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11年前、あのとき。
午後2時46分。
娘と幼稚園から帰宅したばかりで、洗面所で持ち帰ったものの洗濯をしていた。
娘はおやつを食べていた。
最初は貧血かめまいだろうかと思っていたが、洗面台の水が派手に撥ねて床にこぼれ、揺れてる?と気づいた。あれ?地震?
「おかあさん、じしん」と口をモゴモゴさせながら娘は言う。こんなに長い揺れは初めてだった。リビングに戻ると、娘の後ろで、55インチテレビが上下左右に揺れていた。酔っ
はだかの王さまと聖火リレー
「王様は裸だ」と言った子どものように、ひとりの男が叫んでいた。
「おまえらは何様なんだ。オリンピックがどれほどのもんだ!くだらない!」
聖火リレーすごく見たい、というほどではないけれど近所を通るらしいという話になって、娘の同級生のYちゃんが、リレーセレモニーに市内中学生代表で出るということを聞いた。
それは見たいな、見にいこうか。一生に一度のことだし。そうだねぇ。
そんな流れで友達と
readingじゃない、scanningなんだ
webサイトの記事・企画に携わるようになって、否応なく感じたことがある。
私と若い世代の、テキスト情報の読み取りスキルは、もう全然違うのだ。
私は昭和の頃から続く活字中毒者だった。
あの頃、印刷してある文字は魔法の呪文と同じで、絶対の魔力を持っていた。自分の言葉を文にするには手書きしか手段がなく、本や新聞雑誌やお菓子の成分表示に至るまで、印刷文字は「正義」であり「権威」であり、間違いなどあっ
銀のスプーンのメッセージ
半分に折れ曲がったスプーンを見たとき、感じたメッセージは「自由」だった。
それは私にとって、もう隷属しては生きられない、ということと同義だ。
会社を辞めた後、やっぱり不安になって何度も就職活動をしたのだが、その度に不可思議な事があった。
ある会社は出社3日目、帰り際にエントランスで、同期入社の子が「この会社変だよ」と耳打ちしてきた。経理に配属された女の子だった。聞き返す間もなく彼女は去り、その
みずうみに眠るコンパス
クリエイティブ・ライティング講座を受けてから一年が過ぎた。
先日、同窓会イベントがあって、そこで久しぶりに同期と再会した。
あの場所で不思議な時間を過ごした仲間たちは、もう全然違う場所にいる。近況を聞いても、環境も興味も全てが違うので、初めて会ったような気がした。
私たちのグループ名は「patience」我慢、忍耐という意味だった。
私にはとても説得力ある単語だった。人生修行、それが当たり