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檸檬読書日記 心情には短歌を、サンタには手紙を、クリスマスにはキャロルを。 12月18日-12月24日

12月18日(月)

布団から なかなか抜けぬ 洋服を なかなか脱げぬ 季節なりけり。



糸井重里『ふたつめのボールのようなことば。』を読み終わる。


ものごとには、終わりがある。
わかっている、知っている、それは常識だ。

(略)

いかに楽しいことがあっても、
ずっと、いつまでも続くことはない。

夢中で読んでいる大長編小説でも、
やがて終わってしまう。

(略)

知ってる、わかってる、常識だ、法則だ。
でも、どうしても、さみしいものだ。
知っているけれど、忘れていたままでいたい。

だから、終わりなんかないかのように、
ふるまい続ける人もいる、そっちのほうが多い。

でも、終わりがくると知っているのなら、
終わりがくることを認めたほうがよいのではないか。

(略)

終わりがないようにふるまうことが、
人びとをどれだけ苦しめていることだろうか。
終わりがあることは、ひとつの救いでもあるのだ。


『ボールのようなことば。』に引き続き、この「ふたつめ」も、とても良かった。
糸井重里さんの言葉は、苦味の中にも優しさがあって、苦味も結局は優しさという感じがする。
どの言葉も素敵で、深く、自分の中にある言葉に出来ないものが的確に文章となって表れている気がした。

ボールのようなことば。シリーズ、みっつめもあるらしいが、いつか手に入れたいなあ。




J・R・R・トールキン『ファザー・クリスマス サンタ・クロースからの手紙』を読む。絵本。

著者であるトールキンが、自分の子どもたちに向け、サンタからの手紙と題して24年に渡り書いたものを集めた本。

とても素敵な作品だった。
表紙の絵に一目惚れして買ったのだが、内容も中身も最高な絵本だった。
子どもたちへの愛情に溢れているのがとてもよく、楽しませようとしているのが端々に伺える。何よりもその時代の厳しさ(戦争)なども伺えるのも興味深くて、それでも励まし、手紙を読む時だけでも忘れ、光を灯そうとしているのが、とても心を揺さぶられた。

そしてこの本は、ただ絵や文字が書かれているだけでなく、実物の手紙も載っているのがまた良い。
書き手が3人いるのだが、それぞれに文字・書き方が違っていて、考えられているなあというのが垣間見れるのも、とても面白い。
絵も素敵で可愛くて、結構凝っているから、絵や実物の手紙を眺めるだけでも楽しめる。

文字だけでなく、登場人物、サンタは働き者、白クマや怠け者、エルフは真面目と、それぞれ個性があるのも魅力的。
1冊でたくさんの楽しみがある、クリスマスに最高の1冊。子どもにではなく、大人へのプレゼントにも良さそう。

そういえば、読み終わるまで気づかなかったけれど、著者が『ホビットの冒険』や『指輪物語』と同じ人だと知って驚いた。
でも確かに、手紙の中で語られた物語が、ホビットや指輪らしい。作品が好きな人には、もしかしたら刺さるかも。



もう直ぐクリスマスだから、クリスマスっぽいものを飾ってみる。影のサンタがなんともいい感じな気がする。




12月19日(火)

夢にみる 本屋が出来る 夢を見る 頭にあれど 夢見るばかり。



檸檬床屋さん開店で、祖父と父親のカット。
掃除洗濯、蜜柑収穫。
買い物、図書館、バタバタ。

行って知る。祖父がまた柿の木から落ちたらしい。
何度も駄目だと言っているし、何度も同じように落ちては骨折したり痛い目にあっているのに…。
人は生きたように死ぬというが、前はよく分からなかった。けれどなんか分かった気がする。



大量に採った蜜柑をどうしようか模索中。
去年は酸っぱかったから、全部絞ってジュースにしたけれど、この量ジュースは…。(それでも、半分以上置いてきたし、木にはまだ大量に付いていた)

でも今年は不思議と結構甘いから、このまま食べても良いかもしれない。
もしかしたら去年酸っぱかったのは、摂るのが早かったのかもなあ。確かに今年は遅くて、鳥がつついてから採ったもんなあ。鳥が食べるくらい甘いのだから、今度からはそれを目安にするのが良いのかもしれぬ。




12月20日(水)

引き続きバタバタ。
首が回らないというか、手が回らないというか、目が回らない…いや、目は回るのか、ワタワタ。

バタバタと すればするほど 本たちは 笑って手招き あぁ、無情なり。



楽しみにしていたことがなくなってしまった。
少し浮かれすぎていたのかもしれない。昔から、楽しみにしていることは大概潰れてしまう。
やはり地に足つけて、浮かれすぎないようにしなくてはなあ。一喜一憂するのもやめよう。平常心平常心。

でも、巡り巡ってもしかしたら良かったのかもしれない。きっとそう。世の中そういうものだよなあ。必要だから起きる。




12月21日(木)

クリスマス 間近に迫る クリスマス ソングやケーキや    他にはあらず。



毎年そうだけれど、12月は何かと忙しいなあ。やること盛りだくさんな上に、お金も次々吹っ飛んでいくよ、さようなら。



マック・バーネット 文/ジョン・クラッセン 絵『サンタさんはどうやってえんとつをおりるの?』を読む。絵本。

サンタさんはどうやって煙突を降りるとか、どうやって家の中に入って無事にプレゼントを届けるのか、そのどうやってを想像して描いたユーモア溢れる話。

子どもなら1度は考えるだろう疑問、どうやって煙突を通るのか。それは小さくなって?もしくは蛇口からニュルっと出てくるのかな?など、面白くもユーモアたっぷりに書かれていて、とても楽しい絵本だった。少しシュールで、クスリと笑える。

何よりも絵が素敵。味がある。少し明度が低めの、レトロ感ある色合いがポストカードのようで、とても良い。クリスマス前でも当日でも、読むのにおすすめな、プレゼントにも良さそうな1冊。




なるかわしんご『きみが うまれた ひ』を読む。これまた絵本。

消耗した心に沁みる、とても素敵な絵本だった。
きみ(子ども)が生まれてからの、ちょっとした出来ごとや感情を描いた、じんわりと愛情が染み込む話。

書かれていることは何気ないことなのだけれど、何気ないからこそ、じわじわと愛しさが広がって、心が温まるようだった。子どもがいない自分でもこんなにも泣きたくなるようなのだから、きっといる人には共感と思い出が湧き上がるのではないかなあと感じた。

子育ては、いい事ばかりではなく、大変なこともたくさんある。それも書かれていて、それでも

きみが いとおしい

沁みる。
この絵本は、書かれた背景もまた素敵なのだ。


この絵本は子どもが生まれるときに控え室で待っていた著者が、期待と不安の気持ちの中で綴った文章、成長の記憶や匂いが消えてしまわないようにそっと瓶にいれるような気持ちで書いた文章が元となっています。生まれた直後に子どもに聴覚障害があるとわかりました。「聴こえないのであれば、絵や文で伝えることができるのでは」と思い絵本にした1冊です。 この絵本がひとりひとりの心にそっと手を差し伸べることができれば、と願っています。


本当に素敵な、絵も可愛らしい絵本だった。





12月22日(金)

冷たさが しみはすれども 蝉はなし 今はと問へば 何きく芭蕉。



結局保険証廃止ですか。
上はどんだけ人を管理したいのだろう。いや、どちらかといえばお金かな。怖や怖や。ただ、そういう人達を選んでしまっているのが結局のところ1番怖い。なんて。



やってもやっても終わらぬ不思議よ。
やっと1つ終わったと思ったら2つ増えて、1つ終わったらまた2つ増えて、終わるどころか増え続けている気がする。まるでモグラ叩きでモグラを1匹叩いても、次々出てくるような。(どういうこと?)混乱。


突然「ビーフレッツってさ」と言われ、ハテナが飛びまわった。
ビー、フレッツ?なんだなんだ、と思って良く聞いたら、BE:FIRSTのことだった。笑う。

そういえば昔、「ファンタスティク・ビースト」のことを「ファンタスティックス・ビート」と言ってる人がいたなあ。フに小文字系は言いまつがいしやすいのだろうか。




12月23日(土)

雪降れば 白に染まるは 当たり前 そんなことなど 誰もが知ってる。

本当は

ことでしょう と続けたひが 短歌とは 五は二、七は三(み) 続けられぬが 決まり事なり。



最近、銀杏剥きにハマっている。銀杏ばかり剥いている。栗の次は銀杏。最早取り憑かれている。

凄い安く売ってるところがあって、1袋150gくらいはいって100円、素晴らしい。
でも銀杏剥きは結構大変。紙袋に入れてレンジで30秒チンを数回して、パンパン音がしたら上げて、硬い殻と薄皮を剥いていく。
何が大変って、熱いうちに剥かなくてはいけない、ということ。冷めると薄皮が剥きづらくなるから、慌てて専用器具で殻を割って、慌てて薄皮を剥いていく。
これがまた熱い熱い。大慌て作業だけど、ハマると結構楽しい。

出来たてに塩つけて食べるとこれまた美味。醍醐味ともいう。とはいえ、自分は凄い好きという訳ではないのだけれど、銀杏って結構癖になって食べてしまう不思議。
でも食べすぎは駄目なのだとか。1日8~10個が目安らしい。
余ったのは冷凍も出来るから、その都度使う分(おでん、汁物、中華丼等に)入れるのが便利。

それにしても、やることたくさんあるのに、何故かそういう時こそやってしまう不思議さよ。阿呆とも言う。
でも銀杏剥きは、寧ろ息抜きになるから良いのかな。(言い訳)

そういえば、銀杏は尿トラブルを抱えている人にもいいのだとか。ほう。



ディケンズ『クリスマス・キャロル』を読む。

去年のクリスマス前に買ってはいたが、去年は結局読めなかった。でも今年は読めて安堵。間に合った。

クリスマスにも他人との関わりにも興味がない、守銭奴な男・スクルージの前に、亡くなったはずの元相棒・マーリーが現れる。
そして「過去」「現在」「未来」の精霊幽霊に、スクルージが今まで行ってきた非道さと、それに伴う影響を見せていく。それらは全て、彼にとっては目を背けたいものばかりで。

まさに道徳的というか教訓的作品。
想像していたのとは違い、切なさが大半を占めるが、読んだ後は明るく、クリスマスを最大級に祝福したいような、それを周りと分かち合いたい気持ちになった。
そしてどんな人でも、最初から冷徹無慈悲な人はいないのだろうなと改めて思った。

話の中で興味深いなと思ったのは、未来の精霊が現れた時のスクルージの反応。


(略)得体の知れない恐怖に身がすくんだ。
(略)「これまでに会ったどの幽霊よりも、あなたは恐ろしい。(略)」


未来の精霊にだけ、スクルージは恐怖を感じた。でも確かに、過去・現在よりも、未来というものは恐ろしい。知らない、自分の範囲にないからこそ、怖い。
そして未来というものが、明るくはないと分かっているほど、その恐怖は増す。けれどスクルージは、目を背けることなく、受け止めようとする。やはり恐怖を打ち砕くのは、知って受け止めることなのだろうなと、感じた。

正直、思ったほどクリスマス感は薄かったが、この時期に読めて良かったなと思えた。





12月24日(日)

クリスマスイブ!



最近は 短歌まみれど 平凡で 上手くもあらず はよ終わらせよ。

先週読んだ『アボカドの種』に感化されて、何しても短歌になるし考えてしまう。
でも技巧も何か掛かったりもなくて、というか出来なくて、昔の人の凄さを実感している。仕掛けだらけの和歌を即興で作ってしまうんだもんなぁ。凄い。



嵐山光三郎『追悼の達人』を読む。
「北原白秋」編を読み終わる。

詩人であり歌人。読んだことはないが、女性にモテモテなイメージがあるな。 


白秋は、野人で激情化の反面、冷徹な利己主義者の一面があった。人情にもろく、大まかで、来る者をこばまず、包容力がある大器型の人物である。


うむ、想像に違わぬ。
追悼は、室生犀星の「白秋先生」という題の詩が個人的には好き。


あなたのまわりには、
あなたを奉った人ばかりだった。
あれはいけない、
あれはあなたを軽く見せる、
あなたは派手でおしゃれで
奉られることを露骨に好いていた。
平気で少々おかしいくらい、
まわりを畏ませるところにあなたはいた、
僕や萩原が遠くにいたのもそんなせいです。


最後の1文が特に良い「僕や萩原が遠くにいたのもそのせいです。」その少々間の空いた距離感が、なんとも納得出来て面白い。2人は彼に対して1歩引いたイメージだったから、まさにという感じがする。
詩も素晴らしく、良い人ではあるが…という北原白秋の人物像が、的確かつ簡潔に表されている気がする。


白秋は、他人への好き嫌いをはっきりとさせる性格であったため、同様に、他人からの好き嫌いをはっきりとされた。同類は同類に斬られる。


まさにそんな内容が並び、興味深いところもまだまだあったけれど、長くなるから割愛。



「年越しそば」ならぬ「年越し本」というものをやっている方がいた。そういうのって凄い素敵だよなあ。その上、セレクトされた本がどれもセンス良くて魅力的で、読みたいリストが増えてしまった。

といういことで(どういうことで?)自分もあやかってやってみることにした。
自分がセレクトしたのはこちら。↓


生憎、図書館も本屋も行けそうにないから、自分の本棚からセレクト。


(下から順に)
・中村一般『ゆうれい犬と街散歩』
漫画。幽霊なだけに、見た感じ季節は夏で季節感ゼロだけれど、今ある漫画の中で1番気になるから選んでみた。「ゆうれい犬」と「散歩」など、気になる要素しかない。
絵も緩くて目にも優しそう。

・江國香織『雪だるまの雪子ちゃん』
児童書。こちらは反対に、今の季節にピッタリだなと思って選択。
江國さんだからというより、絵を版画家の山本容子さんが担当していて、個人的に好きなので買ったもの。
けれどなかなか読めずに熟成させていたが、正に今が読み時だろうと思い立つ。

・岡根谷実里『世界の食卓から社会が見える』
社会史であり食文化史であり歴史。各国の食から、その国の歴史と背景を見ていくもの。
この本は、既に面白いことは知っている。何故なら、買う前に図書館で借りて少しだけ読んでいたから。最初の段階で面白いぞと直感し、買ったもの。
けれどこれまた放置熟成状態で、なかなか読めずにいた。だから、この機会に読んでみることに。

・谷川俊太郎『朝のかたち 谷川俊太郎詩集Ⅱ』
詩集。最近詩が自分の中できていて、詩は絶対入れたいなあと思った。その際、詩ならやはり谷川俊太郎ではないだろうかと思い選択。
そして、自分の詩の始まりは谷川俊太郎だったから、もう一度戻って、また谷川俊太郎から始めるのもいいかもしれないとも思ったのも1つ。
「朝のかたち」というのも、年越しに良さそうなタイトルではなかろうか。

・綾辻行人『十角館の殺人』
ミステリー。ミステリー界では有名どころ。
有名なので、ミステリー好きとしてはとりあえず読んでみようと思い、随分前に買ってはいたが、なかなか踏み出せずにいた。
なんといっても分厚い。だがだからこそ、丁度いいのかもしれないと思った。分厚さから、アーザル・ナフィーシー『テヘランでロリータを読む』と迷ったけれど、こちらはまず、本の中で取り扱われている『ロリータ』を読んで、準備してから読んだ方が面白さが増しそうだから、今回は十角を選択。

・アーサー・ビナード『日本語ぽこりぽこり』
エッセイ。これは単純、目が合ったから。エッセイも入れたいと思った際に、初めに目に付いたのがこの本だった。
アメリカ人の著者が、日本語を語るというもの。それだけでも面白そう。
それにタイトル「ぽこりぽこり」というのも、なんだかいい感じな気がする。気分的にピッタリなような。


とりあえず、こんな感じで選んでみた。一応、種類が被らないように満遍ない感じでセレクトしてみたが、そのせいかバラバラ感が凄い。
でも、これ読もう、あれも入れようと、考えながら選んでいくのは結構楽しかった。
だから自分もこれから「年越し本」習慣を取り入れていきたいなと思ったり。

読む本も決まったし、正月が楽しみになったなあ。




今週もなんだか慌ただしかったなあ。
そして気づく、次の投稿予定日月曜日が1月1日だから、この読書日記が今年最後だということに。驚き。
早いなあ。

来年は世の中色々ありそうで、大変な年になりそうだけれど、来年もとりあえず自分がやれることを頑張って、少しでも良い方向になるように出来るといいなあ。
そして、素敵な本をたくさん届けたい。目標。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
皆様が良い年を迎えられますよう、祈っております。
ではでは。

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