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七つ目の大陸

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#長編小説

遅参の胸中

「いやー、何とかなったな。とりあえず外には出れた」
「荷物はほとんど無いけどね。この後どうするつもりなんだよ」
「うるさいな! どっちにせよ、燃えてしまってどうもできなかっただろ?」
 二頭のタカダガを並走させながら口論を始めるピーシャルとレガ。ブリンゴはピーシャルの後ろでぐったりとして、しがみつくのに精一杯の様子。
「あんたたち。良くやってくれたね」
 終わりそうになかった口論にノイが一言口を挟

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因果の咆哮

因果の咆哮

 おぼろげな視界に映るのは、数秒前まで家を名乗っていたはずの瓦礫の山。轟音にさらされた聴覚は、その機能を取り戻そうと躍起になっている。
「おい、おいおい。なんだよこれ」
 雄々しく叫び狂った爆風は、ブリンゴの体を辺りの木々まで吹き飛ばしていた。
 そのまま太い幹に叩きつけられると、深い緑の葉が不規則なリズムで宙を舞い、葉と塵と木片とに包まれた中からブリンゴが這い出てくる。
 瞬きの間、意識が遥かを

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身投げの塔

身投げの塔

 西地区の英雄トロスの活躍は、瞬く間に街中に広がった。勝利した西地区の広場では、ささやかな祝宴が開かれていた。
「トロス万歳! 西地区万歳!」
「今年の報酬はなんだろう。去年は食べ物と衣類だったな」
「なんだっていい、生活が楽になることは違いないんだ」
「俺の活躍見たか? 今回の勝利は俺のおかげと言っても過言じゃないね」
 滅多に飲むことのない酒もふるまわれ、思い思いに騒ぐ人々。その中にはトロスの

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