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春休み中の不思議な出来事


明後日の今頃は日本か。

ヘイスティング・ストリートでマカダミアナッツのアイスを買って、
友達と2人ヌーサの海を眺めながら食べていた。
オーストラリアに来て6週間、最後の日曜日だった。時間なんてあっという間だ。

2人でしんみりしていると、おじさんが1人近づいて来た。
〝中国人かい?それとも韓国人?〟
2人で声を合わせて〝Nooooo!〟と言うと
〝日本人だろ?分かってるよ〟とふざけた感じで言ってくる。

変なおじさんに捕まったな…
めんどくさい、と思いつつおじさんの話をしばらく聞いていた。
おじさんの家族の話とか、よく分かんない護身術を教えてくれたりとか。

怪しさしかない。

はいはいはい、と適当に聞き流していた。

いつまで続くのかな…と思っていると
〝手を見せて〟と言ってきた。
今度はなんだ?と思いつつも手を見せる。

相変わらず聞き流していたので、前半はよく覚えてないが、
私がおばあちゃんになっても長生きする、だったか、私の祖母が長生きするだったか、
そんな感じの事を言っていた。

〝君は兄弟が2人いるね。女の子と男の子だ。〟

〝…はい〟当たっている。

〝君のお母さんはもう1人産んでるけど、その子は亡くなってるね〟

ドキっとした。当たっている。
隣で友達も驚いていた。

〝君も見てあげるよ。君は兄弟が1人いるね。男の子だ。〟

〝…はい〟

また当たった。

〝君のお母さんはもう1人産もうと考えていたみたいだけど、辞めてるね〟

〝それは聞いたことないなぁ…〟


何このおじさん?!と2人で固まっていると、
じゃあね!と陽気におじさんは去っていった。


何とも言えない気持ちのまま日本へ帰った。

まだ春休みだったので、私はそのまま帰省した。
ちょうどお彼岸の時期だった。

ある日、母とお墓参りに行った。
〝生きてれば今年成人式だったのにねぇ〟
そう言いなながら母がお線香に火を付け、お地蔵様の前にお供えした瞬間だった。

パチパチパチ、と線香花火かのように火花が散ったのだ。

晴れて風もないのに。私も母も絶句した。

〝聞こえてたのかなぁ〟

〝そうかもね〟

時々、亡くなった妹の気配を感じる事がある。

まさか、二十歳になることを、オーストラリアにまでついてきて、
私にアピールしたというのか。
なんて帰り道に考えてしまった。


何とも不思議な春休みが終わった。
青森から群馬へ行き、また大学生活が始まった。
バタバタと色んな事がスタートしていく。

昼休み、友達に呼び止められた。

〝あれから気になってね、お母さんに聞いたの。
もう1人産もうと考えたけど、辞めたなんて事ある?って。
そしたらね、なんで知ってるの?誰にも話したこと無いのにって言われたんだよ…〟



何だかもう、訳がわからない。

あのおじさんは何者だったのか…


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