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ナツノクモ(著:篠房六郎)【このマンガ紹介は評価が分かれるでがんすよ】

不遇のストーリーテラー篠房六郎先生のマンガ作品。
やはり打ち切り展開なのですが、
最後の強引なフロシキ回収は、
先生の本来望むところでははないのでしょうが、
個人的にものすごく気に入っています。

本作はゲーム世界での謎を解くために、
現実世界でとある探偵が依頼されます。
(本職の探偵ではないのですが)
彼はゲーム世界で名うてのプレイヤー。
しかしリアルでは仕事がありません。
金に困っている彼は仕事を引き受けます。

彼がいかにヤバいプレイヤーであるか、
ゲーム内カウンセリングなどを通じて、
まずは細かい説明がなされます。
そうです。
彼はカウンセリングをゲーム内で受けなければいけないほどヤバいのです。
序章です。

依頼によると、そのゲーム世界のとある場所に行き、
依頼された謎を解く。
ゲームの謎はゲーム内でしか解けません。
プレイヤー同士のいざこざが原因だと思われます。

その場所は「精神動物園」
現実世界でプレイヤーが事件を起こして、
その結果として荒らされてしまった場所。

しかしそこにこだわる者たちは、
現実世界で病に苦しんだりして居場所のないクライアントたち。
いわれなき中傷に苦しみながらも、なお肩を寄せ合って生きている。

そこに現れる謎のイレギュラーチートモンスター。
明らかにハッキングされている強さ。
そしてそれをどうにかする主人公の圧倒的すぎる逆転力。
つ、強い。

・・・・
・・・・
・・・・・
・・・・・・・・

そして打ち切りに伴う強引なネタ割まで。
この強引さは、意図したものではないでしょうが、
なんだか昔のテレビ放映版エヴァンゲリオンとかを思い起こさせる。

****

私はフィクションの存在価値ってなんだろな?
っていつも思ってます。
基本的にフィクションって嘘の物語じゃないですか。
現実じゃない。
にもかかわらず訴求力を持つのは、
何か本質的に重要なものを読者や視聴者が感じ取るから。
そしてそれは所詮は偽りの物語世界の設定部分にはないはず。

だからエヴァみたいに、
物語の続きを放り投げてしまっても、
テーマがちゃんとオチを描いていれば、
意味が通じてしまう。

言語ゲームが成立してしまう。
エヴァはそれを実験的に証明した作品でした。

だからこそハリウッド的な大作には飽きるんです。
同じことの繰り返し。忠臣蔵みたい。
まあそういうのもアリの人には良いのでしょうけど。
同じ作品を何度も観る人もいますからね。

また物語を作る側からすると、
ネタ割を最後に転がして、
本来はこんな感じで進展するはずだったんだな、
というのが分かるって、

上質なミステリを読んでいる気がします。
丁寧に説明せず、分かる人にだけ分かるトリックの謎解き。
本当にヤバいミステリにしかない特徴です。

なんていうか、自分の力だけで謎を解くと、
感動の度合いがレべチ。これがゲームの凄み。

打ち切り前に心理的なドラマもある程度進んでいたので、
「野暮なこと言わなくても後はわかるだろ」
くらいの終わりに持って来れたのがいい。
これがまた上質な作品にしかない雰囲気。

まあ、打ち切りは仕方ないのですが、
もしこれを計算でやってるなら、ゾッとしますよ。
どんだけ脚本を作るのうまいんだよ。
(特に私は脚本を作るのが苦手なのでめまいがする)

シャーデンフロイデかもしれないけど、
たまたま上手くいった結果であってほしいヘタレズム。

これは作家の腕なのでしょうか?
経験の未熟な私には判別がつきません。

↓ 篠房先生の過去に紹介した作品。

ソードアートオンライン(SAO)がスキな人が、
これもスキだって言っていたので、
近いカテゴリにあるのでしょうが。
ゲームマンガです。
でもSAOには、ミステリ要素はあまり感じなかった。

こちらはミステリ臭がすごくする。
非情に話が細かいので、考えるの苦手な人にはつらいかも。

でも名探偵よりも先に謎を解いてやるくらいの人には、
非常に乗れる作品なんだと思います。

ただこの人の作品はいつも不評、打ち切りでして。
理解者が少ないのが悩み。
原作に徹して絵は他の人に任せるとすごくはまるのかもしれませんが。
それはマンガ家を追いかけるものにとって寂しい。


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