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2022年12月の記事一覧
『運試し擬人化』 # 毎週ショートショートnote
彼女が怒っている。
仕事が上手くいかなかったらしい。
とにかく、ついてないとぼやいている。
そして、その怒りの矛先は僕に向いているようだ。
今から出て来いと連絡してきた。
今日は大晦日だというのに。
その夜、指定された公園に行くと、
「そこに立って」
どこで買ってきたのか、スーパーボールが山ほど入ったビニール袋。
「絶対によけないでね」
どうやら僕は射的の的にされたわけだ。
しかし、彼女の投げ
『赤と白と緑(緑)』 # あなぴり
(前半)
11月に入ったばかりだというのに、もうクリスマスソングなんて。
「気が早いのよ」
誰にも見えないように、菜穂子はふうっ、とため息をつく。
夕方のスーパーマーケットは、人でごった返していた。皆それぞれ忙しそうで、そして何より充実して幸せそうに見える。
「超目玉商品!小松菜88円」
と書かれた値札がなぜか、隣のほうれん草の方についており、客からクレームが来たとフロアマネージャーからのお叱
『アドベントカレンダー:ホラー(白)』 # あなぴり
《前半》
透き通るような白い肩を、金に近い栗色の髪が滑り落ちてくる。
フェイシアはゆっくりと両腕を上げ、頭の後ろで指を組んだ。
スカイブルーの背景紙に、ささやかな細い影。黒のベアワンピースをまとった背中が、健吾と僕のカメラの前に凛と立つ。
ライトを浴びて輝く腕は、まるで真珠のように艶やかだ。
「すげえ……」
健吾が、ため息混じりに小さく呟いた。
肩甲骨まで伸びた髪、ぐっ
『執念第一』 # 毎週ショートショートnote
朝から所長に怒鳴られている。
「やる気あんのかよ。こんな成績で。セールスってのは断られるとこから始まんだよ。セールスお断りなんて張り紙は、私ゃセールスに弱いのよってのの裏返しなんだ。そんなのに負けてどうすんだあ。執念って言葉しってるか?執念第一。言ってみな。もう一度。わかったらとっとと行ってこい」
インターホンの横には「セールスお断り」の張り紙。
所長の言葉が浮かんできて、思わずため息をつく。
『僕から僕へのメリー・クリスマス』
日は落ちて、公園は薄暗くなってきた。
いくつかの街灯に照らされているところだけが、ほの明るい。
少し前まで遊んでいた子供たちももういない。
そのせいでもないだろうが、空気も冷たくなってきた。
住宅街にある小さな公園だ。
遊具といったも、たいしたものはない。
低い滑り台と、キリンやパンダを模したまたがるだけのものが数台。
あとは小さな砂場。
公園の周囲は家に囲まれている。
窓からは、暖かそうな灯りが
『クリスマスカラス』 # 毎週ショートショートnote
健太君にはどうしてもわからないことがありました。
サンタさんのソリがどうして空を飛べるのか。
ある年のクリスマスイブ。
健太君は屋根に隠れて見張っていました。
サンタさんが家の中に入るのを待って、健太君は、家にあった懐中電灯でソリを照らしました。
するとどうでしょう。
ソリに繋がれたカラスが6羽、闇の中から浮かび上がりました。
カラスは慌てました。
「誰かに言ったら、もうサンタさんは来ないからね
『穴の中の君に贈る』 # 毎週ショートショートnote
一見絶望的なこの状況だが、案外そうでもないかもしれない。
この向こうにも同じような穴があって、両方から掘り進めば、見事トンネル開通、などということも考えられるわけだ。
絶望は希望の始まり。
穴はトンネルの始まりだ。
いや、待て。
トンネルが開通して、掘り進んできた2人が抱き合ったとしてだ。
お互いに穴の外には出られないから掘り進んだのではないか。
そんな穴が開通したとして、その先どこに向かうとい
『男子宝石』 # 毎週ショートショートnote
ひと口に宝石といっても、元は約4000種あるといわれる鉱物の一部だ。
その中で、希少性が高く、美しく、かつ、ここがポイントだが、人間に愛された約40種が宝石として崇められている。
さて、人間とはやっかいなもので、とにかく愛するものとひとつになりたがる。
馬やイルカ、珍しいところでは車とくっついた者もいる。
愛書家というくらいだからそんな人もいるのだろう。
「綺麗な男の子ですよ」
そう言って手渡