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MNB連続詩集『どどめ色』

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毎日1〜2つずつ更新する詩集です。ジャンルあれこれです。よかったら読んでね。いや絶対読んでね。
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2022年12月の記事一覧

詩「街の中でわたしは」

詩「街の中でわたしは」

文庫本だけ手に取りて
湯気の出過ぎたコーヒーと
横顔みせる他人たち
ひとひらずつとページに納む

本日空は晴天で
言いたいことは青の中
コーヒーすすって足伸ばし
今年も終わると目をつむる

さて/恋とか/仕事とか
あるいは/詩作など/している
あなた/わたし
雨が降るだけで/流れてしまう
軽さに耐えて/重く踏み込め

足踏みを ダンスの ステップだと ゆ
捉えられないかな あげてみる き
メガネを

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詩「もうもうもももう」

詩「もうもうもももう」

年末の 鳥貴で酒を飲んでいる
おわる 日の出とともに
わたしのいのちは いや 大丈夫
経産婦が
いやそう見えた
可愛く傷んだ曲線
子どもが落としたうずらを
うんこ座りでひろっている
そのおおきさ
目を見開いているよ(けど横目だよ)
店内ラジオで宣伝されている
レバー食うぜよ レバー食う
わたしの性欲 レバー引く
ねえこの性欲どうなるんだろう、うずらが美味しい中に消えていきそうで経産婦の未来が気にな

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詩「ましろ舟歌 To YOU系」

詩「ましろ舟歌 To YOU系」

白色のみのピースとは
わたしのようだ そうきみだ
白色のみのパズルとは
彼らのようだ そうここだ

あたまをひねってほしいけど
タブラ・ラサでも有形だ
あたまをひねってほしいけど
輪郭はあって譲れない

溶鉱炉でも 落とす気か
無形のロックじゃ形無しだ
洋航路でも 音好きか
舟歌にだって 節がある

よーよーよーそろ
よーそろそろ
気づいた人から海に飛び込め

よーよーよーそろ
よーそろそろ
瞳型

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詩「だ か ん ら まり」

詩「だ か ん ら まり」

生水を食べる
ようで
歯を食べているようだ
とろみだけがある
こっ こっ
と同心円状に響くかのような音
(しっぱいでは ないはずさ)
ひかりはなく
ざざ


生水を食べる
ようで鼻から空気を
ただ漏らしている
ワニを思った

ざざ
・・・

というよりは
FfFFffF……….
木漏れ日のようなミラーボール
わたし(たち)は
ただ二対の
なめくじでしかない
随意にさらされながら互いの不随意

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詩「ハー・デイ・ソロウ」

詩「ハー・デイ・ソロウ」

10:05 教室で楠木さんを待つ。昨日の夕方、校内でひっそりとメールで連絡を取り合った。(スマホの持ち込みは禁止されている。私立なのだ。)今日はほとんどの生徒・先生が休みで、一部、部活のために来る生徒と先生がいるのみだった。大きなマフラーを身体にぐるぐると巻き付けている。

10:26 窓の外からはサッカー部の声と、ボールを蹴る音が聞こえる。暖房をつけてはいけなかったので、ホッカイロをあけた。温ま

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詩「スクール・アフタータイム」

詩「スクール・アフタータイム」

告白が始まる

「藤田のテストを隠したのは私です」
「自動販売機で毎日コーラを買っています」
「先生の丸付けを手伝って21時までいました」
「テニスコートのネットが盗まれています」
「教務室で寝ている八代先生を見ました」
「誰の着信音ですか」
「柏木の教科書が届きません」
「目が腫れているのは殴られたからです」
「近くのコンビニではいつも黒タイツが売り切れです」
「家庭科室には包丁がありません」

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詩「アクアリウム・イン・ハー」

詩「アクアリウム・イン・ハー」

東棟―――

水槽の前に立っていた。見つめるわたしの眼だけが、魚だった。白身の多い小さな魚。右手で晴天を感じつつ左手で眉間を押さえると、左手はすっ とわたしの頭を通り抜けていった。

突如音がなりはじめる
ここは音楽室であった
わたしの頭が水槽になっている
B組の楠木さんがピアノをひく
レクイエム。
なまえをしらなかった


ちゃ

ちゃぱ
―――
ちゃっ
――


音が足りてい

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詩「ロープ・バブル・タイム」

詩「ロープ・バブル・タイム」

きみの髪を弦にして           ァ
ロープ・バブル・タイム
草木の根にはひかりと潤い
ああ
  ああ
    あ
   わ
  ひ   る
   もゆれ
ヘアゴムでぼくを縛って
ロープ・バブル・タイム
握るだけで ふえていく輪
とじこめる吐息
の膜
黒髪の先端 たばねていい? いい
あわひもゆれる
そのすうせんまんぼんにふれて
左半身が揺れるよ ぼくも弦だ
あ        る

ああ 

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詩「あなた(YOU)からはな(た)れる瑠璃の話」

詩「あなた(YOU)からはな(た)れる瑠璃の話」

「わたしの目は海をこえてきたの」
言葉
ひとつひとつが
香りとなって
非常階段が揺れた
あるいは わたしが
鳩がとまる肩にまで笑みが満ちる
射抜かれた順に 皆 水平線になっていった
A組の授業は とうにはじまっていた
「こうしよ?」
あの子は身体をよせて
わたしに首をかき切らせたのだった
シ/ャ

ラピスラズリが噴水だ
海のもとに
空までもがつどって
明るい真夜中 二秒前
あの子は膝丈のモスク

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詩「ホワイト・トレイン・アウト」

詩「ホワイト・トレイン・アウト」

なみだを焼こう
列車の上にそうっと
くだけた高温の粒が散る

帽子ですくおう
様になった様子で
ステッキを出して踊るサボテンのもとで

ひそひそ話 だ ひそひそ
カニたち話 ばかり 熱燗を待って
赤ワインに染まったようだ

「ここへはまたこられますか」
『どうでしょう』
「隧道を抜ければ月が照らします」
『そうでしょう』
「わたしは」
『キスしましょう』

「それでは」
『また』

汽車の
車輪を

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詩「煮えた≠NI E TA」

詩「煮えた≠NI E TA」

きみのために湯豆腐を買った
と言うのは正確ではない
作るものだから
材料を

             今日を
       なんとかしたかった
     むしゃくしゃしたからだ
ぼくは豪奢なツマミを買っていった

お湯を沸かしていた
お風呂も含めて
入浴剤を
忘れた

  倉庫作業で打ち付けた右の腰を思った
        鈍い痛みが悪い思い出を
           連れてくるようだ
    

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詩「宅急便ですそれだけです」

詩「宅急便ですそれだけです」

愛 意味のある恋河原を歩いていた
愛 足の人恋差し指を地面につけた
愛 ドレ恋ミが立ち上がるようだし
愛 恋いろはが歌い出すようだった
愛 きみはブラを外しきっていた恋
愛 僕は永久をある種知っていた恋
愛 猛獣の恋檻が日陰にあったのを
愛 僕らは恋そのままにしておいた
愛 少々の塩をまき恋まきを割った
愛 高尚な言葉で舌と舌を恋繋いだ
愛 きみは恋肢体を伸ばしきりまた
愛 広がる空に虹をかけてか

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詩「コンタクト コンタクト」

詩「コンタクト コンタクト」

わたしねむいんだけど

昏い部屋で
お前を見ているぞ
黒い目が漂っていることが
この宇宙ではわからないだろう昏い部屋でお前を見ているぞ黒い目が漂っていることがこの宇宙ではわからないだろう
  昏
部 い


お前を見ているぞ
       黒
       い
       目 が
         漂っているこ
              と
              が
 うろだいならか

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詩「デイユース・マイユース」

詩「デイユース・マイユース」

レポートを書くように
文字に耳をそばだてて
隣の騒音を望んでいた

毛穴までもを暗くする
叫んで散る良心とよそ
よそしい声で論文検索

アリステトゥ私学水曜
サービスデイ学科専攻
出血を盗る正午過ぎに

なたと水蜜桃を箱売り
新しい市を引用し「神
鮮        聖
な体験でしたと叫びな
あ」(失念)
白に白を重ねてあなた
嘘に嘘を重ねてわたし
あっあっあっ  あっ


デイユースの卒業

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