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詩 「真夏の逃げ水」

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久しぶりに海の青さがみたくて
衝動的に海に出掛けた或る夏の日のこと

炎天下の路上__
アスファルトにきらめく逃げ水に
水を求めて
砂漠を彷徨う旅人の見る幻に
ふと思いを馳せる

逃げ水に誘われて
気が付けば
いつの間にか峠の脇道に逸れ
山間の峠道に迷い込んでいた

長く曲がりくねった道をゆくと
原風景の中に生活を溶け込ませたような
閑静な人里にたどり着く

都会の喧騒を離れ人知れず佇んでいる
深き森に鎮座した古き歌人の墓に出会った

"ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 
からくれないに 水くくるとは"
 
     在原業平ありはらのなりひら(825〜880)


素敵な偶然に巡り合った瞬間

若かりし頃
真夏の季節に胸を焦がした時を想いだす
蝉の鳴き声が空高く透き通っていく

夏の終わりに見た逃げ水
幸せとは__
届きそうにも儚くて
いつも一歩手前
その煌めきを追いかけている

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