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新谷雅先
2024年9月9日 12:22
【1】終戦後、進駐軍が羽田空港拡張のため、そこにあった神社を移転させようとした。ところが、ご神体は無事移転できたのだが、鳥居だけはできなかった。鳥居を動かそうとすると、事故が起きるのだ。そのため、鳥居だけはそこに残すことになったという。きっと神様の怒りに触れたのだろう。ぼくが通った高校のグラウンドの隅に、大きな磐がある。そのため、グラウンドをいっぱいに使うことができなかった。その
2024年9月5日 06:30
我軍はこれから地上に降りてあの汚れた天下を奪いに行く各員声を張上げ遅れを取るなそこには人間という敵がいる数十億もの人口を抱えており技術科学もかなり進んでいるとはいえやつらは烏合の衆だ天の攻撃には手も足も出ない臆せず声を上げ突き進むのださすれば自ずと天下は取れるさあ暗闇の中に閃光を走らせ人間の世界を壊滅させるのだ
2024年8月30日 06:30
大雨が降る。風が吹く。台風が接近すると年寄りはなぜか外に出たがるものだ。ところが年に一度の悪天候で今日は患者は来ないと踏んだ行きつけの病院は臨時休業だ。行き場をなくした年寄りはいちおう看板回している床屋を見つけてはたむろする。おかげで床屋は大忙しだ。年に一度の大忙しだ。加齢臭が来る。金が来る。
2024年8月29日 06:55
大雨の降る夜の草むらで静かに鳴いている虫たちはこの雨に濡れていないのだろうか巣の浸水に困ってないのだろうか土砂崩れに悩んでないのだろうか避難場所に逃れているのだろうか稲光がまぶしくないのだろうか雷の叫びが怖ろしくないのだろうかもしかしてもしかしてもしかしてそんな命や生活に関わることよりも異性を誘うことが大切なのだろうか大雨の降る夜の草むらで静かに鳴いている虫たちは
2024年8月27日 09:05
空が雨雲を脱いでいるぶ厚い雲を脱いでいる湿った体を乾かす様に青い素肌を陽にさらす空は乾いた青い素肌を赤い化粧で染めていくこよい宴に出かけんと赤く素肌を染めていく空はその身を染めた後黒いドレスを身に纏う小さな光を散りばめた黒いドレスを身に纏う
2024年8月23日 06:30
・・・・ドブドブ、ドブドブ、ドブドブと聞き慣れない音の雨が降る。ブカブカ、ブカブカ、ブカブカと聞き慣れない音が窓を打つ。もはや意味のなくなったワイパーは面倒くさそうに水の中を泳いでいる。窓の外はゆがんでいるのか。いやいや、雨でにじんでいるのだ。水と空気の対比はほとんど9:1で10:0にならないのは、何とか地面にタイヤが触れているからなんだな。いずれにしても、このまま走ってい
2024年8月19日 06:30
頭の上に重く大きな塊が乗っている塊には猛暑という名前がついているその重さに押されて汗が染出てくる塊の中にはいろんな夏が入っている声を発して塊の中を飛び回っているその声に刺激されて汗が染出てくる
2024年8月16日 06:30
神さまお願いがあるのです。次の人事のことなのですが、私を口元が針になっている奇怪な容姿の生き物として誕生させないでくださいな。動物の血を頂戴することが究極の目標のような人生を、動物の血を頂戴することで目のかたきにされる人生を、あゆませないでくださいな。種族を絶やさないためにとひ弱そうな男と交わった後、狂ったように生き物の血を求めて飛ぶ悲しい女の性を背負わせないでくだ
2024年7月23日 17:00
風の絵描きさんは白い絵の具を集めて青空のキャンパスに一筆で画を描きあげる描きあげては一番目立つ所にその画を展示するすべての人が鑑賞できるようにその画を展示する
2024年7月20日 06:35
海原に白く見えるのは波であり、鳥であり遠くを行く船の色であり窓に反射する光であり異国からの便りであり小人の島の灯台でありボートであり、ブイであり時に跳ねる魚であり小さなイカの群れであり気化された潮の精でありこの季節の日差しであり生きていくための糧であり夢であり、希望であり喜びの雄叫びである。
2024年7月19日 06:30
通り雨、犬といっしょに夏、背中を濡らし大きな雲が頭の上を黒く塗りつぶす息を詰まらす俄かな夜の中を走ってきた雲が光を放ち大地を震わす ついさっきまでの太陽の中 ぼくは影を落とし 座り込んでの手探りの中 もう戻ってはこない通り雨、ぼくと似た人が黒い喪服を濡らし降り続く雨はまた轟々と影を塗りつぶす (1976年8月作)
2024年7月13日 06:30
農家の人たちが寝静まった頃お地蔵さんたちがやってきて緑色の大きな玉や小さな玉にせっせと黒い線を書いていく「この玉の中は赤いんだって「甘い汁が詰まっているって「そろそろ腹も減ってきたな「一つ割って食べてみようか「よせよせ修行中なんだからせっせと黒い線を書いていく
2024年7月7日 06:24
夏至の日は晴れてないとありがたみがない。一番長い陽の光を拝めないのが口惜しくて。雨が夜を急かすので日没すらもわからない。七夕の夜は晴れてないとありがたみがない。幼いころからの夢を雨はいつも流してまう。織姫と彦星の恋を一度も味わえないでいる。
2024年7月5日 06:30
ダダダダダと雨が降りだしました。ゴロロロロと雷が鳴りだしました。ピカカカカと稲妻が走っています。これから車で仕事に出かけようとエンジンをかけたぼくにどうして神仏はこの試練を与えるのだろう。あまりにもあまりにもあまりにもタイミングがよすぎるじゃないか。もしかしたらぼくはいま「決死の風神雷神障害物行」なる修行でもさせられているのではなかろうか。それはないでしょう神さま仏さま。ダ