マガジンのカバー画像

家族のはなし

24
難病のかみさんの来し方行く末、 支えているのか支えられているのか微妙な私、 子供たちは勝手に成長し、 たくさんの失敗の山を積み上げて行く。 そんな家族の足跡を残して行きます。
運営しているクリエイター

記事一覧

初詣

初詣

 元旦の朝、特にすることもないので、かみさんと二人して初詣に繰り出してみた。

護国神社、明野から下って行って正解だったけど、神社の坂に取りつくまでの件で長蛇の渋滞、ゆっくりゆっくり下って、ゆっくりゆっくり登って行く。歩道はお参りに行く人帰る人でいっぱいだ。

 そんな道行く人をチラチラと視界に捉えながら運転していると、知ってる女性が下って来ている。しかも10年ぶりくらい前に会ったのが最後、窓を開

もっとみる
次男の誕生日

次男の誕生日

 むむっ、奴は幾つになるんだ。かみさんに聞いたら28か9かな。本人に聞いてもよう判らんと言う。もちろん私も29か30のどっちかだ。こんな年齢不詳ではないけど、自他ともに不認識な年ごろなのか。私がその年の頃は30の大台に乗りたくなくて足掻いていたような気がするが、次男は泰然自若として、何か欲しいものはあるかと聞いても、特にないと言うし、母さんの奢りで食べに出るかと言っても、いや面倒臭いと返って来る。

もっとみる
うみ散歩

うみ散歩

 週末の老犬の散歩は私の担当だ。7月は足腰が弱ってしまって、外を歩き回る元気もなかったのに、8月に入って復活、玄関や裏庭への出入りは抱えないとダメだけど、平らなところは大丈夫、気を付けないと時々、溝やグレーチングの穴ぼこに足を取られてしまう。

 夕方はお散歩ラッシュで、若い女性が連れている元気な犬が吠え掛かって来る。歳を聞けば2才だと言う。こいつは来月で16歳と言うと若い女性が驚いてくれた。こい

もっとみる
長男の誕生日か

長男の誕生日か

 我が家のこと、先週あたりからざわついている。

私「あいつ、何か言って来たか」

次男「いや何も」

母「お兄ちゃんの誕生日、何かするの」

私「33なら、もういいやろ、なあ次男」

次男「スルーしようか」

私「何か言って来たら、おめでとうくらいでいいやろ」

次男「そうやな」

そんな会話が数日前にあって今朝、別の用事で長男にラインを送ると、「今日、誕生日です」と返って来た。「わかっちょる」

もっとみる
かみさんの誕生日接近中

かみさんの誕生日接近中

 今月11日が65回目の誕生日だと、ここ数日、いや随分前から言っているような気がする。子供たちも気を聞かせて誕プレは何がいいかとか聞いてやっている。私はここ数年は聞いても何も要らないと言うので、ああそうですかと答えて、近所のケーキ屋さんで申し訳程度にショートケーキを買って帰るようにしている。

 だって、もう65回も繰り返すイベントなんて、いい加減飽きてしまうに違いない。バカボンのパパと一緒に「こ

もっとみる
経糸の件

経糸の件

 何故こうなるかな。まあ我が家のかみさんは難病でそれに伴う障害はゆっくりと進行性なわけだから仕方ないと言えばそれまでなんだけど、老化じゃないのかとの意見はさておいて、手元不如意のため細かい作業をアウトソーシングしてしまった結果がこれだ。

 私と次男での経糸通し、ついに次男まで駆り出されてしまった。見た目にはファミリーの全面的な協力という絵と、逆に家族の負担が日常介護から余暇活動にまで及んで来たと

もっとみる
増殖するものたち

増殖するものたち

 薄曇り梅雨入り気配の日曜日、玄関の掃除と昇降機廻りのDIY補修を済ませて、ついでに下駄箱の整理もやろうと下駄箱を開けてびっくり、かみさんのクツの多いこと、前世はムカデだったのかと言いながら、かみさん立会いのもと断捨離、ゲジゲジくらいまでにはなったろうか。放っておくとまた増殖するんだろうな。午前中、ひと段落すると雨が降り始めた。

 増殖すると言えば、我が家はフクロウグッズ・コレクターだから、フク

もっとみる
体調不良の飼い犬

体調不良の飼い犬

 我が家の癒し犬、齢15歳のうみちゃん、火曜日から体調不良なのだ。日ごろ、鬱陶しいほど元気なだけに、静かで苦しそうな表情は見ていて辛い。翌日に見かねて、次男と一緒にかかりつけの動物病院へ連れて行く。普段、飛び跳ねるように昇り降りする玄関も、はしゃいで飛び乗る車にも抱え込んで乗せる。
 診察が始まる。体重は変わらず15.7キロ、エコーにレントゲンに血液検査、それで判ったことは、引きずっていた左足は一

もっとみる
朝にあった記憶

朝にあった記憶

 打合せで耶馬渓は青の洞門近くの利用者さん宅を訪問、長居した挙句にお昼ご飯まで頂いてしまう。会うのを楽しみにしていたカル君は、広大な野山を散歩中の様子で見当たらず。
 少々食べ過ぎ、ふーっと言いながらの帰り道、渋見トンネルの手前で左右確認、このトンネルをくぐって4キロ走ると青の洞門だ。もう30年くらい前に行ったきりだと思ったら、無性に行きたくなって、そのままハンドルを左に切ってしまった。まだ、記憶

もっとみる
苦行の経糸張り

苦行の経糸張り

 土曜日はかみさんの白髪染めをしてやった。日曜日の今日は朝から、かみさんの機織り準備の経糸を張り3時間、心身ともにへこたれる。
 4色の糸を1本ずつ、中腰で整経台に糸掛けすること120回、真ん中あたりを紐で結んだり、綾ホルダーに取り込んだりして、端っこを外して切って、これで経糸の準備完了だ。
 続いて経糸通し。これがまた大事(おおごと)だ。それはそれは小さな筬(おさ)という板のスリットの間を老眼に

もっとみる
記念日について

記念日について

 この時期は二十四節気では白露、七十二候だと鶺鴒鳴く今日この頃にあたるらしい。朝も少し冷え始めた。介護ベッドから起き上がるなり、かみさんが何かつぶやいてる。えーなに、明日が何だって。結婚記念日。そうか、また結婚記念日か、去年もだったろう。もういいだろう。今年はそっとしとこう、なっ。静かに静かに、明日はそれで行こう。いいか、もう言うなよ。
 さて、数ある記念日に一喜一憂して来た我が家。1月1日の鉄腕

もっとみる
長男の誕生日だった

長男の誕生日だった

 うーん、奴ももう31歳か、私が結婚した歳じゃないか。まあ実に賑やかにいろいろあった奴なんだわ。FBでもお世話になって義理を欠いたままのお友達の皆さんには、この場を借りて、不肖の長男に代って私から深くお詫び申し上げます。

 さて、この可愛かった長男、主治医にこの世の春と言われた幼少期を経て、初めての育児で親の試行錯誤の被験者となってくれた。成長するに連れて、俺は父親から虐待を受けていたと憚ること

もっとみる
夏の思い出

夏の思い出

 今日も晴れたので自転車だ。いつも同じことを言い訳してみる。大洲運動公園からスタート、ペダルを漕ぎだす瞬間から、恐らく身体中の全細胞が意識することなく連携してバランスを保持、そしてその状態が脳に心地よい信号をフィードバックしてくれる。照り付ける強い日差しまで気持ちいい。
 餅が浜の松林に取りつく時に見える海と空、遠くの積乱雲、いつも子供の頃の夏休みを思い出す。夏休み前夜、夏の友に40日間の出来ない

もっとみる
圧力鍋でポトフ

圧力鍋でポトフ

 天候不順の土曜日、かみさんの買い物で明野アクロスに行く。新館側駐車場に行くと、ほぼ満車、障がい者専用も空きはなし。一般枠に頭から突っ込んで、後部ハッチからかみさんを出す。目的は本館側の百均セリエだ。館内に入るや、外だしのバーゲンのハンガーラックにかみさんが吸い寄せられる。あっちの店からこっちの店へと、やっと別館を過ぎて本館にたどり着く。
 一緒になって何度目の春だろう。歳を重ねるにつれて私とかみ

もっとみる