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大日本末期文学全集

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終末感が滲み出る文章がまとまったら、ここに投稿します。イラストと文を合わせて一つの作品になっていることもあるので、雑誌のような感覚でお楽しみください。
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2022年3月の記事一覧

『今夜決行しよう』

『今夜決行しよう』

妙だ

昨日までの記憶がまるでない

苦しかったことはもちろん

楽しかったことも

かろうじて

自分の名前はわかるし

家族の顔もわかるから

生活には支障がない

そしてきょうも会社で

仕事をふつうに

こなしている

だから正確には

思い出がない

昨日までの思い出が

まるでない

昼休みにATMに立ち寄った

残高が著しく減っている

どんな散財をしたんだ

そのタイミングで妻から

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『ブレインストーミング』

新企画について

まずはブレインストーミング

ということで

少人数のグループに分かれて

意見を出し合う

お互いの意見を

遮らず否定せず

傾聴し尊重する

建設的で友好的な

意見交換の場

そんなとき人間の脳は活発に動き

幸福に満たされるという

さて注意

人によってはここから先は

読まないほうがいいかもしれません

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天津甘栗は

脳の天日干し

ブレインストーミング中

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『断末魔が聴こえる』

『断末魔が聴こえる』

みなさんこんにちは

わたしはどこにでもいる

ふつうの社会人です

飛びぬけて立派ではないし

かといって劣等感もありませんから

ほんとうにふつうの人間だと

わたしは思っています

ただちょっと違うのは

朝起きたとき

会社に向かう途中

ランチのあと

残業中

お風呂に入っているとき

などなど

あらゆる場面で

誰かしらの

断末魔が聴こえるのです

はっきりと

この耳で感じます

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『憂い深さも手伝って』

『憂い深さも手伝って』

しとしとと雨が落ちる

春の雨は花びらを散らすから

心細さがいっそう募る

駅のロータリーで待ち合わせ

約束の時間から

もうすぐ1時間が過ぎようとしている

彼女は来ない

電話もつながらないし

メッセージも届かない

事故にでも遭ったのかな

そんな心配が頭をよぎる

はじめて彼女の家に

遊びにいく

駅まで迎えに来てもらって

ちょっとお花見がてらに

スイーツでもテイクアウトして

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『「私は、あなたの姿がはっきりと見えますよ』

『「私は、あなたの姿がはっきりと見えますよ』

「そんなわけで日常生活に支障が…

「それではあなたは、ご自身の姿が

「はい、誰からも見えていないような…

「透明人間みたいなことでしょうか?

「そのとおりです

「では私がいま対面し、話しているのは?

「透明人間です

「私は、あなたの姿がはっきりと見えますよ

「それは先生がお医者様だからです

「受付を済ませましたね、係のものは?

「…

「あなたから健康保険証を受け取ったでしょう

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『金曜の晩に』

『金曜の晩に』

会社にいればひっきりなしに

電話が鳴り

メールボックスは満杯

気が付けばアポイントの時刻で

そんな業務のかたわら

労働組合の活動にも従事する

加えて

部門をまたいだ全社的な

働き方改革委員を務めていて

だから早めの出勤や

遅い帰宅が続く

それでも余暇は楽しみたいから

グルメ同好会でランチに行き

夜は映画サークルの鑑賞会

そして週末は草野球と

余裕があれば

ゴルフに行

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『ドリーム渚』

『ドリーム渚』

50億光年の時空を経て

あいつがやってくる

この町内にやってくる

やつの名はそう

ドリーム渚

ふんどし一丁

腰にはひょうたん

ぶら下げて

ドリーム渚がやってくる

ふだんは銀河系を股にかけ

営業に次ぐ営業で

忙殺されている

ドリーム渚

ただこの不定期開催

地元凱旋公演だけは

欠かさずノーギャラで

多くの場合

来訪の2、3日前に

宇宙FAXで

本人から連絡がある

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『どうしても生卵の衝動を抑えられずに』

『どうしても生卵の衝動を抑えられずに』

今朝

飼育委員の僕が

鶏小屋に餌をやりに行ったら

藁の山に寝てるおじさんがいて

ふつうならこういうとき

怖くなって誰かに

助けを求めに行くんだろうけど

なぜだか僕はおじさんに

そっと声をかけてみたわけ

「あぁ…ごめんなぁ…」

目を覚ました

身なりはとくに不潔でもない

ちょっとぶかぶかだけどこぎれいな

モスグリーンのスーツに

茶色のネクタイ

白髪に藁はついているものの

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『令和4年度 大日本地底大学末期文学部入学試験 模範解答』

『令和4年度 大日本地底大学末期文学部入学試験 模範解答』

次の文章を読んで、問1~3に答えなさい。

(問1)

文中(a)「"凡そ芸術的な"クールさは見受けられない」の反駁として、よくサッカーの独りよがり系実況や記者が多用しがちな、サッカーにおける”芸術的な”プレイの例を述べよ。

<解答>

芸術的なループシュート

<解説>

DFライン抜いてGKと1対1になった局面などで良く使われるループシュート。実際アーチっぷりが美しいですが、チョンって打てば

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『いや妙な常連などいないほうがいい』

『いや妙な常連などいないほうがいい』

わざわざ飛行機に乗って

このためにやってきた

ワンコインで食べ放題の寿司屋

地元の漁港からその日の水揚げを

毎朝直接仕入れているという

ガイドブックには載っておらず

知る人ぞ知る名店らしい

予約はしていなかったけど

意外にも客の姿は他になく

すんなりと入店できた

この店を教えてくれた友人が

オーナーが最近変わったらしい

とは言っていたけど

それって関係ある?

いや妙な常

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『雪どけの頃は近くて』

『雪どけの頃は近くて』

雪どけの頃は近くて

こんな時候には

地すべりに気をつけないといけない

雪国に育ったわけでもない僕が

こっちに住み始めて

最初に覚えたこと

大きな雪の塊が

雪崩落ちるときに

その下の土も一緒に

分校に今年の新入生はないと聞く

もっとも卒業生も今年は

いなかったんだけど

僕は去年から引き続き

同じ子達つまり

新二年生を受け持つことになった

生徒は3人

全校で12人

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『「なあヤマザキ!どうなんだ真実は!?』

『「なあヤマザキ!どうなんだ真実は!?』

「いいかヤマザキ、お前には事件当日、被害者の死亡推定時刻と思われる午後9時から11時のアリバイがない

「ないよ

「それどころかヤマザキ、おまえは被害者であるかおりさんの自宅マンションの最寄り駅から付け回し、強引にかおりさんの部屋へ入るところまで、防犯カメラで確認されている

「そうかもな

「ヤマザキ、おまえとかおりさんは以前に同じ職場にいて、恋愛関係にあった。そしてしばらくの蜜月のあと、破局

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『奴と籠』

『奴と籠』

二十両もあろうかという列車は

プラットフォームに収まりきらないから

客車部分だけがかろうじて接岸して

日に一回

だいたい夕暮れ時

西から東へ向かう列車がこの駅に停まる

私は帰りを待つ

便りは一向に来ないから

ひたすら

奴の帰りを待つ

昼間は籠を編んで

行商人に渡す

あぁだからこの列車に乗る行商人にも

毎日用事がある

東から西へ戻る朝方の列車にも

私は納品する

そうや

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『この町の一大産業はトマトケチャップ』

『この町の一大産業はトマトケチャップ』

職を求めてAという町に流れ着いて

この町の一大産業はトマトケチャップ

トマトは輸入物

ケチャップのでっかい工場があるって話

町の労働人口の90%が

そのケチャップ工場で働いていて

残りの5%が

そのケチャップ工場に出入りする業者

残りの2%が公務員で

残りの2%がその他の職種で

最後の1%が荒くれ者

だからこの町にくれば

よほどのことがないかぎり

ケチャップ工場で

働く

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