立花 実果
📕時にネタバレ御免🙏の、無責任に楽しんで書いた読書記録を集めました。ちらっとのぞいてもらえたら嬉しいです🐱
“一日は一生の縮図”。最近この言葉が頭をかすめる。考えてみたら当たり前だ。昨日と同じような今日。今日と同じような明日。明日と同じような…。その繰り返しで日々は過ぎていく。変わり映えしない毎日を過ごせることは、ある意味平和で幸せなことではあるけれど。“いつか”とか“子供が手を離れたら”とか“お金に余裕ができたら”とか。曖昧なまま先送りした願望は、突発的にフットワーク軽く動ける人でもない限りまず叶わない。 ここ最近、わりと近しい人の家族の訃報を何度か聞いた。お会いしたら挨拶をす
小学三年生の頃、私はいじめを受けていた。そしてそのことに、私は心のどこかで納得していた。私は背が低く、色白で肌にはそばかすが目立った。髪は天然パーマがひどく、おまけにボリュームもあったからモジャモジャで頭でっかちに見えた。家が貧乏でいつも服は母が近所からもらってくるお下がりが多かったけれど、たいてい大きくてぶかぶかだったから、袖も丈も余っていた。 つまり私は醜いアヒルの子のように、みすぼらしく悪目立ちしていたのだ。見た目がこんなふうだった上に、明るさや愛想の良さもない。大人し
ここ最近夜寝る時になると、蚊が刺客のように現れて参っていた。しかも3日連続で。もう送り込まれているとしか考えられない。 奴らはどこから侵入してくるんだろう。玄関の扉から? 庭に出入りするために開ける掃き出し窓から? 換気のために開けた窓の隙間から? 取り込んだ洗濯物にくっついて? 蚊が一匹部屋に侵入しただけで、その夜の安眠が妨害されるから勘弁してほしい。 “戦う”? “無理やり寝る”? さあ、どっち? ロールプレイングゲームのような選択肢が頭に浮かぶ。 ここは「
今更だけど『火花』を読んでみた。ご存知の方も多いと思うが『火花』は人気お笑いコンビ、“ピース”のボケ担当、又吉直樹によって書かれた小説だ。2015年に出版された当時、ものすごく話題になり芥川賞を受賞。また、ドラマ化や映画化もされている。 本好きの人なら我先にと、書店で単行本を手に取ったのではないだろうか。しかしへそ曲がりな私は、流行真っ只中のものにはあまり興味が湧かない。『火花』について知っていることといえば、漫才にまつわる物語だということ。あとは、淡い黄色に、赤いマントのよ
隣、いいかしら? ありがとう。 可愛いよね、あの子たち。特にチャトラの方は人なつっこくて、すり寄ってくるしね。白い子はちょっと警戒心が強いけど、声が少し高めで鳴き声が可愛いの。ああ、あの耳ね。去勢手術が済んでいるっていう意味よ。耳の先端がV字にカットされてて、桜の花びらみたいでしょう? だから「さくら耳」っていうの。あの子たち、この辺の住民の方が保護している地域猫なのよ。保健所に連れて行かれる心配はないし、食べ物も与えられているみたいよ。じゃれ合っちゃって本当に仲良しでし
今日は朝から息子の付き添いで、病院に行ってきた。一昨日の部活中に薬指を負傷して、ずっと「曲がりにくい」「痛い」と訴えていた。確かに腫れているし、ちょっと青あざになっている。でも一応曲がるようだし、突き指だろうと思っていた。が、息子はネットで色々調べて、骨折や骨にヒビが入っている可能性もある、としつこく訴えてくる。病院が嫌いなくせに、とにかくレントゲンをとってもらいたいのだという。腫れて少し変色した指を「ほら、見て」と何度も見せてくる。そしてまだ診断されていないうちからよからぬ
図書館でこの本の背表紙のタイトルを見た時、「あれ、日本で代理出産は合法なんだっけ」とちょっと考えた。もちろん小説だから架空の設定でも問題はない。もしかしたら日本じゃなくて海外が舞台の話だということもあり得る。けれど最近の世の中の目まぐるしい変化を見ていると、知らない間に法律が変わっていてもおかしくない。何はともあれ、ちょっと気になったので借りることにした。 垣谷美雨さんの本は、以前にも読んだことがあった。『あなたの人生、片づけます』『うちの子が結婚しないので』『七十歳死亡法
白い包帯のようなバンテージを手に巻きながら、なんとなくジム内をぐるりと見渡す。さっきから林君がサンドバッグを殴る音がえぐい。ジャブ、ボディ、フック、連打。鎖がしゃらんと鳴ると同時に、重いサンドバッグがギシギシ揺れる。その背後では戸越さんが、雫型のパンチングボールをリズムよくグローブに当てている。音がうるさく、高い位置にあるパンチングボール。腕を上げ続ける格好になるのはきついが、力も要らないしジムの中では俺のお気に入りのトレーニングだ。 全面鏡ばりの壁の前で縄跳びをする男子二人
「時間が経つのが速い」。大人がよく言う言葉だ。私もご多分に漏れずそう思うし、そう感じる。小学生頃までは空にぽかんと浮かぶ白い雲が、風でゆっくり運ばれていくような時間の捉え方をしていたと思う。それが今では音も立てない秒針が、常に頭の中をくるくると目まぐるしい速度で回るように速く感じる。 楽しい時間はあっという間。退屈で苦痛な時間はえらく長い。そんな気分の違いによる感覚の違いも、今ではあまり感じない。なぜだろう。 私は同世代の人に比べて、大分楽な時間の過ごし方をしていると思う。
今回読んだのは児童書。2016年に3DCGアニメで映画化されたから、知っている人も多いかもしれない。主役の黒猫ルドルフ役の声優は、女優の井上真央さん。私は映画は観ていないが、宣伝していたのは覚えている。しかし原作が、昔からある児童書だとは知らなかった。教えてくれたのは、noteの記事にコメントをくれた方だ。 私は最近、一般の小説と一緒に児童書も図書館で借りることがある。児童書の世界は優しい。酸いも甘いも…の大人の本ももちろん好きだけど、時々童心に帰りたくなるのだ。猫が主役なの
人が集まっていた。若い人たち。大人の男が一人、先頭で声を張り上げている。教師のようだ。その集団に並ぶように促している。ぞろぞろと移動し一列に並んだ若者たちは、誘導されて大きな教室の中へと入っていく。その教室は側面がガラス張りで、席に着いた若者たちの様子が丸見えだった。私はガラス一枚隔てて彼らの様子をじっと見ている。彼らは私を気にしていない。私のことは見えていないのかもしれない。教壇に立つ教師が何やら指示を出す。席に着いた若者たちは一斉に下を向く。彼らの机の上には、それぞれにカ
先日、息子の中学の進路説明会に出席してきた。長かった。そしてぐったりと疲れた。 出席は希望制で、対象は全学年の保護者。別にサボってもよかったのだけれど、そろそろ自分事として捉えなければ、と思った。一年後、間近に迫ったら、絶対あたふたしてパニックになる。そんなわけでしぶしぶ足を運んできた。 体育館の前方に大きなスクリーン。パワーポイントで資料を大写しにして、担当の先生がマイク越しに説明をしていく。前の席には3年生の子たちが座り、後方の席は学年の違う子を持つ保護者たちが自由に座
図書館で、西加奈子さんの一番新しい本に出会えた。迷うことなく本に手を伸ばした。少し前に彼女の話題作『くもをさがす』を素通りしてしまって以来、全くお目にかかれていない。チャンスは逃してはいけないのだ。 『わたしに会いたい』は8話からなる短編集。あらすじ、感想と一話一話述べていこうと思う。では、目次から書いていく。 【目次】 ・わたしに会いたい ・あなたの中から ・VIO ・あらわ ・掌 ・Crazy In Love ・ママと戦う ・チェンジ 印象的だったのは、ミィの淡
読んだ本の内容は、忘れていることが大半だけど 、きっとちゃんとクラウドのようなところにポイポイ放り込まれて溜まってる。それは必要な時に取り出せないし、内容そのものは一生思い出せないかもしれない。でも、無意味なことではないと思う。少なくとも読んでいる最中は楽しんでいたはずだし。 それはさて置き、最近自分の中で、役に立っていると思うものがある。それは本のタイトルだ。短い言葉の中に、深い想いがぎゅっと詰まってる。私が特に頻繁に思い出すのは以下の3つ。 この中には読んでいない本も
忘れられない手紙がある。 小学四年生の時にもらった手紙。メモの柄まで覚えてる。うすいピンク色で、文字を書くところが楕円形に白かった。周りには音符や ト音記号が散らされていて。右下に、花冠を頭にのせた、つぶらな目をしたふわふわの白うさぎ。 記憶の中の、あの子のイメージにぴったりのメモ用紙だった。 里山 莉乃。幼稚園の頃からの幼なじみ。 小学校に上がって、一、二年生のクラスは違ったけれど、三、四年生は同じクラスになった。元々しょっちゅう遊んでいたし、当然のように教室でもいつも一
今年の初めから、インスタにデジタルイラストを投稿していた。正確には3回目のアカウントで。 1回目はSNS自体初めてだったから、軽くテストのつもりだった。考えなしだったし、すぐに消してしまったと思う。2回目は続けることが目標だったから、最初は鉛筆でらくがきからスタートした。途中からデジタルイラストに移行して百枚近く投稿できたけど、苦しくなってやっぱりやめた。そして3回目。たぶん今までで一番見られていなかった。 タイトル通りフォロワーもいいねも0がデフォルト。結構うまく描けたの