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読書記録📖

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読書記録⑫『かさなりあう人へ』白石一文著

読書記録⑫『かさなりあう人へ』白石一文著

白石一文さんの著書は、過去に何冊が読んだことがあった。内容はほとんど覚えていない。でも長編向きな作家さんだなぁと思ったことは覚えている。推理小説でもないのに、点と点が繋がって一本の線になっていくさまをきれいに見せてくれるから。例えるなら彫刻のような感じ。徐々にその人の生き方、運命が浮き彫りになっていく丁寧な物語の描き方。
本は読み終わって数日もすれば内容を忘れてしまいがちだけど、著者それぞれの世界

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読書記録⑪『食っちゃ寝て書いて』小野寺史宜著

読書記録⑪『食っちゃ寝て書いて』小野寺史宜著

タイトルを見た時、ふっと笑ってしまった。この力の抜けた感じが気に入って、パラパラとページをめくってみた。タイトルの一部、“書いて”から予想した通り、どうやら主人公の職業は作家らしい。作家の生活、考え方、原稿の書き方には興味がある。ということで、じっくり読んでみることにした。

出だしから読みやすかった。一文一文が短く、余計な情報が削ぎ落とされた文章。そして登場人物たちが“横尾成吾”“井草菜種”のよ

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読書記録⑩『もしかして ひょっとして』大崎梢著

読書記録⑩『もしかして ひょっとして』大崎梢著

読書記録も今回で10回目。継続が苦手な私でも、仕組み化して淡々とこなせば、なんとか達成できるということがわかった。そのことについてちょっと触れてみたい。

まずは読書について。これは最初に、一日の読書量を決めてしまう。四日で読み切りたければページ数から四分の一を割り出し、そこまで読むというページに付箋をペタリ。そしてまた次の日読む範囲の最後のページに付箋を貼り、読み終えた場所の付箋から読み進める。

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読書記録⑨『ライアの祈り』森沢明夫著

読書記録⑨『ライアの祈り』森沢明夫著

次に読む本は、森沢明夫さんの本にしようと決めていた。この前なんとなく視聴していたYouTubeにゲストとして森沢明夫さんが登場し、彼の生き方や小説にまつわる話を楽しそうに語っていたから。
森沢さんは「小説のネタに困ることは一生ない」と言い切っていた。それは「生きている以上、どんな人でも絶対にものすごく辛い経験をしているはずだから」だという。

いい物語というものは、主人公が必ずといっていいほど、な

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読書記録⑧『夜が明ける』西加奈子著

読書記録⑧『夜が明ける』西加奈子著

直木賞作家の西加奈子さんのファンは多いと思う。特に女性。テレビやラジオにも出演経験のある彼女は、気さくな関西弁で熱のこもった話し方をする。見た目も華やかで笑顔もチャーミングだ。プロレス好きという男まさりなギャップもいい。音楽の趣味にしても、昔のレコードで名を馳せたような海外の歌が好みだというからかっこいい。
彼女の本のカバーイラストは、ほとんど毎回彼女の手描きだ。クレヨンでゴリゴリに描かれたそれら

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読書記録⑦『夜行』森見登美彦著

読書記録⑦『夜行』森見登美彦著

「好きな小説は?」と聞かれて私がすぐに思いつくのは、森見登美彦の『夜は短し歩けよ乙女』だ。もう手元にはないけれど、映画を観たわけでもないのに今でもいくつかのシーンが映像として思い起こせる。それほど印象深い物語だった。読書記録をつけ始める少し前は、同著者の『四畳半神話大系』も読んだ。別の物語ではあるけれど、この二冊の中には同一人物も登場している。そして、ままならなくて甘酸っぱい青春の雰囲気が、コミカ

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読書記録⑥『建設現場』坂口恭平著

読書記録⑥『建設現場』坂口恭平著

前回の読書記録⑤『独立国家のつくりかた』に引き続き、今回も坂口恭平さんの本を読んだ。前回はノンフィクションで、今回の本は長編小説だ。白いハードカバーの表紙には、L判の写真より一回り小さめな抽象画がこぢんまりと飾られている。その絵は著者自身によって描かれたもので、手前に金網、その奥に赤い塔だか建物、バックに淡い緑と水色の混じった空らしきものが見て取れる。

私がこの本を選んだのは、図書館の小説コーナ

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読書記録⑤『独立国家のつくりかた』坂口恭平著

読書記録⑤『独立国家のつくりかた』坂口恭平著

この前何気なく気になったnoteの記事を読んでいたら、そこで坂口恭平さんのnote記事『お金の学校』が紹介され推されていた。推している方の記事も熱が入っていて面白かったので、興味をそそられリンク先に飛んでみた。まず一記事文が相当長くてびっくりした。そして、それにも関わらず一気に読めてしまった自分にもちょっと驚いた。なんていうか、引力がすごかった。

お金の学校に関しては(1)〜(11)まで記事があ

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読書記録④『8050問題 中高年ひきこもり、7つの家族の再生物語』黒川祥子著 

読書記録④『8050問題 中高年ひきこもり、7つの家族の再生物語』黒川祥子著 

正直背表紙を一目見ただけでもう十分。読みたくない本だった。
こんなふうに書くと誤解を招くけれど、内容はすごく良かった。読みたくないのはこちらの事情だ。自分が40代無職で未だに親元に寄生して生きている立場だから。他人事とは思えなかった。自分の立場を再認識するためにもイタイと思いながら読了した。

基本的にルポルタージュは好きだ。「事実は小説よりも奇なり」とはよく言ったもので「こんな人が本当に実在する

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読書記録③『奇跡集』小野寺史宜著

読書記録③『奇跡集』小野寺史宜著

今回も短編集を選んだ。図書館で、いつも通り優柔不断に迷いに迷って、なかなか決められず館内をぐるぐる巡って。できれば自分が普段読まないような、これから先自分が書く物語とかぶりそうもないものがいいと思いながら本を物色していた。最終的に選んだのがこの本、小野寺史宜著『奇跡集』。失礼なことに三回くらいお名前の読みを「何て読むんだっけ」と忘れている。「ふみのり」さんだった。

ハードカバーのこの本の見た目は

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読書記録②『一人称単数』村上春樹著

読書記録②『一人称単数』村上春樹著

昨夜は拷問のような夜だった。
蚊が1匹部屋に居座り、寝ているところに、ある程度の時間の間隔を空けて繰り返し襲ってきたのだ。
わりと小さな物音でも目が覚めてしまう私は、耳元でブーンと聞こえるたびに、バッと布団をはねのけ飛び起きて電気をつける。しばらく目を凝らすが、四方の壁と収納の引き戸に蚊の姿は見つけられない。諦めて眠る。一時間くらいするとまた羽音がする。飛び起きて電気をつける。いない。また眠る。そ

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読書記録①『はーばーらいと』吉本ばなな著

読書記録①『はーばーらいと』吉本ばなな著

今日は朝から雨。
家族を送り出して一通りの家事を終え、雨の音に囲まれて家に一人のこの状況はちょっと気分がいい。
朝食を済ませてコーヒーを飲んで、部屋の中をうろうろしながら声に出して昨日に引き続き村上春樹さんの本を読んだ。一章分読み終わったところで、観念して執筆をしようと今iPadと向き合っている。
書くことは好きだし、時間が経つのがあっという間に感じられるほど夢中にもなれる。でも書き始めるまでのこ

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