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#恋人
〔ショートショート〕 未来よりも明るい時間
アイマスクをして眠るキミを見るのが好きなんだ。キミの寝顔を見ながら、一緒に行った旅行先で見つけた振り子時計を思い出す。
その時計があったのは古い小さな旅館で、駐車場にボクらの車が入るとすぐに女将さんが迎えてくれた。隅々まで掃除が行き届いている庭と、木の葉を風が撫でる音が気持ちが良かったのを覚えている。
そして玄関を入ってすぐのところに、それはあった。「調整中」と書かれた札が貼ってある大きな
馬が走るには理由が必要。
悲しそうな男の顔を横目に、タバコに火をつける。
数日前に仕事を頼みに来た男は、「覚悟はできましたから」と言っていた。
その気持ちは分からなかったが、今日の気持ちは理解できる。
タバコを消してから、マスターに視線で帰りを伝えた。
席を立つ。
恋人が死んだのだ、そのくらいの顔をするかと背中越しに思った。
「頼まれた仕事は終わらせる」とだけ言って店の外に出ると、雨は上がっていた。澄んだ風が静かに、星