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写真にはドラマがある ~松本路子の撮影ノオト~

世界各地のアーティストの肖像を撮影する中で、忘れられないエピソード、写真のこと、自宅マンションのバルコニーから、60鉢のバラ・果樹の季節の便りなどを綴ってみたいと思います。本・映… もっと読む
人やものとの出会いの物語りを、一緒に楽しんでもらえたら、嬉しいです。
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こんにちは! 松本路子マガジンです

こんにちは! 松本路子マガジンです

マガジン始めました月間4〜7回の新作記事を目指しています。現在制作中のニキ・ド・サンファルの映画のこと、世界各地のアーティストたちとの出会いの物語を中心に、折々の写真やエッセイを掲載していきたいと思っています。内容はいろいろですが、まずは以下の興味ある8本の幹から枝葉を伸ばします。ご購読いただけたら嬉しいです!

Contents 記事の主な内容○ニキ・ド・サンファルとの出会いの物語&アート・フィ

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ハノーファーの3人のナナたち~映画撮影ノオト

ハノーファーの3人のナナたち~映画撮影ノオト

ニキ・ド・サンファルの女性像の総称「ナナ」。ドイツ、ハノーファーのライネ河岸に立つ、カラフルな3体の像は「ハノーファーの3人のナナたち」と呼ばれている。彼女たちは初めて美術館から街に飛び出したナナだ。逆立ちし、踊り、どっしりと構える3人は、かつてのハノーファー王国の王妃や歴史上の人物にちなんで「カロリーネ」「シャルロッテ」「ゾフィー」と名づけられている。

1974年に設置された当時、胸と尻を強

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ニキ・ド・サンファルからの絵手紙

ニキ・ド・サンファルからの絵手紙

映画の編集もほぼ終了し、上映の日程を調整中。上映と同時期にシンポジウムを企画。ニキ財団の理事であり、ニキの孫のブルームさんにゲストスピーカーとして来日してもらうことになり、その調整で、予定より公開が少し先になりそうです。決まり次第ご報告させていただきます。

現在、ホームページの制作も進んでいて、そこに掲載する写真をあれこれ思案する中で、思い出したのがニキから届いた絵手紙。額装してしまい込んでいた

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わが家のバルコニーの河津桜が満開! ひと足早い春です。

わが家のバルコニーの河津桜が満開! ひと足早い春です。

わが家の北側バルコニーの河津桜、伊豆からの桜便りに少し遅れて満開になりました。20年近く前に、河津の園芸店で求めた苗が、毎年よく咲いてくれます。都心のマンション4階のバルコニーですから、鉢植えで2mほどの高さを保ち、いわばやや大きめの盆栽のような設え。

開花すると毎日メジロがやってきて、夢中になって花の蜜を吸う姿が見られます。そうしたお客様をリヴィングから眺めるのがこのところの楽しみ!メジロは鶯

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石岡瑛子さんの70年代を物語るポートレイト ~撮影ノオト

石岡瑛子さんの70年代を物語るポートレイト ~撮影ノオト

先週、あるテレビ番組の制作者から、番組内で石岡瑛子の写真を使用したいというオファーがあった。私が彼女を撮影したのは、1977年。パルコのポスターなどの、アート・ディレクションの仕事の最盛期ともいえる頃だ。

撮影場所は、石岡瑛子デザイン室と渋谷のパルコ館内で、ポスターやパネルと一緒に写真に収まっている。当時のポートレイトはあまり存在しないのか、以前にもNHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」とい

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映画のナレーションの収録、小泉今日子さんの声が素敵です。

映画のナレーションの収録、小泉今日子さんの声が素敵です。

ニキ・ド・サンファルのドキュメンタリー映画が少しずつ完成に近づいてきました。一時的にAIの声でナレーションを入れていたのですが、それに代え、スタジオ収録した声を映像と組み合わせたところです。

ナレーションを担当してくれたのは、小泉今日子さん。大人の女性の落ち着きと、弾んだトーンをあわせ持った素敵な声で、ニキと作品のことを語ってくれました。彼女のナレーションが加わったことで、今まで見ていた映像が立

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ニキ・ド・サンファルの自宅を訪ねて~撮影ノオト

ニキ・ド・サンファルの自宅を訪ねて~撮影ノオト

フランスの造形作家ニキ・ド・サンファル。私がパリ郊外のニキの自宅兼アトリエを訪ねたのは1981年6月だった。当時のパリ、ポンピドゥー・センター館長だったポンテュス・フルテン氏がニキに引き合わせてくれた。

ニキは1963年に、パートナーの彫刻家ジャン・ティンゲリーとともに、この家に移り住んでいる。それまで暮らしていたパリ市内のロンサン袋少路のアトリエが取り壊されることになったのがきっかけだという。

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映画に付ける音楽についての、あれこれ、進行中!

映画に付ける音楽についての、あれこれ、進行中!

今月9日、ピアニスト青柳いづみこさんのレクチャー・コンサートに出かけた。最新刊の『パリの音楽サロン ベルエポックから狂乱の時代まで』(岩波新書)の刊行記念コンサート。ショパン「ノクターン作品9-2」の演奏から始まり、ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」まで全8曲。澄んだピアノの音に包まれる至福の時間を味わった。

演奏の合間に、当時の作曲家たちの話や、サロンという場が、どのようにして芸術を生み出

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井津建郎写真展「祈りのかたち」から、オリジナルプリントの醍醐味。

井津建郎写真展「祈りのかたち」から、オリジナルプリントの醍醐味。

先週の日曜日、ルーニィ247の井津建郎展「祈りのかたち」を拝見した。映画の編集がなんとか一段落し、編集室からの帰り道に立ち寄った、久しぶりの写真展。

ブータンのポートレイトは折につれ写真集『BHUTAN』を開いているが、超大型カメラで撮影されたプラチナプリントで見る作品は、また格別。そこに在る人々の透明なまなざし。長い時間、祈ることの気配が堆積した空間。人と空間のアウラがそのまま写し込められてい

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ヨネヤマママコさんのこと ~撮影ノオト

ヨネヤマママコさんのこと ~撮影ノオト

今年9月のある日、本棚の隅に置いてあったピエロ姿のオルゴールが、突然音楽を奏で始めた。ほんの一瞬だったが、もう何年もネジを巻いていなかったので、ちょっと意外な気がした。そして「ママコさんどうしているかな~」と、パントマイマーのヨネヤマママコさんに思いを馳せた。そのオルゴールは、40年位前、彼女の何かの記念日にいただいたものだった。

それから数日経って、ママコさんが亡くなったというニュースを知った

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写真をコレクションするということ

写真をコレクションするということ

昨年10月から今年の2月にかけて、東京国立近代美術館のコレクション展で、松本路子の写真作品が展示されました。「Portraits 女性アーティストの肖像」シリーズの収蔵作品のうち、14点が一つの部屋にまとめて展示されるという、良い機会を得ることができました。

展示が終了して間もなく、スイス人のコレクターからメールが届きました。近代美術館の展示を見たが、作品を購入することは可能か、というお問い合

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安井かずみ ~撮影ノオト~

安井かずみ ~撮影ノオト~

先月、講談社の『週刊現代』編集部より、安井かずみさんの写真借用についての問い合わせがあった。週刊誌のグラビア掲載ということで、スキャンダラスな記事だと困るな、と思ったが(すみません。最近こうした週刊誌を見ていないもので)参考にと送られてきた記事が山口小夜子さんを特集したもので、人物ドキュメントとしての内容だったので、掲載を承諾した。

9月23日号に掲載された記事は「安井かずみを覚えていますか」と

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ユサユサ揺れるバナナの葉が心地良い朝!バルコニー便りです。

ユサユサ揺れるバナナの葉が心地良い朝!バルコニー便りです。

夏の日差しの中で、バナナの葉が風にユサユサと揺れている。ここは都心のマンションのバルコニー。4年前に園芸店のカタログで、アイスクリームバナナ(正式名はブルー・ジャヴァ・バナナ)という苗を見つけて、その美味しそうな名前につられて衝動買いをしてしまった木だ。

マンション住まいで、バナナの木を育てられるか考える前に、注文してしまうのが、いつもの私。6月に届いた苗は高さ40センチほどのか細いもので、やや

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ニキ・ド・サンファルの「タロット・ガーデン」撮影ノオトから②

ニキ・ド・サンファルの「タロット・ガーデン」撮影ノオトから②

「皇帝」のカード

タロット・ガーデンの丘を登ると、「皇帝」のカードをモチーフにした建造物が現れる。ニキはこの場所を「城」と呼んでいた。中庭の回廊には、360度にわたり大アルカナのカードと同じ数、22本の円柱が並んでいる。

円柱にはニキが生涯にわたりモチーフにしてきた無数のオブジェが施され、壁面のレリーフとともに、壮大な宇宙を形成している。それらは人々に自由と幸福をもたらす、造形と色彩のカーニ

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