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縦の糸 横の糸

「古今和歌集」ではこの季節、どんな歌が詠まれていたのだろうかとパラパラめくっていると、脚注に「経(たて)糸 緯(よこ)糸」とあるのを見つけた。

こんな時代から使われていた表現だったのか・・・

中島みゆきさんの「糸」という曲の「縦の糸はあなた 横の糸は私」という歌詞を思い出して、心がおどった。

その脚注(※)をさらに読み進めると、「経(たて)糸 緯(よこ)糸」とは、古くは「万葉集」にも見られる表現で、赤、黄に色づいた葉が散り重なる様子を織物の錦の縦糸、横糸に見立てたもので、「錦秋」ともいわれる晩秋の美しさを表現しているという。

一方、中島みゆきさんのは、縦糸と横糸を人に見立て、人と人とが巡り逢い、人と人とが織りなす「布」によって、人が再生する力を得ていくというドラマになっている。そこが、現代の私には温かく感じる。


経(たて)もなく緯(ぬき)もさだめずをとめらが織れる黄葉(もみじば)に霜なふりそね
大津皇子「万葉集」巻八
大意:どれを縦の糸、横の糸とも定めないで少女たちが織り上げたもみじ葉に、霜よ、おりないでおくれ


霜のたて露のぬきこそよわ(弱)からし山の錦のおればかつ散る
藤原関雄「古今和歌集」巻第五 秋歌下 二九一
大意:霜で色づいた縦糸、露で色づいた横糸で織られた錦は弱いらしい、山の錦は織られたのと同時にほどけてゆく(散っていく)


中島みゆき作詞作曲「糸」


※ 『古今和歌集』(角川文庫 窪田章一郎校注)76ページ
尚、上記に引用する和歌二首も本書の同ページによる。大意は筆者が本書を参考に作成した。



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