曲は見事なまでに「とっつきやすい」今時の曲と
客席が親しみ深い「大衆演劇系演歌」ばかりで、
古い歌はほぼなかったことには驚いたし、
オジサンやジイサンの役者も居ない。
歌謡コーナーでGLAYのバラードが
フルコーラスで歌われたことには笑ってしまったが。
歌った役者はうまかったけど、
なんだかいけいけな人たちの結婚式もしくはちょっと前の時代のライブ会場みたいだった。
 
熱と熱気にずっとぽかんとし真顔になりながら思った。
 
二極化するのかなあ、やろなあ、
これからの旅芝居・大衆演劇は。
いや、もうしているよなあ。しているんだよなあ。
 
派手な今風の今を取り込む劇団と、
むかしのままむかしながらをやる劇団とが、 
今後、さらに。顕著に。
 
地方や地域(東や西やという意味)じゃない意味でのコースで、
ますますはっきりわかれてゆくのだろうなあ、って。
 
どちらがただしいとか優れているとかは、たぶん、ない。
各々のやり方であり、各々の好みなのだろう。
好みと優劣を混同したり、
好みで正しさを決めつけることは必ずしも正しくないし、
こわいことでもある。
でも、ファンは、それは、いや、それが、ファンの気持ちなんだから、
それも間違っては、いない。
 
舞台が食べてゆくことに直結するそのものの世界では、
「数」、動員数や大入りの数が、今後の仕事やコースへと直結する。
日々毎日とその積み重ねな一か月の積み重ねの結果が。
芸もだ。芸以外もだ。愛想もなんだろうね。
 
「その劇団のやり方」

それぞれのやり方生き方。
 
各劇団や座が、だけではない、
その劇団や座を好きや応援やをしていく客席の者たちが、
共に、つくってゆく。
 
カラーと、やり方と。
 
総座長は、ものすごく客席を意識する。
ずっと、感じていたことなのだが、この日も思った。
誰かをいじったり、笑ったりしているときも、
どこかいつもぱちぱちとバチバチに、
客観的というと言い方は良いが、
誰かやなにかをじっとみているような目をしている。
かつてわたしはそれを「闘志」と例えた(過去記事)。
大人気で、前楽にここまでお客さんを集める劇団となっても、
いや、なっているからこそか。
正直「品のよさ」とはスレスレきわきわ真逆なまでのその闘志は、
生きる力、彼の生きる力生きてき方であり、
先日の記事と重ねていうと、
闘志と表裏一体のさびしさや切なさのようなもの、でもあるのかな。
私的にはちょっとどうなのかなと思う芝居の長兵衛女房役で
「これ、おかあさんの私物」というレギンスを履いて、
暴れ、イジり、笑い、また、客席のさまを見る。手を振る。
投げキッスを配る。目線をおくる。
 
暴れまくる長兵衛女房が着ている法被にふと目が行った。
かつて九州にあったと聞く劇場の名が書かれていたから。
じっと見てしまった。
それはもう知る人も少ない古い劇場の名前だった。

(劇団美山(里美たかし総座長)2024.4・28 夜の部 @篠原演芸場)
 
 

旅芝居を観始めた人や興味を持っている人に勧めている劇団。
「わたしは好きかと言われたら「……」やけど」と必ず付け加えながらもね。
 

『紺屋高尾』や『滝の白糸』も、
まるでまあとても少女漫画にしていた。
滝の白糸は根本限定からひっくり返していた。
マジかよ。と、新派好き女史とピーぎゃーキレた。
が、それも「やり方」やねえ。今風やねえ。


昨日の話と、ちょっと己の中では続く。


10年前の記事。同じようなことを言うてる。


他では読めない旅芝居・大衆演劇記事揃えてますよ。

◆◆
【略歴や自己紹介など】

構成作家/ライター/エッセイスト、
Momoこと中村桃子(桃花舞台)と申します。

旅芝居(大衆演劇)や、
今はストリップ🦋♥とストリップ劇場に魅了される物書きです。

普段はラジオ番組構成や資料やCM書き、
各種文章やキャッチコピーなど、やっています。

劇場が好き。人間に興味が尽きません。

舞台鑑賞(歌舞伎、ミュージカル、新感線、小劇場、演芸、プロレス)と、
学生時代の劇団活動(作・演出/制作/役者)、
本を読むことと書くことで生きてきました。

某劇団の音楽監督、
亡き関西の喜劇作家、
大阪を愛するエッセイストに師事し、
大阪の制作会社兼広告代理店勤務を経て、フリー。
lifeworkたる原稿企画(書籍化)2本を進め中。
その顔見世と筋トレを兼ねての1日1色々note「桃花舞台」を更新中。
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酒場話「心はだか、ぴったんこ」(現在19話)と
大事な場所の話「Home」(現在、番外編を入れて4話)。

noteは「ほぼ1日1エッセイ」、6つのマガジンにわけてまとめています。

旅芝居・大衆演劇関係では各種ライティング業をずっとやってきました。
文、キャッチコピー、映像などの企画・構成、各種文、台本、
役者絡みの代筆から、DVDパッケージのキャッチコピーや文。
担当していたDVD付マガジン『演劇の友』は休刊ですが、
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