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自然の詩

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自然界のこと、生き物のこと・・・・
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記事一覧

バチが当たるぞ!

バチが当たるぞ!

【1】
終戦後、進駐軍が羽田空港拡張のため、そこにあった神社を移転させようとした。
ところが、ご神体は無事移転できたのだが、鳥居だけはできなかった。
鳥居を動かそうとすると、事故が起きるのだ。
そのため、鳥居だけはそこに残すことになったという。
きっと神様の怒りに触れたのだろう。

ぼくが通った高校のグラウンドの隅に、大きな磐がある。
そのため、グラウンドをいっぱいに使うことができなかった。
その

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【詩】ゲリラ

【詩】ゲリラ

我軍はこれから地上に降りて
あの汚れた天下を奪いに行く
各員声を張上げ遅れを取るな

そこには人間という敵がいる
数十億もの人口を抱えており
技術科学もかなり進んでいる

とはいえやつらは烏合の衆だ
天の攻撃には手も足も出ない
臆せず声を上げ突き進むのだ

さすれば自ずと天下は取れる
さあ暗闇の中に閃光を走らせ
人間の世界を壊滅させるのだ

【詩】台風と床屋

【詩】台風と床屋

大雨が降る。風が吹く。
台風が接近すると年寄りは
なぜか外に出たがるものだ。
ところが年に一度の悪天候で
今日は患者は来ないと踏んだ
行きつけの病院は臨時休業だ。

行き場をなくした年寄りは
いちおう看板回している
床屋を見つけてはたむろする。
おかげで床屋は大忙しだ。
年に一度の大忙しだ。
加齢臭が来る。金が来る。

【詩】大雨の草むら

【詩】大雨の草むら

大雨の降る夜の草むらで
静かに鳴いている虫たちは
この雨に濡れていないのだろうか
巣の浸水に困ってないのだろうか
土砂崩れに悩んでないのだろうか
避難場所に逃れているのだろうか
稲光がまぶしくないのだろうか
雷の叫びが怖ろしくないのだろうか
もしかしてもしかしてもしかして
そんな命や生活に関わることよりも
異性を誘うことが大切なのだろうか
大雨の降る夜の草むらで
静かに鳴いている虫たちは

【詩】空が雨雲を脱いでいる

【詩】空が雨雲を脱いでいる

空が雨雲を脱いでいる
ぶ厚い雲を脱いでいる
湿った体を乾かす様に
青い素肌を陽にさらす

空は乾いた青い素肌を
赤い化粧で染めていく
こよい宴に出かけんと
赤く素肌を染めていく

空はその身を染めた後
黒いドレスを身に纏う
小さな光を散りばめた
黒いドレスを身に纏う

【詩】ゲリラ豪雨

【詩】ゲリラ豪雨

・・・・
ドブドブ、ドブドブ、ドブドブと
聞き慣れない音の雨が降る。
ブカブカ、ブカブカ、ブカブカと
聞き慣れない音が窓を打つ。
もはや意味のなくなったワイパーは
面倒くさそうに水の中を泳いでいる。
窓の外はゆがんでいるのか。
いやいや、雨でにじんでいるのだ。
水と空気の対比はほとんど9:1で
10:0にならないのは、何とか地面に
タイヤが触れているからなんだな。
いずれにしても、このまま走ってい

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【詩】汗

【詩】汗

頭の上に重く大きな塊が乗っている
塊には猛暑という名前がついている
その重さに押されて汗が染出てくる

塊の中にはいろんな夏が入っている
声を発して塊の中を飛び回っている
その声に刺激されて汗が染出てくる

【詩】来世人事

【詩】来世人事

神さまお願いがあるのです。
次の人事のことなのですが、
私を口元が針になっている
奇怪な容姿の生き物として
誕生させないでくださいな。

動物の血を頂戴することが
究極の目標のような人生を、
動物の血を頂戴することで
目のかたきにされる人生を、
あゆませないでくださいな。

種族を絶やさないためにと
ひ弱そうな男と交わった後、
狂ったように生き物の血を
求めて飛ぶ悲しい女の性を
背負わせないでくだ

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【詩】風の絵描きさん

【詩】風の絵描きさん

風の絵描きさんは
白い絵の具を集めて
青空のキャンパスに
一筆で画を描きあげる
描きあげては
一番目立つ所に
その画を展示する
すべての人が
鑑賞できるように
その画を展示する

【詩】海原

【詩】海原

海原に白く見えるのは
波であり、鳥であり
遠くを行く船の色であり
窓に反射する光であり
異国からの便りであり
小人の島の灯台であり
ボートであり、ブイであり
時に跳ねる魚であり
小さなイカの群れであり
気化された潮の精であり
この季節の日差しであり
生きていくための糧であり
夢であり、希望であり
喜びの雄叫びである。

【詩】通り雨

【詩】通り雨

通り雨、犬といっしょに
夏、背中を濡らし
大きな雲が頭の上を
黒く塗りつぶす

息を詰まらす
俄かな夜の中を
走ってきた雲が光を放ち
大地を震わす

 ついさっきまでの太陽の中
 ぼくは影を落とし
 座り込んでの手探りの中
 もう戻ってはこない

通り雨、ぼくと似た人が
黒い喪服を濡らし
降り続く雨はまた轟々と
影を塗りつぶす

       (1976年8月作)

【詩】畑のお地蔵さん

【詩】畑のお地蔵さん

農家の人たちが寝静まった頃
お地蔵さんたちがやってきて
緑色の大きな玉や小さな玉に
せっせと黒い線を書いていく
「この玉の中は赤いんだって
「甘い汁が詰まっているって
「そろそろ腹も減ってきたな
「一つ割って食べてみようか
「よせよせ修行中なんだから
せっせと黒い線を書いていく

【詩】夏至の日と七夕の夜は

【詩】夏至の日と七夕の夜は

夏至の日は晴れてないとありがたみがない。
一番長い陽の光を拝めないのが口惜しくて。
雨が夜を急かすので日没すらもわからない。

七夕の夜は晴れてないとありがたみがない。
幼いころからの夢を雨はいつも流してまう。
織姫と彦星の恋を一度も味わえないでいる。

【詩】タイミング

【詩】タイミング

ダダダダダと雨が降りだしました。
ゴロロロロと雷が鳴りだしました。
ピカカカカと稲妻が走っています。
これから車で仕事に出かけようと
エンジンをかけたぼくにどうして
神仏はこの試練を与えるのだろう。
あまりにもあまりにもあまりにも
タイミングがよすぎるじゃないか。
もしかしたらぼくはいま「決死の
風神雷神障害物行」なる修行でも
させられているのではなかろうか。
それはないでしょう神さま仏さま。

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