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#日本近代史
【小説】奔波の先に~聞多と俊輔~#132
24 維新の終わり(3)
その頃日本では、伊藤が益田孝のもとを訪ねていた。
「工部卿自らお出でになるとは、驚きました。狭いところですが、ごゆっくりしてください」
「ここが先収会社の事務所だったところですね。僕は入り口までしか来たことがなくて、井上さんが仕事をしているところを、見たことがなかったんです」
「井上さんがお使いになられた部屋は隣です。今は応接室として使っています。ただ、こちらの部屋の
【小説】奔波の先に~聞多と俊輔~#138
24 維新の終わり(9)
もう一つの主戦場は熊本の北植木の田原坂だった。乃木希典が連隊旗を奪われたこの戦いでは、当初薩摩軍が有利に進めていた。
陸軍の方は戦況の把握に失敗し、いくつかの作戦の失敗もしていた。陸軍の銃器を頼みにした火力による戦いに対して、薩摩は抜刀隊による白刃突撃を試みていた。
これには政府側も対抗して、抜刀隊を組織する。主力は鹿児島出身の巡査だった。主力の第一旅団も鹿児島出