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「合理主義」の神話

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科学は合理的に進歩した、合理的に考えれば間違うことは無い、などの「合理主義」の神話をまとめています。
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記事一覧

【ルポ】画像生成AIの不都合な真実 ~私はXで何を見たか ~

【ルポ】画像生成AIの不都合な真実 ~私はXで何を見たか ~

これから私が話す事は一切脚色の無い真実である。だがそれをそのまま書くとあまりにも現実から遊離したフィクションのように見えるため、あえてフィクションの形式で書くことにした。その方がかえって頭に入りやすくなると思ったからである。

だが繰り返すがこれは私が目撃した真実である。フィクションではない。

事の発端は一年前、邪知暴虐なるElon MuskがTwitter APIを有料化し、私のトレンド解析b

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【ロジハラ】相手が反論できないからってあなたの主張が正しい訳ではない【レスバ】

ロジハラというのは変な言葉だと思ってました。「ロジック(論理)がおかしいのを指摘する」のは「ハラスメント(嫌がらせ)」では無いだろう、と。
でも考えてみるとロジックで嫌がらせは確かにできるんです。いきなり話が飛びますがヘンペルのカラスという「パラドックス」があります。

「(ほぼ)すべてのカラスは黒い」と主張したい時、普通なら「このカラスは黒い、あのカラスも黒い、見かけるカラスはどれも黒いものばか

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「量子力学が自由意志をラプラスの魔から救い出した」訳では無い

「量子力学が自由意志をラプラスの魔から救い出した」訳では無い

「魂」が存在しないことの論証「幽霊なんて非科学的だ」「いや『存在するかわからない』という態度こそ科学的だ」という話がありますが、実際には「一般的にイメージされるような」魂が存在しないことは証明できます。
多くの人が無意識に持っているイメージは心身二元論、つまり「精神(魂)」と「身体」が別々に存在するというものです。しかし、第一次世界大戦で多くの負傷者が出た時、「脳のどの部位を損傷したか」によりどの

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なぜ議論は混乱するのか それは二つのものが同じか違うかの判断が難しいから

有名なアネクドートに次のようなものがあります。

ソ連は言論の自由をまったく理解してねぇなハッハッハというジョークですが、ちょっと考えてください。なぜこれが「ジョーク」になるんでしょう。上記のセリフで「アメリカ大統領を批判」という行為はまったく同じです。アメリカでもソ連でもアメリカ大統領を批判することはできる。なのになぜ前者は言論の自由がある証拠になり後者はならないんですか? おかしくないですか?

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こうして自由主義世界は終わる? 「経済的自由」が専制と化す時

いかにもセンセーショナルなタイトルが付けられているが、本書の中のシミュレーションでは人類が滅亡することも文明が崩壊することも無い。内容は、原題と同じく西洋文明──というより西洋の自由主義思想が壊滅するという話だ、地球温暖化を放置した場合。

「生成AI」とはまったく関係ない、ハズなのだが、同じくまったく関係ないハズの煙草業界が起こしたことと共通した問題が描かれている。すなわち、「顧客が求めているか

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「お気持ち」は軽視してもいいのか? ~法的な保護・経済的根拠・合理性の源泉~

「お気持ち」は軽視してもいいのか? ~法的な保護・経済的根拠・合理性の源泉~

フォロワー数万以上のイラストレーターの本垢からのいいね(RTではなく)も一部あるので多分本物だと思いますが、「生成AI」についてツイートすると「生成AIに悩まされている絵描きのサブ垢」からいいね/RTされることがよくあります。つまり「生成AI」に対して不満を言う、いわゆる「お気持ち表明」すると「AI絵師」から総攻撃を受けるからサブ垢を作り関連ツイートをいいね/RTせざるを得ない、と。

上記記事等

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俗情と結託した偽史 魚豊『チ。』 宗教的情熱で「真理」に至った科学者達

アニメ化が決定し第26回手塚治虫文化賞大賞なども受賞している『チ。-地球の運動について』は既に超長文の批判記事がある。

参考文献に明示されてない本も交えて要約&補足すると、
・ プトレマイオスが大成した天動説は当時の最高の観測結果に基づいたものであり、地動説はそれに対して「惑星の逆行を自然に説明できる」ことしか勝っている点が無かったから否定されたに過ぎない

・コペルニクスが地動説を唱えた時点で

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【ネタバレ】ななせ悠『続く道 花の跡』は「名も無き人々に紡がれた歴史」ではなく「歴史を紡ぎながら忘却された人々」を描いた作品である

【ネタバレ】ななせ悠『続く道 花の跡』は「名も無き人々に紡がれた歴史」ではなく「歴史を紡ぎながら忘却された人々」を描いた作品である

既にITmedia NEWSなどでも解説されているように、これは日本初のコンピュータ「FUJIC」の史実に基づいた作品である。
ラスト2ページはこのように締めくくられる。

「新しい技術によって無くなった職業(計算手)はもう誰も知らない」と語られる。

そして「そこにいた誰かのこと」も忘れられると語られるが、ここには論理的飛躍がある。何故なら新技術によって職業が無くなることとそれに携わってた人が忘

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