考えるための力を手に入れろ。|『リベラルアーツの学び方』 瀬木比呂志
「ああこの人には一生敵わない」と思ったことがある。
イギリス留学中、わたしが夏を過ごした寮には日本人が2人に台湾人とアフリカ人のフラットメイトがいた。
この寮ではそれぞれが個室を持っているのだけれどもキッチンは共有で、そこに置かれたソファに寝転がって朝も夜も一緒に過ごした。大抵は一緒に料理をして、宿題をしたり夜遅くまで語り合ったり、どうでもいいドラマを見たり、当時流行っていたポケモンGOをしたり、ほんとうに楽しかった。
7月のある日、そう、その日も音楽をかけて皆で料理をしながら過ごしていたのだけれど、ふと外を見ると月が異常なくらいに赤く見えたのである。
なにこれ!すごい!とわたしたちは騒いだ。よくわからないけれど非現実的だ。異国の赤い月。幻想的だ。
そんな中でひとり、京大生の日本人の男の子が「これ、なんでなんだろなぁ」と言いだした。
え?
なんで.....とは?
「ちょっと考えさせて」と言うとなにやらぶつぶつ言い出し、目を閉じる。わたしたちが見守っていると彼はしばらくして目を輝かせて言った。「わかった」
「これはなぁ、夕焼けと同じなんよ」
それからノートを広げ、さらさらと解説をしてくれた。
↑ちなみに理由はこのページを見てね。
なんて人なんだろう。
わからないことに出会った時、そのままにしてやりすごすかすぐにiphoneを取り出すわたしとは、あまりにも違う。
*
その後も、彼はそのとき話題に上がったちょっとした謎や疑問を自分の知識からひもといていった。
・イギリスはなぜEU脱退するのか?
・第二次世界大戦、日本は負けたにも関わらず、なぜつぶされなかったのか?
・天下りはほんとうに悪いことなのか?
叶わないなぁと思ったのは、難しいことを知っているからではない。
「知っていること」を使いこなし、目の前の事象を自分の頭で考え、答えを導き出す力がすごいと思ったのだ。
自分の頭で考えるための道具。
それ以来、わたしの中での教養とはそういうものになった。
今回紹介する瀬木比呂志『リベラルアーツの学び方』は、教養の学び方を示してくれるブックガイドである。
どんなに自分の頭で考えようとしても、一定の知識がないと悲しいかな、発想が限られてしまう(何でもスマホで検索するわたしがいい例だ)。だから知識をある程度は入れるべきなのだけど、とは言っても「教養」なんていう漠然としたもの、どこからどう手をつけていいかわからない。
そんな迷えるわたしたちに、この本は
・世の中にはどのような学問分野があるのか
・その学問を学ぶ意義はどこにあるのか
・それらの学問はどのように関わり合っているのか
を教えてくれる。
↑こんなかんじ。
そしてブックリストなので、各学問分野でおすすめの本も挙げられている。
大学に入って広大な図書館に呆然としてしまった新入生のあなたや、なんとなく教養身に付けたいなと思っているあなたにおすすめしたい一冊である。
わたしも彼のように自分の頭で考えられるようになりたいな。
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