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AIによって広告が駆逐され、"ポスト広告時代"がきそうな未来予想

AIの発展は著しく、私も英語学習がてら翻訳メモしてる海外の記事でもこの話題が非常にホットです。

今日はここ最近もっぱらAIのトレンドを追ってきてみた自分が感じた広告業界のパラダイムシフトについての妄想をまとめてみたいと思いました。

自分はもともとUIUX周りのデザインをしていたのですが、転職して現在では日本企業の主にWeb系のマーケ・広報部に属していることもあり、このあたりの動きが気になっています。

AIはすごいとか、AIは仕事を奪っていく、などの昔からある論調が一気に現実味を帯びてきた昨今。
Webマーケ業界においては「人間の仕事がなくなる(AIが代替してくれる)」というよりは「今のWebマーケ界隈のいち部分が無価値になり新しい方向性(重心のかけ方)を探さなくてはいけない」という側面も強くなりそうと考えていたりします。

AIは不純物を取り除くフィルター

AIの効用というものは様々あると思うのですが、その一つとして「ユーザーが避けたいものを取り除いてくれる」というものも大きい気がしています。

本や論文などの長文の文章や長い動画をその人が必要なポイントを押さえながら要約してくれたり、メールの内容を箇条書きにしてまとめてくれることがAIで簡単にできるようになりました。

こういった動きの背景には「自分に関係する情報だけほしいけど、情報を解釈して取捨選択するのが面倒」という人間の根源的な欲求があるように感じます。

この「人間が面倒を避ける方向へ時代が動いていく」という流れは不可逆であり、この流れはAIの発展によって今後もより加速していくことでしょう。

さて、このように世の中にある膨大な情報を自分専用のコンシェルジュが取捨選択して自動でサマライズしてくれるような世の中において、自分は近い将来Web広告が淘汰されるのではと考えてるようになりました。


AIがWeb広告を駆逐する日

私たちが情報を収集しようとした際に最も目障りで嫌われているもののひとつが広告ではないでしょうか。

知りたい情報を検索しても企業広告や明らかな案件記事にあふれていて知りたい情報にたどり着けなかったり、TwitterやFacebookを開いて友人たちの近況を見ようと思っても見知らぬ人の投稿でタイムラインが埋め尽くされていたり、YouTubeを見ていてもいいところで15秒の動画広告を強制的に見せられたり・・・。
しかしそんな時代ももう長く続かないかもしれません。

例えばTwitterを開いた時にポチッとワンクリックすれば、UIは変わらずに自動でAIが広告ツイートを消してくれたり、YouTubeもワンクリックでその動画の内容をサマライズした新たな動画を瞬時に生成し、そちらを視聴するような時代が来るような気がしています。というか探せばそういったサービスがすでにあるような気さえします。

広告の存在意義云々は別の議論としてあるにせよ、ここ10年ほどであまりに巨大に成長し、その過程で人々に嫌われ続けたWeb広告は、AIという最強のコンシェルジュを携えた人類にとって恰好の標的となり潰されていくのではないでしょうか。


ポスト広告時代の広告を考える

そんな妄想をしつつ、一方で会社員として広告界隈に片足を突っ込んでいる身の自分としては今後の広告はどうなるんだろうという思考がもやもやと頭を漂っています。
少なくとも仕事のやりかたの大規模なシフトは避けられない時代に立たされつつあるように感じます。

これまで通りGoogleのアルゴリズムを分析しながら、巨大プラットフォーマーに高いお金を払って検索上位を狙いに行くよう仕事の意味は薄れていくかもしれません。
昨今TVCMの価値がなくなった、と言われる論調がWeb広告の世界においてより一層あがってくることが予想できます。

ではこれまでのような広く網を張って認知を広げていくような営みの効用が薄れていくとすると、どのような広告施策を打っていけば良いのでしょうか。

ここに対して個人的には新時代の全く新しい施策を考えるというよりむしろ、旧態依然として存在し続けたオールドタイプな広告の価値が相対的に向上していくように感じていたりします。
もう少し考察を深めていきたいと思います。


1.人が望む情報はAIから排除されない

AIが不要な情報を排除するフィルターであるという事実は、逆を言えばその人が積極的に望んでいる情報であれば排除されづらい、ということでもあります。
具体的には

・信頼している人、好きな人の本音の発信
・友人、知人など身近な人からの情報
・特定の分野のニッチで専門的、あるいはパーソナルな情報

このあたりのことはどうも排除されづらそうな気がしています。
広告業界でも一般的にすでに語られていることではありますが、やはりこのあたりの情報の重要性は高いのでしょう。

特にWebを介さないリアルな場での口頭での情報伝達はAIが手を出せないため強力です。(もちろんその情報をどれほど信じるかは本人次第ですが、少なくとも排除はされない)

しかし、こういったものはもちろん今の時代に急に出てきたものではなく、むしろWeb以前、もっと言えば人間が言葉を話し始めた紀元前くらいから存在するものです。
情報源はもっぱら家族や友人の噂話、あるいは権力者や哲学者などの教え、そして専門分野の書物や自著伝などなど。

Web時代に本格的に入った2000年代以降に加速した企業によるWeb広告というものは、回り回ってまた元の旧態依然としたものに帰着していき、それらの価値が相対的に上がっていくようなことを最近妄想しています。

これまでも重要視されていた「口コミ」や「発信力のある人材をどう取り込むか」の意義が巨大になり、「ここも考えたほうがいい」というものから「もうここしかない」という広告要素になっていくような気がしています。

もうちょっと話を広げていきます。

自分の転職のきっかけにもなった「アフターデジタル2」という本で言及されていたことの受け売りにもなりますが、広告というものはそれ自体をどう届けるかということよりも、広告を受け取る顧客の前後の生活行動や心理状況などを緻密に計算し、「いつどこでどんな情報を顧客が求めるのか」を正確に見積もる必要があります。

そうなってくると、現在のいわゆるWebマーケの業界においても現実世界における人間関係や生活様式との兼ね合いも考慮しながらデザインしていくことがより求められてきます。

もしかしたらその伝え方はせっせとランディングページを作ることではなく、地域の交流の場作りであったり、友人とのお茶会だったり、地元のボランティアで情報伝達の糸を紡いでいく地道な作業に変わることになるかもしれません。

顧客の生活の中にWebとリアルとを組み合わせながらどのように情報を溶け込ませ、どう伝達させていけるのか、をより真剣に議論する必要性が高まってくるように感じます。
※ちなみにアフターデジタル2はIT業界の重役までみんな読んでるド定番の良書なので未読の方はぜひ一度読んでみてください。偶然2023/04/23時点でKindle版は半額セールのようです。お前が広告するんかい、というツッコミはやめてくだs


2.職人技の価値が上がる

鼻息を荒くして書き始めた1でしたが、蓋を開けてみたらこれまでさんざん議論されていた事の蒸し返しになってしまったので、ここからはより個人的に強く感じたことを書ければと思っています。

ここでもやはりオールドスタイルな広告の重要性を考えているのですが、特に街頭広告(ポスター、建物や電柱看板など)の意味が大きくなるんじゃないかなぁと妄想しています。最近だとデジタルサイネージを見かける機会も増えました。

これらの広告のイケている点は「デジタルによって排除されない」という要素の他に「顧客が無視しやすい」という部分にあると考えます。

広告が嫌われるのはYouTubeやTVの合間に挟まれる望まない動画であったり、タイムラインに与えるノイズであったり、顧客が望んでいるものが別にある状況で無理やりに押し付けられる情報にあるような気がしています。
我々が知りたいのはYouTubeであれば動画の結末や、Twitterであれば友人や著名人の発信であって、それらを得るための阻害となる要素には大きなストレスやアレルギー反応が起きてしまいます。

しかし、街頭広告であれば通行人の目的を大きく妨害するような要因にはなりづらく、少なくとも与えるストレスという点ではWeb広告よりも圧倒的に低いものとなるでしょう。街頭広告に日々ストレスを抱いている人はそんなに多くないはずです。

もちろんWebに比べて格段に情報拡散性は低いですし、伝えられる情報量の制限は格段に大きくなります。また、人を邪魔しないという広告というのは、強制的に視界に入れさせることができないという裏返しでもあります。
そのため、見る人をハッとさせ、サービスやプロダクトの価値を一瞬で伝えるデザイン性や、記憶に刻み込まれるコピーをいかに作れるかと言った、職人技の価値が重要になってくるように感じます。


肉体とAIとを調和させる

なんか攻殻機動隊ぽい。
さて、ここまで街頭広告だったり人間の職人技だったりだいぶとオールドスタイルに固執したような記事になってしまってきたのですが、こういったことを踏まえた上で今度は広告を届ける側がAIの恩恵を受けていく必要があると考えます。

例えばコピーやコンテンツ文章を考えてもらったり(参考記事)、イラストやデザインもAIからアイディアをもらって作る(参考記事)ことも有効です。

手段としては古いものでも、手法としては積極的に時代の恩恵を駆使して広告戦略を作っていく必要があるように感じます。


まとめ

Webのプラットフォーマーの一挙手一投足に合わせながらテクニックと資本を投入してマスに網をかけるような宣伝手法は今後より一層難しくなってきそうです。

そういった時代において、私はもっと物質的・身体的でアナログな情報伝達の価値が相対的に上がるように見込んでいます。
しかし、そういった旧態依然とした情報伝達のほうほうにおいてもAIの力は偉大で、これらをきちんと使いこなせるかどうかがマーケターとしても重要なスキルになってくるのでは、ということを書いてみました。

お付き合いいただきありがとうございました。

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