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詩集

54
心のまゝに紡いだ言葉の断片 言の葉を磨き上げ羅列をして並べています。 詩のようなものをまとめています。
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記事一覧

青ブラ文学部 詩 「帰りたい場所」

青ブラ文学部 詩 「帰りたい場所」

〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜

傘も差さずに
冷たい通り雨にそぼ濡れて
飛沫くアスファルトの上で
立ち尽くしている君を見た

僕らの生きている時代は
夢を灯しても
暗く黒い風にかき消され
時に踏み付けられる

帰りたい場所は何処にある__

生きていくことに
心は迷いながら揺れている

"優しさ"を目にすることは
出来ないけれど
温かさを感じられるなら

こゝろの奥深くにしまった

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青ブラ文学部 詩「君に届かない」

青ブラ文学部 詩「君に届かない」

〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜

記憶の海の底深く
過去から来た波が静かに寄せて
無数の砂の粒が時間を刻んでいる

遠くに帆を張る船を
夜空に燦ざめく星々が導き
光の航路を描いている

人は皆__
愛と喜び 悲しみと別れを繰り返し
潮騒のように心に打ち寄せて
すべては交差していく

ずっと思い出せないでいた
記憶の海の奥底深くへと
この手を伸ばしても
未だに君に届かないでいる

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青ブラ文学部 #セピア色の桜

青ブラ文学部 #セピア色の桜

〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜

いろはうた 四十七文字

胡蝶戯れ 夢酔えど
其方を得ぬ夜に 想いけり
遍し薫る 花見月
セピア色の薄桜






"いろはうた"とは?

〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜
山根あきら様
お題提供ありがとうございます。

詩「monochrome」

詩「monochrome」

〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜

一風変わり者の少年が居た

世俗から四方八方を
少なくとも十里ほど離れて孤立していた

この現実の
夥しい絶望が渦巻いた世界を眺めるたび
心を失ってしまうのだと云ふ

ゆえに少年は
上瞼と涙袋を頑なに縫い合わせている

その胸に秘めた純真な色彩を護るため
心の周囲に城砦を築き鉄条網を張り巡らせて
この世の魑魅魍魎から遮断している

ある朝__
少年

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詩「Teenage in blue」

詩「Teenage in blue」

〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜

あの時__
俺が必要としていたのは
彼女よりも自分自身だった

理由なんてない
俺は彼女と一緒にいたいだけだった

多分__
彼女は気付いていたんだろうか?
俺自身の自制心のなさに嫌気が差す

彼女はいつだって
優しく振る舞っているように見えた
実際に彼女はいつも
そうしていたのを思い出す

彼女に胸の内を
見透かされるところまで
俺は来てしまって

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詩「風花雪月」

詩「風花雪月」

〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜

ほんの少し唇を噛んで

細い指先で洗い髪を梳かす

ほんのりと石鹸の匂いが香り立つ

凛とした仕草の君

曇りガラスの窓の外は冬化粧

幾重もの美しい結晶たちが燦ざめく

触れてはならぬ恋に堕ちて

淡い夢のつづきを確かめたくて

「今度はいつ会えるの?」

と、呟く君の横顔が

ふと垣間見せる寂しさに翳る

一緒に居ると何かが変わる

そぞろに想

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詩「きみと珈琲」

詩「きみと珈琲」

〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜

きみとふたりで珈琲を__

洒落た小物を窓に飾り
ドライフラワーに彩られた店内に
焙煎の香りが華やぐ
小さなカフェテラスに立ち寄る

淹れたての珈琲を口に含むと
鼻腔を駈けぬける
胸をすくような珈琲の香り

微かに果実のような甘みが解け
きりりと立つ"ほろ苦さが好き"
ときみは呟いた

カフェテラスに映った
暮れゆく空のグラデーション
静かに流れる

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詩「静かなる秋の詩」

詩「静かなる秋の詩」

〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜

秋の訪れに
輝き続けた夏の日は過ぎて
時の流れがほんの少しだけ
急いて流れているような気がした

生きゆく人々の出逢いと別れ
秋が深まるにつれ
斜に射す寂光が
殊更に孤独の影を伸ばす

哀しみが想い出に変わるまでに
枯葉はただ静かに寄り添うように
さよならの色を染めている

"時は巻き戻せない"
枯葉は諭すように
風と共に想い出を連れ去ってゆく

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詩 「真夏の逃げ水」

詩 「真夏の逃げ水」

〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜

久しぶりに海の青さがみたくて
衝動的に海に出掛けた或る夏の日のこと

炎天下の路上__
アスファルトにきらめく逃げ水に
水を求めて
砂漠を彷徨う旅人の見る幻に
ふと思いを馳せる

逃げ水に誘われて
気が付けば
いつの間にか峠の脇道に逸れ
山間の峠道に迷い込んでいた

長く曲がりくねった道をゆくと
原風景の中に生活を溶け込ませたような
閑静な人里にた

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詩「きみの居ない部屋」

詩「きみの居ない部屋」

〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜

深夜に目覚める
冷蔵庫の明かりが漏れている
喉の渇きを潤そうと開けてみる

そこに置かれていたのは
きみと過ごした沢山の
想い出たちの走馬灯

ふとした瞬間
我に返って空っぽの冷蔵庫に気付くそんなうたた寝の幻をみたんだ

きみが居なくなって
目にするもの何もかも
色褪せていくだけの日々

その優しさを懐かしむ
もう姿をみることはなく
もう手にも触れ

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詩「暗くなる前に」

詩「暗くなる前に」

〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜

暗くなる前に__
ふいに明かりが灯りはじめる
天空にはあまねく陽光が
まだ満たされているというのに

750ルクスの感覚は
ボクはわからないけれど
まだまだ明るい最中で
キミだけが気付いていたんだ

生きている世界の
エントロピーが増大するが故の
不条理に飲み込まれてしまわないように

「真実を見失わないで」と
キミが愛を灯していることに
気付かな

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詩「春待ち人」

詩「春待ち人」

〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜

それは突然だった__
冷たい春の嵐が
刹那に駈け抜けていった

幾重もの淡い花びらたちが
ぼくの見つめる先に在る
きみの姿を見失わせる

恋は盲目のまゝ
桜迷路をさまよっては
きみの影を探していた

その姿が見えなくても
そのささやきを感じ
その温もりが伝わるなら
それだけでよかった

だけど
きみは風のように過ぎ去って
ぼくはひとり
桜はやがて散

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詩「ときくすりのソネット」

詩「ときくすりのソネット」

〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜

アイラモルトを口に含む__
強いピート香は荒々しく
ハイランドの身を刺すような潮風が
体内を駈け抜けていった

心が流れ着いた先には
およそ晴やかとは云い難い曇天が広がる
私の目の前には起伏に飛んだ草原と
荒涼とした海が飛沫を上げ打ちつけている

どこかしらこの光景は郷愁に似ている
やがて深い酩酊の中で魂は解き放たれる
孤独を愛しつゝ自分自身を省み

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詩 「さよならの哲学」

詩 「さよならの哲学」

〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜

あの日__
電話の向こう側で
"わたしはだいじょうぶだから"
と君のか細い声が震えていた

さよならを言えないまゝ
もう三年が経つ

秋の風が吹く頃
かつて君と歩いた
哲学の道に
ひとり訪れてみる






俺のポケットに
君は手のひらを入れてくるのが
好きだった

そっと重ね合わせた
手のひらの温もり

ふたりのこゝろは
もみじの葉脈

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