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映画『劇場版 きのう何食べた?』を観た話。

【注意】本記事には、映画の結末などを含んだ #ネタバレ となる内容が書かれています。鑑賞予定の方はその点を留意していただき、お読みくださいますようお願いいたします。


朝起きて、歯を磨く。
タッパーに入れた冷や飯をチンして納豆と味噌汁で軽く朝ごはんを済ませる。にっこりして、満足して、学校に出かける。
ランチはもっぱら麺類か日替わり定食。バイトの前に糖分補給して、家に帰れば簡単な炒め物を作って夕食。たまにデザートも食べて、noteを書いて寝る。平日はその繰り返し。
休日にはめんどくさくてウーバーイーツを頼んだり外食をしたりする。ちょっと無駄使いしてやっちゃったなぁなんて後で反省する。

腹は減る。起きていても、寝ていても、それは変わらない。


映画『劇場版「きのう何食べた?」』。

2021年11月3日より公開の日本映画。原作はよしながふみ作の同名マンガで、2019年4月からは西島秀俊と内野聖陽の主演で実写ドラマ化され、テレビ東京が放送。今回の劇場版は、その続編となる。

主人公は、民事専門の弁護士・筧史朗(演:西島秀俊、通称シロさん)と、美容師として働く矢吹賢二(演:内野聖陽、通称ケンジ)。実は二人はゲイなのだが、シロさんはあまりそのことをカミングアウトしておらず、逆にケンジは開けっ広げな性格で自身のことも周囲によく話す。性格も思考も異なる二人の繰り広げる些細な日常ドラマと、随所に絡んでくる「食」が大きな柱となっている作品である。


全体的にコメディータッチなので、随所ですごく笑える。心配性ですぐ思考があらぬ方向へ飛躍するケンジさんと、それを軽くあしらう落ち着きがありながら思わぬことがきっかけで不安を抱く天然なシロさん。このあたりはドラマ版でフォーマットをしっかり地固めさせているおかげか、見ていて安定感がある。また、コメディー的な場面だったのがいきなりシリアスになったり、かと思えばシリアスからコメディーに急に様変わりしたりと、緊張と緩和を駆使した展開も非常にお見事だった。今年いろんな映画を見たが、そのなかでも一番劇場で笑う声が多かった作品だったと思う。

冒頭、ケンジとシロさんは京都旅行に行く。しかし、普段の倹約ぶりからは想像できないほどの豪華っぷりに疑念を抱いたケンジがシロさんに「死ぬの?最後の思い出作り?」と言い、シロさんは困惑する。
なのに物語後半では立場が逆転し、ある理由で病院に行ったケンジに対してシロさんが「死ぬのか?」と心配してしまうという、同じところを行ったり来たりする展開。これにも笑ってしまった。

しかし、考えてみるとこれほどこの作品の主題を伝えているシーンはないと思う。生活というのは、毎日新しいことの連続のように思えるが、実は今までやってきたことを少し周期をずらしながら繰り返しているだけで、広い目で見れば輪廻のようにぐるぐる回っている。その中で相手を疑ったり、不安になったり、安堵して愛着を深めたりしていく。それが他者と生活を共にすることの最大の喜びであり、生きがいなのではないだろうかと私はこの作品を観て思った。


偶然ではあるが、ちょうどつい先日このシリーズの脚本を担当していた安達奈緒子氏の作品「おかえりモネ(NHK朝の連続テレビ小説)」が無事完結した。安達氏が描く作品は、底抜けに明るいというわけではない。どちらかといえば人間臭さというか、生きていれば誰しもに起こりそうなレベルのちょっと難しい問題みたいなものもいつも抱き合わせている。

この作品もまた、生きていくうえでは避けて通れない「自立」とか、「尊重」とか、一言では解決できないような問題にもハッキリとした立場で向き合っている。安いお涙頂戴でごまかさずに真っすぐ正面突破していく姿勢こそ、安達作品の真の魅力なんだろうなと確信した。決してこれまでボーイズラブの要素をはらんだ作品をあまり見てこなかったのだが、安達マジックのおかげか、ちょっと関心が沸いてきた。

「きのう何食べた?」は冒頭に紹介した通りドラマ版もあるが、ドラマを知らなくても十分すぎるぐらいに楽しめる。逆に映画を見てからドラマでも新鮮でいいかもしれない。TVerやAmazon prime video、Paraviなどで配信中なのでぜひ見てほしい。


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というわけで、今回は映画「きのう何食べた?」のレビューでした。

引き続き、読者の皆様から映画レビューのリクエストを受け付けております。この作品をレビューしてほしいというリクエストがありましたら、下のURLから「募集のお知らせ」に飛んでいただき、コメント欄の方に投稿をお願いいたします。瑞野が責任を持って、レビューさせていただきます。

https://note.com/mizuno_aohito/n/n4ebe684abeca



おしまい。