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【A-第2問】その「咳(せき)」本当にただの「風邪」?(前編)

今回の問題は「慢性咳嗽(まんせいがいそう)」とその原因について学んでいきます。
「慢性」とは、徐々に発症して治療も経過も長期に及ぶ病気であり、「咳嗽」とは、咳(せき)のことです。

では、1つずつ見ていきましょう!

慢性咳嗽の原因疾患とその特徴の組合せで誤っているのはどれか。

a. COPD ー 喫煙歴
b. 咳喘息 ー 季節性
c. アトピー咳嗽 ー 咽喉頭掻痒感
d. 胃食道逆流症 ー 後鼻漏
e. 副鼻腔気管支症候群 ー 膿性痰

a. COPD

症状
COPD(chronic obstructive pulmonary disease)とは、慢性閉塞性肺疾患のことを指し、歩行時や階段昇降など、身体を動かした時に息切れを感じる労作時呼吸困難や慢性のせきやたんが特徴的な症状です。

メカニズム
タバコの煙により肺の中の気管支に炎症がおきて、せきやたんが出たり、気管支が細くなることによって空気の流れが低下します。また、気管支が枝分かれした奥にあるぶどうの房状の小さな袋である肺胞(はいほう)が破壊されて、肺気腫という状態になると、酸素の取り込みや二酸化炭素を排出する機能が低下します。

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原因
最大の原因は喫煙であり、喫煙者の15~20%がCOPDを発症します。ばこ以外の有害物質やウイルス感染、加齢なども原因となりえます。

治療
薬物療法の中心は気管支拡張薬(抗コリン薬・β2刺激薬・テオフィリン薬)です。効果や副作用の面から吸入薬が推奨されており、主として長時間気管支を拡張する吸入抗コリン薬(副交感神経抑制)や吸入β2刺激薬(交感神経刺激)が使用されています。


b. 咳喘息

症状
咳喘息は喘鳴(ゼイゼイいうこと)や息苦しさを伴わず、咳だけを唯一の症状とする病気です。3週間以上続き、痰を伴わないため、慢性で湿性の咳嗽とされます。

メカニズム
アレルギー反応により血管内の白血球の一種である好酸球が気道を攻撃し、炎症を起こします。その結果、表面の感覚器が敏感になり、外からの刺激が脳幹(延髄:えんずい)にある咳中枢(せきちゅうすう)に伝わりやすくなり、胸の筋肉や横隔膜が反応して咳が出ます。また、気道の拡がり具合を調節する筋肉(平滑筋)が刺激により縮むことも原因の一つです。

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原因
カゼ・アレルゲンの暴露・天候・ニオイ・ストレスなど様々です。

治療
気道の炎症を抑えるため吸入ステロイド薬が効果的です。また、気管支拡張薬も同時に吸える合剤が標準治療となっています。


c. アトピー咳嗽

症状
のどに掻痒感(かゆみ、イガイガ感)を伴った乾いた咳が唯一の症状です。鼻炎が合併していることが多いのも特徴です。

メカニズム
気道(特に咽頭、喉頭)に存在する咳受容体と呼ばれる、異物を感知して咳中枢へ信号を送る部分がマスト細胞のヒスタミン等によるアレルギー症状により感度が上がり、通常では反応しないようなわずかな刺激(タバコの煙や会話など)によって、必要以上に反応してしまい、咳が誘発されます。

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原因
ハウスダストやダニ、ホコリなどのアレルゲンによるものが多いです。

治療
アレルギー反応を抑えるヒスタミンH1受容体拮抗薬が第1選択薬となり、その有効率は約60%とされています。効果不良の場合には吸入ステロイド薬の追加を行います。


後編へつづく、、、👇


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