彼女は生きていく為に夢を見る

悩まされて苦しんで

誰かに八つ当たりしたくないから

見たくはない現実

触れない様に交わす言葉

身交わす瞳に滲む不安

胸のモヤモヤは晴れる事のないまま

これからも付き合い続けていく

取り憑き張り付き

いつかは慣れるだろうと思い込む

自分に言い聞かせる

今日も彼女は彼を思う

それが正しかろうと

間違っていようとも

答えを出す必要は

どこにもなくて答えを出さなければ

曖昧なまま

傷つかずに済むし

壊れなくて済む

互いに引け目を感じながら

傷を舐め合い慰めながら

関係はずるずる続いていく

見て見ぬふりをして行けば

悲しまないで済む

眠れない夜は薬に頼り

その場しのぎの夢を見る

生暖かい有り得たかもしれない世界線の夢

幸せにはなれないかもしれない

が、少なくとも不幸せにはならない

微妙なバランスを保ちながら

生きていくのは難しいが

彼女はそれでも彼と生きていく道を選んだ

（いつ壊れるともしれない

おぼつかないよりどころを

糧にして生きていくのだ）

あの頃の幸せには二度と戻れないが

少なくともあの頃の不幸せさからは

時の流れに身を任せて行けば

次第に薄まっていく筈だ

有り得たかもしれない未来の事を思えば

ずきりと痛む胸を抑えて

彼女は生きていく為に夢を見る

まだまだ薬に頼らなければいけない

だが夢の中の彼女には不幸せさは

ミジンも感じられない

笑顔が溢れて力強く生きる彼女と

隣を歩く彼の表情は明るい

陽の光が歩く二人の

道を照らしだしている

夢の中の彼女には

不幸せさは似合わない

力強さが彼女の背中を前に押している

夢を見る事が今の彼女にとっては

何よりも重要な事なのだ

彼女の背中を押すものが

今宵も悪夢ではなくて

希望であってほしいと願うばかりだ