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【BL二次小説(R18)】 共に堕ちて⑫


「ダン・スペシャル出たァ!85%継続確定ィ!」


本日のイベント台『緑ダン』で高設定をツモった荒北は5つ目のドル箱を上に乗せた。
1箱だいたい2万円分の換算となる。


新開は10台ほど離れた場所で『南斗の拳』を打っている。
こちらも順調にドル箱を積み上げていた。



二人でスロプロを始めて数ヶ月。

新開もだいぶ慣れてきて、一人で判別も出来るほどに上達していた。
もう軍資金も自分で出している。

二人とも毎日着実に稼いでおり、この界隈の店では有名人となっていた。


そんな時 ──。



「オイ、おまえ」

「ア?」


荒北が打っていると、背後から知らない男に声を掛けられた。



「ちょっと最近チョーシ乗り過ぎてねぇ?」


振り向くと、ガラの悪い3人組のスロッターに囲まれていた。


「毎日毎日高設定ツモっておかしくね?」
「店員とグルなんじゃねーのオマエラ」
「正直、目障りなんだわ」

矢継ぎ早に因縁をつける3人組。


周りの客達はハラハラして遠巻きに注目している。


こういう時、店員は決して助けてはくれない。
あくまでも客同士のトラブルとして、ノータッチなのだ。



「……」


荒北は3人組を睨み付け、冷静に言い返した。


「ここは貧乏人の来るトコじゃねェぜ。オメーらのシマはアッチ」


そう言って、5スロのコーナーを顎で差した。
低換金率で、老人ばかりのゲーセンのようなコーナーである。


「てめぇ!」
「表出ろやコラ!」
「この土地で打てなくしてやらぁ!」


ガシッ!!

「「!!」」


荒北に掴みかかる3人組の頭が、誰かに鷲掴みされた。


3人組が振り向くと、新開が立っていた。


「んだてめ……」




「オレのツレに、なんか用かい?」



新開は瞳を赤く光らせ……。

ニヤリと笑った。



「うっ!」
「なっ、」
「や、やべぇこいつ!」


3人組は真っ青になって逃げて行った。


周りの客も店員もホッとしている。



新開は荒北に向き直り、優しい笑顔でニッコリと微笑んだ。


「休憩しようぜ、靖友」

「ア……アァ」



久々に見た新開の鬼モードに、荒北もビビっていた ──。





~休憩所~


ソファにドサッと座り、ベプシを飲む二人。


「ンもゥ、怖えェんだヨ、オメーの鬼ィ」

「オレの靖友に乱暴しようとするからさ」


荒北は煙草をくわえ、火をつける。


「……いつも勝ってると、どうしても目立つ。ああやって絡むヤツラが必ず出てくるンだ」

「ただの妬みだよな。1人に対して3人で囲むなんてチンピラもいいとこだ」


「理屈なんか通じねェクズが集まる場だからなパチンコ屋ってのァ。こっちもそのつもりで自衛しねェといけねェ」

「換金した後の帰り道とかも気を付けないとな」


「アア。家も特定されねェよう、回り道すっか」

「ヒュウ。刑事ドラマみてぇ」

「まァたオメーは……」


能天気な新開に呆れる荒北。





殺伐とした鉄火場であるギャンブル場。

とち狂った人間がいつ後ろから刺してきてもおかしくない環境。


その緊張感の中。



(新開……)


荒北にとって、新開の存在はオアシスだった。



しかし、今後もまたさっきのようなトラブルに何度も遭うだろう。

自分1人ならともかく、新開まで危険にさらすことになる。


(……)


もういい加減、今後の身の振り方を考える時期なのかもしれない。

いつまでもこんな自堕落な生活をしていては、いけない。


(けど……)


頭では解っているのだ。


しかし。


先の事を何も考えず、新開と一緒にこうしてだらだらと過ごす生活が止められない。


いつまでもいつまでも、こんな風にお気楽に二人で生きていきたい……。



(だがいつかは……重い腰を上げねェと……)



荒北は葛藤していた。






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