2023年9月の記事一覧
陽羽の夢見るコトモノは(10)
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(10)ごめんなさい「いおり、すきなことは、続けたほうがいいよ」
「陽羽、どうしたんですか」
「すき、な、ことは、つづけ、たほう、が――」
やがて陽羽は口をぱくぱくとさせて、そのまま黙ってしまった。
「エリーゼ、何があったんですか」
伊織の問いかけに、しかしエリーゼは答えない。遠藤さんが、温めたタオルで陽羽の頬を拭いてやると、「可哀想に」と言った。
「陽羽ちゃんは
My Mythology/Novels 2023.9 【神話創作文芸部ストーリア月報】
神話創作文芸部ストーリア月報です。
第4週は連載作品(前月16日〜今月15日までに投稿されたもの)を紹介します。
【今月の神話】笹塚心琴さん/陽羽の夢見るコトモノは(9)プロジェクト・パラケルスス
娘との再会を心から喜ぶ父母、一方で伊織の表情は複雑だ。残念ながら両親への不信感はますます募っていくこととなる。幼女の心臓部分に羽ペンを突き刺せという指令。パラケルススのプロジェクトの残滓に、そこまで
My Mythology/Essay & Column 2023.9【神話創作文芸部ストーリア月報】
神話創作文芸部ストーリア月報です。
第3週はエッセイ、コラムを紹介します。
【今月の神話】吉田翠さん/別方向へ向かった神話
神話創作文芸部ストーリアでは、時折「裏話会」などと称して神話についての意見交換が行われます。選ばれなかった神話、閉じなかった神話こそが民衆の中で広まって永らえた、という意見はまさに慧眼だと思います。識者に迫る勢いを見せる吉田翠さんのコラムです。
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【10月のお題企画
【掌編】分けあった季節
神話創作文芸部ストーリア/お題【収穫】(1000字以内)
豊穣とは、枯れ朽ちる手前のいっときの喜び。祝福された実りを手にする人々にとって、収穫とは、その喜びを分けあう、かけがえのない作業だ。
幼馴染のフレイは、あどけなさの残る頬に土ぼこりをつけながら、僕の家の果樹園の収穫を手伝ってくれている。
「見て、ディン。とても立派な葡萄」
フレイは笑顔で、僕にたわわな一房を見せてくれた。そのうちの一
My Mythology/Story & Poem 2023.9 【神話創作文芸部ストーリア月報】
神話創作文芸部ストーリア月報です。
第2週は読み切りの小説、詩作品を紹介します。
【今月の神話】汐田大輝さん/創世記異伝
抒情詩、叙事詩、ナンセンス詩、自由自在にして変幻自在の詩人、汐田大輝さんがストーリアに初参加してくださいました!
巨大化したわたしの独白、クセになるコミカルでシニカルな語り口、そして驚くべき発想の飛躍。創世を幾つもの切り口で楽しませてくれる詩は、憂いを帯びてこの宇宙に漂って
【掌編小説】宇迦さまのお米
米農家のヤスオさんは困っていた。
2023年の猛暑はお米にも厳しく、27度以上の高温が続くと出てしまう大量の白未熟米。
それがヤスオさんの田んぼにも出た。味にはそれほど問題がないものの、形や色のことでとんでもない安値になってしまうのだ。
「困ったな……なんとかならないだろうか」
ヤスオさんは地域の神社の赤い鳥居をくぐり、お稲荷さん、宇迦之御魂神に手を合わせた。
お稲荷さんは名前の通り、稲
〘お題de神話〙 穣かなる(ゆたかなる)
華麗に舞う姿に目が釘付けになる。
(……これは夢か……)
その時、心は決まった。
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「お前はいつも歌ったり踊ったり元気だな」
背後からの声に少女が振り返った。声の主が見知った仲の相手と認め、花よりも美しい顏がほころぶ。
「一緒に踊らない? 多聞」
「冗談はよせ。おれに舞踏など出来るわけなかろう」
多聞と呼ばれた大柄な少年が眉をしかめた。
「今のは大祭で披露する
『杖/The wand』 神話創作文芸部ストーリア9月のお題企画作品集
【今月の神話】9月は「杖/The wand」をテーマに作品を募集しました。
5名もの方々にご参加頂き、たいへん嬉しく感じております! 本企画が様々な世界の神話・個人の神話の扉を開き、また参加者同士の交流にお役立て頂けましたらまことに幸いです。
作品紹介の後には翌月のお題発表もありますので、最後までゆっくりとお楽しみください!
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悠凛さん/御魂の音──たまのね
この錫杖の音を聞いて心穏やかな