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水叉直
2022年2月4日 22:29
一度門をくぐったガデアが再び坂を下りてきたのは、十数分後。ノイのことを知るものはいなかったそうだが、客人としてもてなすことを伝えられる。 ガデアと共に坂を登り門にたどり着く頃には、周囲の鬱蒼と茂る木々にも負けないほど密集していた人々は、いつの間にか姿を消していた。 木製の巨大な門が、ギシギシと苦しそうな音を立てながらゆっくりと開く。その先に広がる光景に、レガは感嘆の声を漏らした。「凄い。ヤ
2021年9月1日 20:32
夜の帳に包まれて眠る皆を眺めるのは、火の番を務めるノイ。我こそが番をと意気込んでいたピーシャルはそうそうに眠りにつき、懸命に眠気と戦っていたレガもまた、襲い来る睡魔に体を預けていた。 パチパチとつつましく鳴る音、控えめに揺らめく酸素の燃焼。ノイの体に傷を刻んだ炎とは、似ても似つかぬ穏やかさ。「お頭、まだ起きてるんですかい?」 転がしていた体を起こしてきたブリンゴが、あたりの岩に腰かける。そ
2021年8月26日 21:59
「いやー、何とかなったな。とりあえず外には出れた」「荷物はほとんど無いけどね。この後どうするつもりなんだよ」「うるさいな! どっちにせよ、燃えてしまってどうもできなかっただろ?」 二頭のタカダガを並走させながら口論を始めるピーシャルとレガ。ブリンゴはピーシャルの後ろでぐったりとして、しがみつくのに精一杯の様子。「あんたたち。良くやってくれたね」 終わりそうになかった口論にノイが一言口を挟
2021年7月19日 20:17
タカダガが道を行く。その蹄が立てる音は、土でできた道に積もった塵に吸い込まれる。「道を空けろ! 物資の配給だ!」 荷台を牽くタカダガの手綱を握っている男。布であしらった服は所々の糸がほつれている。男は手を大きく降り、皆に到着を知らせた。 その知らせは広場に集まっていた者たちに伝わり、知らせを受け取った者たちが広場から四方へ駆けだした。降り積もった塵が一斉に宙に舞う。「配給だ! 配給が来た