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映画とドラマのこと

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#シネマレビュー

映画「くれなずめ」 持て余す喪失感をしょーもなく乗り越える青春ストーリー

映画「くれなずめ」 持て余す喪失感をしょーもなく乗り越える青春ストーリー

おそらく若葉竜也をキーワードにオススメに出てきたので次に干渉したのは映画「くれなずめ」。前評判なしに見たのでどんな話か全く知らなかったけれど、男子たちのバカ騒ぎを呆れて見ている女子高生、の気分になる映画でした。

ストーリー

友人の結婚式の余興を披露するために久しぶりに集まった男6人。かつてのように集まればバカを言い合って盛り上がる。なぜ久しぶりなのか、何となく奥歯にものが挟まったように、ある部

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映画「街の上で」ぐるりと回って戻る、螺旋系物語

映画「街の上で」ぐるりと回って戻る、螺旋系物語

2024の春ドラマでの好演が界隈を賑わせていた「アンメット」の三瓶先生の若葉竜也。その影響もあっただろう、あちこちでリバイバル上映も決まったとSNSで見かけたのでようやく鑑賞。「街の上で」

全体を包むムードはカフェ、アングラなBar、ライブ、古着、そして舞台、ざらざらした世界観、そこに漂うまったりとした空気。映画が始まると同時にぼんやりと、シモキタの街をぶらぶらできるようなそんな空気があった。

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血のつながりとは、あるいは結婚とは 映画「親愛なる君へ」

血のつながりとは、あるいは結婚とは 映画「親愛なる君へ」

台湾映画「親愛なる君へ」を観ました。

ストーリー

とある町の片隅、息子とその祖母と3世代の3人暮らしをするジエンイー。病に苦しむ祖母と学校に通う息子の面倒を見ているジエンイーは2人とは血のつながりがない。息子はジエンイーがかつて愛した男の忘れ形見だった。面倒を見る義理などないのに献身的であるジエンイーに疑問を抱くのは、かつて愛した男の弟。
借金で家族に迷惑をかけた上、上海に逃げた男は家族のよう

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永遠の命は神の采配なのか、映画「SEOBOK/ソボク」

永遠の命は神の采配なのか、映画「SEOBOK/ソボク」

話題になっていた映画「ソボク」。WOWOWで放映されていたのでようやく鑑賞できた。

主役2人の顔つきから察するに、ややブロマンス的要素を期待してしまったが、それよりも人間の永遠のテーマである「死」と言うものを挟んで真反対の位置にいる2人が、共に時間を過ごすうちに、人間とは何か、命とは何かを問うストーリーとなっていた。

【ストーリー】
元情報局のエージェントであるギホン(コン・ユ)は病に侵され、

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映画「空白」 その赦しは誰のためか。

映画「空白」 その赦しは誰のためか。

映画「空白」を観た。

本日、偶然にも蒲郡に行っていたのだけれど、この映画の舞台となったのが愛知県蒲郡市だった。とある万引き未遂事件から引き起こされた交通事故をきっかけに、人生を狂わされた人々の狂乱の日々を綴る。

【ストーリー】両親から引き継ぐ形で、スーパーあおやぎの店長として働く直人(松坂桃李)。ある日、化粧品を万引きしようとする少女添田花音を捕まえるが、店の裏で話を聞こうとするも逃げられてし

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タイの映画「デュー あの時の君とボク」を観た

タイの映画「デュー あの時の君とボク」を観た

 映画「デュー あの時の君とボク」を観た。

韓国のファンタジー恋愛映画「バンジージャンプする」(イ・ビョンホン主演)をリメイクしたタイの映画。そのまま持ってくるのではなくてアレンジを加えたストーリーとなっている。

ストーリー1996年、タイの狭い田舎町。厳格な父親のいる保守的な家で育ったポップは転校生であるデューに出会う。何となく疎外感を感じていた2人は急速に仲を深め、それは愛という形に変わっ

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ミステリーにタイトルをつけた映画「永遠に僕のもの」

ミステリーにタイトルをつけた映画「永遠に僕のもの」

映画「永遠に僕のもの」を観た(原題は「El Angel」)。

バスタブに横たわる虚な目の美少年、タバコを咥え、チラシのカットには拳銃まで見える。果たして彼は何者なのか。

実際に起きた連続殺人事件を元に、「黒い天使」と呼ばれた美しき犯罪者に迫った本作。謎多き「天使」に、ある一定の解釈を加えたフィクション、ということになろうかと思う。

特にこれというフックのないただの記録映画のようではあるけれど

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パートナーとしての未来、映画「his」を観て

パートナーとしての未来、映画「his」を観て

少し前に話題になっていた映画「his」をアマプラで鑑賞(現在はレンタルか購入)

同性同士のカップルの恋愛ストーリーはいくつもあるとは思うけれど、この問題に対する一般の人々の意識も成熟しつつあるからか、より踏み込んだ部分を描く作品も増えてきたように思う。

ただ好きから始まり、結ばれて終わるのではなく、その先の関係や家族との葛藤を描くという試みも増えてきたと感じる。

今回の物語は甘い時代を経て、

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恋愛は美しいのか、枯れるのか。映画「花束みたいな恋をした」

恋愛は美しいのか、枯れるのか。映画「花束みたいな恋をした」

今さら感は否めないけれど、一時期話題になっていた映画「花束みたいな恋をした」をようやく鑑賞した。

菅田将暉、有村架純、坂元裕二、恋愛ストーリーとくれば、外すわけにはいかない強靭なコマが並んでいるが、期待を裏切らない展開で最後まで楽しめた。きっと、本作を見ながらさまざまな思いに駆られた人が多かったのだろう。その盛り上がりが納得の観賞後感だった。

2015年。キラキラとはやや無縁の地味な大学生活を

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正直、どっちでもいい、映画「疑惑とダンス」

正直、どっちでもいい、映画「疑惑とダンス」

二宮健監督ということで興味があった映画「疑惑とダンス」を観た。全編でも一時間弱とサクッと観られるドラマサイズ。バカバカしさに「ははは」と笑ってちょっとスッキリしたいときに観るといい。登場人物の誰に一番気持ちが動くのか、それであなたの結婚観や恋愛観がわかるかも?

ストーリーカンナ(徳永えり)とマサオ(木口健太)の結婚のお祝い会として集まった、カンナの大学時代のダンスサークル仲間。2人が出会うきっか

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居心地の悪さを抱えながら、生きる。映画「ロマンスドール」

居心地の悪さを抱えながら、生きる。映画「ロマンスドール」

アマプラの見放題に来たので、前々から気になっていた映画「ロマンスドール」を鑑賞。
先に言っておくと、これ、あんまり得意なタイプの話ではなかった。確かに高橋一生と蒼井優の演技は際立っていたし、特に清楚とエロティックが同居したような主人公の妻、蒼井優は良かった。高橋一生が勤める、ロマンスドールを作る小さな町工場の面々もとてもいい。

けれど、である。

美大を卒業後、フリーターをしていた北村哲雄(高橋

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エントロピーの減少とは、映画「TENETテネット」

エントロピーの減少とは、映画「TENETテネット」

公開当初、劇場で観たけれどもう一度絶対観たいと思っていた映画「TENET テネット」。アマプラで、100円レンタルに期間限定で上がっていたので復習鑑賞(現在は対象外)

正直、一度観ただけで理解したとは到底思えず、その上物理の知識など貧弱極まりないので、何度観ても上澄みの上澄み程度の理解具合かとは思うのだけれど、二回目の方がストーリーの記憶があったのでまだ観やすかった。

男は、とあるテロ事件に特

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アマプラ視聴終了間近、映画「見えない目撃者」

アマプラ視聴終了間近、映画「見えない目撃者」

配信ドラマ・映画はとても便利なのだけれど、見放題がそうでなくなったり、配信自体が終了になってしまったり、もう見つけたら「今見とけ」ということが最近身に染みております。
こちらもいつか見ようと観ようと思っていた映画「見えない目撃者」。もうすぐ配信終了のようです。私のようなのんびり屋さんは、忘れずに期限内に視聴しよう。

警察学校を成績優秀で卒業し、数日後には交番勤務が決定していた浜中なつめ(吉岡里帆

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映画「キャロル」に観る女性性とは

映画「キャロル」に観る女性性とは

アマプラで観られる映画「キャロル」。

ドラマでも映画でもいわゆるBLと言われるジャンルは作品数も多いし、多彩なストーリー展開があるけれど、あまり見ないのが女性同士の恋愛。その中でどういう内容になっているのか非常に興味があった。

1950年代ニューヨーク。高級百貨店のクリスマス商戦賑わうおもちゃ売り場に配属されたテレーズ。その中でひときわ目を惹かれたのが、ブロンドの髪に赤いルージュ、毛皮をまとっ

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