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小説まとめ

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個々で投稿した小説のまとめです。 加筆修正された方はまとめのまとめにあります。 暇な時のお供にでもどうぞ
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【短編小説】猫と神隠し

【短編小説】猫と神隠し

 カランコロン カランコロン
下駄の音が鳴り響く日中
人の往来の中に、一匹の猫が歩いていた
タシタシ、という音が聞こえてきそうな歩き方をして、道の真中を歩いていた
少し遠くから、パカパカという馬の足音が聞こえてきて、人々は歩くのをやめ道脇にしゃがみこむ
猫はそんな事もお構い無しに歩き続ける
遂には馬と猫が対峙する形になった
皆が緊張する中、一人の女が猫を庇った
「申し訳ありません!私の家の猫が邪魔

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【短編小説】駄菓子屋と子供

【短編小説】駄菓子屋と子供

ワイワイと、学校がない土日に小学生達がやってくる
「いらっしゃ〜い」
そう声をかけるが、子供たちは駄菓子に夢中だ
田舎の駄菓子屋は、もっぱら子供相手が多い
「今日は何を買いに来たんだ?」
レジから俺は聞いてみた
「おれはこれ!くるくる棒ゼリー!」
と元気いっぱいの半袖の男の子は意外なものを
「私はプチプチ占いチョコ」
オカルト好きな女の子は、その趣味と同じものを
「ぼくはきなこ棒にするよ」
眼鏡を

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【短編小説】除雪戦争

【短編小説】除雪戦争

「「「だれが1番か勝負だ!!」」」
雪国で繰り広げられる、子供たちの戦い

周りの雪かきをしている大人たちは、子供3人を優しい目で見ていた。
「私、冬真だけには負けないからね!」
「おれだって、雪花にも白翔にも負けないからな!」
「そうだね。僕も負けてられないよ。」
小学3年生だろうか、3人の子供が何かを競っている。
「じゃあ、3人にはあの場所の雪かきをお願いするよ。くれぐれも、滑らないように気を

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【短編小説】心配り

【短編小説】心配り

私の町では、心配りという行事がある
その行事は、町を歩く人に「明日も気をつけて」「今日もご苦労様です」と言葉をかけながら、ティッシュやリラックスできる物を紹介している
年配の方は不思議なもので、「ありがとう」と言いながら私たちの胸を見る
その事が気になり、授業の質問がてら、職員室で先生に聞いてみた
「あー、そのことか。昔はなー、本当に心を配ってたみたいだぞ。俺は、その時の名残だと思ってるよ。」

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【短編小説】冬散歩

【短編小説】冬散歩

いつもの時間、いつもの道
季節ごとに見せる顔は違うけれど、たしかに毎日散歩する道だ
今年は暖冬だと言うが、今日はとても寒い
しっかり防寒対策をして、雪化粧をした土手を歩く
家を出てすでに5分は経っているが、雪景色が綺麗で飽きない
葉を落としきって雪の花を付けた銀杏の木、河川敷に降りる芝生も、白く色付いていて美しい
少し厚いような雲から、弱くなった日光を照り返して雪が輝いている
周りに人工物が少ない

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【小説】メリーとクリスのクリスマス

【小説】メリーとクリスのクリスマス

小さな双子の、不思議なお話

ここは、少し小さな町
小さくても、みんな活発な元気な町
そんな町に、小さなひと組の双子がいました
女の子のメリーと、男の子のクリス
双子は、髪の長さが違うだけで、親譲りの綺麗な金髪と青い目をしています
メリーもクリスも遊ぶことが大好き
今日はクリスマスの前の日で、二人とも早くプレゼントがほしくてはしゃいでいます
お父さんとお母さんは、そんな2人を優しく見ていました

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【短編小説】金属虫

【短編小説】金属虫

この研究、なかなかに難しい
最近発見されている、金になっている木
これの研究を重ねているのだが、なぜそうなるのかが、全く検討もつかない
金になる木に住み着いている唯一の虫がいるのだが、この虫以外の鍵もわからないままだ
「うーん、何を見落としているんだ?」
何もわからず唸る私
やはり、現地に行って確認するしかないのだろうか…
わかっている特徴としては、柳種に多く見られること、ポプラの木は特段に見かけ

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【短編小説】変わり者

【短編小説】変わり者

さて、今日はどんな姿の俺なのだろう
いい加減、この生活にも慣れないといけないのだが、どうやら俺には難しいらしい
奇病 “身体変態病”
通称、変わり者病
この病気は、どんな人間にも動物にも、突然現れる謎の病気らしい
治療法も、見つかっていないと言われている
テレビのニュースでは、毎日どこかの誰かが取り上げられている
テレビを流しながら、姿見に自身の体を移した
うーん、今日は小さな女の子か…
なんとな

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【短編小説】好きな人 両親編

【短編小説】好きな人 両親編

朝、俺は慣れない部屋で起きた
それと、慣れない起こされ方もした
耀子「孝幸(たかゆき)、朝だよ」
耳元で好きな人の声が聞こえてくると、飛び起きるのは当然だと思う
ずっと耀子に起こされたかったが、実際にされると心臓が持たなそうだ
「お、おはよう」
耀子「うん、おはよう!」
元気よく返してくれて、朝から緊張した俺の心は燃料を得たようだ
そういえば、客室が2階にあるのは知らなかったな
そう思いながら、耀

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【短編小説】保護動物

【短編小説】保護動物

今日もまた、一匹この家に来た
最近、捨て猫や捨て犬と言った、ペットを飼えないからと捨てる人間がいるらしい
なぜ捨てるのか
そして、なぜ飼おうとするのか
飼えないのならば始めから手を出さなければ良いものを…
そう考える毎日だ
今日来た子は、ウサギ…か?
ネザーランド・ドワーフと呼ばれる種に見えるが、ウサギも雑種が増えているから断定は出来ない
あの子はどの檻に入れられるのだろうか
退屈でつまらなそうで

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【小説】好きな人 ヒロイン編

【小説】好きな人 ヒロイン編

かなり長くなりましたが、削れそうな所はないので勘弁を!
老夫婦に出てきた男性のお話です

「まだ間に合う、まだ間に合う」
そう自分に言い聞かせて、実家へ向かう
「俺は、ちゃんと向き合うって決めたんだ」
好きなあいつに、親に、ちゃんと話すんだ
焦る俺は、必然と早足になる
気付けば、実家前まで走ってきていた
「ふぅ…」と息を整える
まずは、両親を説得だ
いや、違うか?
耀子(ようこ)が先か…?
向き合

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【短編小説】夜の音

【短編小説】夜の音

 ゴリゴリゴリゴリゴリゴリ…
夜に一人、俺は歩いていた
歩いていたら、後ろから不思議な音が聞こえてきた
おかしい、この道には俺だけのはずだ
なんで変な音が聞こえてくるんだ?
「あっ」
ふと、ある物を思い出した
自分の足元を見る
「そうだよな、これがあるもんな」
俺は、自分の引きずっているキャリーバッグを見た
これの音だと理解した
 ゴロゴロ“ゴリ”ゴロゴロ“ゴリ”…
うん、なんでもない普通の音だ

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【短編小説】湖畔の老夫婦

【短編小説】湖畔の老夫婦

綺麗な湖のほとりに、一組の老夫婦が住んでいた
産んだ子供たちは大人になり、パートナーを見つけ、それぞれの幸せを持つようになった
老夫婦は、「それならば」とお気に入りの湖のほとりに移り住んだ
老夫婦の楽しみは、近くのキャンプ場に遊びに来た人達と話すことだった
自分たちの歩んできた道、知らない人の夢や相談、色々な話をした
また、キャンプ場に一人お客が遊びに来た
若い男のようだ
 「あら?また誰か遊びに

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【短編小説】帰りたい【処女作】

【短編小説】帰りたい【処女作】

文章を書く能力と知識、言葉選びの向上のために、1ヶ月に一つ小説を出します。
これは一つ目です。
是非ご愛読くださると嬉しいです。

「おかしい、俺は家にいたはずだ…」
男はそう呟くと、冷たい部屋の床に手をついて体を持ち上げた
まるで自分の体じゃない感覚が襲っているのか、男の動きは鈍い
「変だな、体が上手く動かない」
男は、自身にいったい何が起きたのかわかっていない様子だった
体を起こして部屋を見渡

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