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「常に新しいことに挑戦し続けたい」フィリピン人英語講師の5年後の未来

「学生の頃、もっと勉強しておくべきだった」だと語るのは、現在22歳のフィリピン人英語講師。現在、フィリピン・セブ島の田舎で育ち、今は比較的大きな街に住み、働いている。彼の教え方は、とても丁寧でかつポイントを押さえているのでとてもわかりやすい。話していて、知識も深いので、学生の頃は優秀な生徒だったのかなと思ったのだけれど……?

「常に新しいことに挑戦し続けたい」英語講師の今

オンライン英会話の講師としてセブ島の語学学校で働く一人の若者。私は時々彼から英語のレッスンを受けている。私が受けているのはカランメソッドと呼ばれる、英会話のトレーニングの中でもスパルタと呼ばれるほどハードなコース。そんなレッスンでも、彼は終始笑顔で丁寧にリードしてくれる。彼のレッスンは、とても人気で、かつ子どもの生徒も多い。優しくてコミュニケーション上手な彼の人柄に惹かれて受講する生徒も多いのだと思う。そんな彼に、彼自身のことについて聞いてみた。

子ども時代、思い出すのは楽しかったことばかり

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子ども時代、彼はどんなふうに過ごしていたのだろう。

「フィリピンの文化は、他の国の子どもたちと大きく違うと思うよ。ほかの国の子どもたちはオンラインゲームなどで遊ぶと思うけど、僕が子どもの頃は近所の友達と毎日外でくたくたになるまで遊んでたよ。ジャンプしたり、輪を使った遊びをした。子どもの頃は傷跡が絶えなくて、どこからか落ちて頭を縫ったこともあるよ。大量の血が出て大変だった。親指の長さくらい切ったんじゃないかな」

大人になってから知ったけど、このシンプルな遊びは子どもの創造性をとても豊かにする。またかくれんぼは、見えないものを予測する力、鬼ごっこは運動能力と反射神経を鍛えるなど、教育的な観点から見て非常にいい効果が期待できる。そう考えると、彼の賢さというのは、子ども時代の遊びを通して育まれたものかもしれない。


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フィリピンでは、小学校を卒業すると中学と高校が一緒になった学校に4年間通うことになる。とても優秀な彼のことだから、学生時代もまじめに授業に出ていたのかと思いきや……。

「学校には行ったんだけど、授業は時々欠席した。近くの川で友達と泳いで遊んでたよ。セブ島というと海が近いというイメージかもしれないけど、僕が住んでいたのは山のふもとなんだ。だから海はなくて、そのかわり川があった。とても水が冷たくて、暑い日には気持ちがいいんだよ。友達と遊ぶ時間はとても楽しかった。将来の夢について語ったり、今やりたいことを話したり。最高の時間だった

「息子さんが授業に出席していません」学校から届いた一通の手紙

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学生時代、遊びに夢中になって、つい授業をさぼることはよくある。私自身も学生の頃、友達とドライブに行った。ただ、それは授業が休講になったときの話。彼は高校生だったこともあり、学校の教師は彼の両親に手紙を送った。

「あるとき学校の先生がママに手紙を送ったんだ。それで僕が時々、授業に出席してないことがバレたんだよ。両親はがっかりしたと思う。両親は、将来は僕に弁護士になってほしいと期待していたから。ママにはいろいろいわれたけど、それだけ。両親は僕のことをぶったりしなかった。

両親は、僕のいうことは何でも聞いてくれた。ほしいものがあればなんでも与えてくれた。母親は56歳で、父親は58歳。フィリピンでいえば、初老の部類に入るかな。僕は両親のことをとても愛しているし、尊敬している」

彼の両親は、彼が末っ子だったことから彼のことをより一層かわいがったのかもしれない。長男長女は常に厳しく育てられて大変だけど、末っ子は両親からも祖父母からもかわいがられる確率が非常に高い。彼の愛嬌の良さは、彼が末っ子だからかもしれない。

本当のところ、両親は自分のことをどう思っているのだろう?

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彼の両親は、今の彼についてどう思っているのだろうか。

「僕は、これまで一度も両親にその質問をしたことがないからわからないけど……たぶん両親は、僕のことを誇りに思ってくれているんじゃないかな? 反面、ちょっとがっかりしているところもあると思う。なぜなら両親は僕に弁護士になってほしいと思ってたんだ。でも、弁護になるための資格習得試験はとても大変だし、なによりも弁護士になったら身の危険を感じる。だから、僕は英語の先生になったんだよ」

フィリピンでは、弁護士は裁判で負けた相手から逆恨みされて、狙撃されることが少なくない。そのため給料がいい弁護士よりも、安心して暮らせる先生を選んだのだという。「もう1つ、弁護士資格習得の勉強は本当に大変だから」と、彼は笑いながら教えてくれた。

自然豊かな田舎の暮らしは僕の誇り

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これまでの彼の人生、とても順調に来ているように見えるけど、ターニングポイントはあったのだろうか?

「ターニングポイントは大学2年から3年の時。アルバイトで英語講師の仕事を始めたんだ。今までは両親からお小遣いをもらっていたけど、自分でお金を稼げるから必要ない。親からの自立の時だったんだ。初めて働いたお金を手にしたとき、自分自身を誇りに思ったよ。

実家のあった田舎から引っ越し、一人新しい生活をするとき、とてもナーバスになった。僕はジプニーの乗り方も知らなかったし、周囲の雰囲気は田舎とは全く異なる。高いビルが立ち並び、見知らぬ土地に僕一人。それでも、僕は一人で引っ越しに関するすべての手続きを完了させた。

それまで住んでいた田舎は、本当に大好きだった。空気もきれいで、まわりの人もみんな仲良し。緑豊かな自然に囲まれ、食事もおいしい。僕にとって、故郷というのは本当に大切な場所だった。

コロナ禍での、大好きな祖母とのお別れ

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「田舎の生活のなかでも記憶に残っているのは、祖母のこと。祖母はとてもやさしくて、いろんなことを教えてくれた。ココナッツの木からほうきを作る方法、バーベキューの仕方。近所の人も集めて、みんなでバーベキューを楽しんだよ。残念なことに、祖母は昨年11月に亡くなったんだ。その時、セブの街ではコロナがまだ収まってなかったから、僕は祖母の元にかけつけられなかった。祖母に、最期のお別れが出来なかったんだ。これまでたくさんのことを教えてくれてありがとう。本当に大好きだった。祖母にそう伝えたかったのに、直接会って言えなかった……。でも、祖母はずっと僕の心の中にいる。祖母とのことは、永遠に大切にしたい思い出だよ。

昨年から今年にかけて、コロナでたくさんの人が亡くなった。中には家族や友人を失った人もいる。いろんな人の死を間近で感じて、改めて家族と過ごす時間の大切さを感じたよ。両親とは、約2年会ってない。電話やチャットはするけど、やっぱり直接会って話したい。働きだしてからは忙しくてなかなか実家に帰れなかったし、今年はコロナがあって実家に帰るのをやめた。いつでも会えるかもしれないと思っていたけど、それが難しいこともある。だからこそ、家族との時間を大切にしたいんだ

「いつでもできる」そう思っていると、いつまでたってもできない。できないまま年を取って、時間があっても動く気力がなくなってしまう。そうならないためにも、やりたいことは今すぐやるべきだと、私はいつも思う。

学生のうちにもっと真剣に学んでおけばよかった

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「学生時代のことをいえば、僕はもっと真摯に勉強すべきだった。僕は時々仕事で疲れてしまい、学校を休んだ。それに芸術やダンスの分野を専攻していたにも関わらず、ピアノもギターも弾けない。唯一弾ける楽器はウクレレだけ。歌も苦手だよ。僕が歌を歌ったら、窓ガラスが割れて、壁にひびが入り、地震がきて建物が倒壊するかも(笑)

もし、本当にしっかり学んでいたら、僕はもっとたくさんの知識をつけて、自分の世界を広げられたと思う。学ぶことは本当に楽しいし、知らないことを知ることはワクワクする。できたら、今後数年のうちに大学に戻り、2年間の教育課程を受けなおしたいと思っている。そして、博士課程を修了したいんだ」

彼は、学ぶ楽しさを知っている。そして、彼の生徒が英語を学び、習得していく過程をすごくワクワクした気持ちで見ているんだと思う。彼の多くの生徒が子どもで、彼は子どもに教えるのが大好きだという。子どもは何かを学んだ時、突然目をキラキラと輝かせて、顔つきが変わる。そして習得した知識をもとに、一気に学び始める。きっと彼はそんな瞬間を何度も見たのだと思う。だからこそ、教えるのが楽しいのかもしれない。

今から5年後、どんな自分になっていたい?

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彼に「5年後、あなたはどこで何をしていると思う?」と聞いてみた。

「今はわからないけど、いろんなことに挑戦したい。たとえば、ビジネスマンになっているのもいいと思う。様々な仕事をして、たくさん給料を得て、そのお金で車を買い、家を建て、世界中を旅したい。日本、アイスランド、アメリカ、カナダ、行ってみたい国はたくさんある。常に新しいことに挑戦し続けたい

彼の話を聞いていると、仕事を通していろんな経験を積み、そこから得られる知識をもとに自分の世界を広げていきたいんだろうなと感じる。

今回のインタビューでは、彼のことだけを書いたけれど、彼はいつも私にもいろんな質問をしてくれる。そういったところからも、彼は自分の話をするだけではなく、相手の話も聞こうとしているということがわかる。生徒に対して意識を向けている先生じゃないと、自分だけ話して終わり、となってしまう。また、人は自分の話を聞いてくれる人に対して、より親近感を持つ。彼のレッスンが人気なのは、英語のスキルだけではなく、そういった彼のコミュニケーション能力の高さかもしれない。機会があったら、また別の質問をしてみたい。



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