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物語たち

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私の中の記憶のカケラを、新たな物語へと…
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#小説

余計なオ・セ・ワ

余計なオ・セ・ワ

ただただ寝ていたい休日の朝。うっすら差し込んだ光で朝は感じ取っているが、まだ体は寝ようとして動かない。

スマホが私を呼んでいる。仕方なく手を伸ばした。

〝知り合いの息子さんが、優美子を嫁に欲しいんだって。秋田県内に住んでる人だよ!〟
地元秋田の母からの連絡だった。

えーと、あれですか?
人身売買始めました、的な?
私が嫁に行ったら巨額の富が手に入る、的な?
〝秋田県内に住んでる人〟って情報の

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べらっちょ

べらっちょ

〝あんたみたいに顔が良くて性格が良くて、仕事も出来る女がなんで結婚しないかね~?世の男はいったいどこに目ぇつけて歩いてんだっ?!〟
〝まぁまぁまぁまぁ、今時結婚が全てじゃないし
さぁ、1人で生きてる女もカッコいいよ、ねぇ!〟
〝とかなんとか言ってぇ、実は不倫に足突っ込ん
じゃって結婚できないとかぁ?…なんとか言いなよぉ!〟

酔っぱらっておっさん化してる友人達。仲の良い
友人達だし、言われた内容は

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祝福のポインセチア

祝福のポインセチア

〝クリスマスイヴなんだけどさ、やっぱ…ごめん。〟
〝ううん、分かってる〟
〝25日ならうちのやつのカフェで皆で集まるんだけど、良かったらどう?〟
〝…うん、考えとくね〟

それほど混んでもいないファミレスの店内
貰った真っ赤なポインセチアをソファ席に置いて
1人、窓際の席から外を眺めていた

〝これ、よかったら部屋に飾って。やっぱりクリスマスといえばポインセチアかなと思って。お店の人が教えてくれた

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七夕の夢

七夕の夢

薄暗い空間の中を流れていく人混み
誰も会話せず、人々の足音だけが響く

ポツンと突っ立って周りを見渡す私。

ふと、誰かと目があった

スマホで話しながら、こちらに手を振りつつ
近づいてくる。あれは…

〝よぉ!今さ、準備してるからもう少しだけ
待ってて〟
スマホを耳から離さず私にそう言って、人混みに
流れてく彼を、私はポツンと突っ立ったまま見送っていた…

なんかリアルな夢だったな。
起きてシャ

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キライナオンナ

キライナオンナ

味がしない。アイスコーヒーがただの冷たい水のように私の体の中に流れていく。

〝でね、この間さぁ健人の部屋に行ったんだけどね、冷蔵庫開けたらビールと梅干ししか入ってないんだよぉ?これで何作れってのぉ、もう!〟

キャピキャピ楽しそうに話す紗也は入学したころからの友達。一応、今は…

〝大変だね。あ、そろそろ行くね。用事あるんだ。〟
〝え?今から健人も来るのに?!〟
〝うん。ごめん、またね。〟

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虹の橋を渡る前に

虹の橋を渡る前に

ボクは入り口から鼻と目をちょこっとだけ覗かせて、葵を見つめた。

〝出ておいでよ!どうしたの?もぅ、また来るからねー!〟

葵の姿が遠くなっていく。足音も匂いも、全部遠くなっていく。

次に葵が帰ってくるのは1年後だ。
ボクはその前に虹の橋を渡ることになっている。
だから、もう会えないんだ。ごめんね、葵。

ボクが生まれた時、葵は10歳くらいだった。
ボクは葵の友達の家で生まれて、少ししてから葵の

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春休み中の不思議な出来事

春休み中の不思議な出来事

明後日の今頃は日本か。

ヘイスティング・ストリートでマカダミアナッツのアイスを買って、
友達と2人ヌーサの海を眺めながら食べていた。
オーストラリアに来て6週間、最後の日曜日だった。時間なんてあっという間だ。

2人でしんみりしていると、おじさんが1人近づいて来た。
〝中国人かい?それとも韓国人?〟
2人で声を合わせて〝Nooooo!〟と言うと
〝日本人だろ?分かってるよ〟とふざけた感じで言って

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29歳までに

29歳までに

フェアウェルパーティーが始まる。
私の、お別れ会。
これから3日間まるでどこかのセレブのように着飾って、
飲んで食べて歌って踊って、会いたい人みんなに会って、お祭り騒ぎが続くのだ。

そして3日目の夜、マリー・アントワネットでも寝てたのかと思うような豪華なベットに横たわる。

そしてそのまま、永遠に目を覚ますことはない。

〝もうすぐ29なんだから、早く相手見つけなよ〟
親から、親戚、友達、ちょっ

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