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消雲堂綺談

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私は怪談奇談が好きで、身近な怪異を稚拙な文章にまとめております。
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#邪馬台国

「妄想邪馬台国」13

「妄想邪馬台国」13

「少し、日本列島の成り立ちについて見てみようか?」
「その方が邪馬台国について理解が深まるかもしれないわね」
「おい、おい、まだ話が長くなるのかよ、出雲説はどうなったんだ?」
「出雲説については結果が出ているじゃないか。半島から渡ってきた弥生人が、日本先住民である縄文人の領土を奪った。そのひとつの出雲の国…かなり規模の大きなものだったと言われているんだけどね、それが出雲の国譲りとして描かれていると

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「妄想邪馬台国」12

「妄想邪馬台国」12

「ほら、異能くん、邪馬台国から離れちゃったじゃない」治子がため息をついた。
「自分だってあんだけノって話していたじゃないか?」異能がふくれっ面をすると、治子が舌を出して笑った。
「コノハナサクヤヒメとイワナガヒメの例は、天武天皇の奥さんとなる鸕野皇女(うののひめみこ)は、と太田皇女(おおたのひめみこ)だと思うんだ。ウノノヒメミコは、のちの持統天皇だ」
「このふたりは天智天皇の娘なのよ」
「へえ。兄

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「妄想邪馬台国」11

「妄想邪馬台国」11

「創作だとしても、その話の元が何なのかっていうのはわかるよね。それを考えるだけでも、推理小説みたいで面白い」
「ははは、そうだよね。歴史パズル…パーツはたくさんあるけれど、それをはめ込んでいく作業は、まったく推理小説的だよね。じゃあ、話を続けようよ。どこまでいったっけ?」
「コノハナサクヤヒメだよ」
「コノハナサクヤヒメは、大きな産屋を作って中に入って火をつけて炎の中で子どもを産んだ。それが火照命

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「妄想邪馬台国」10

「妄想邪馬台国」10

「ホツマツタエが本当の記録だとしたら、先住民の蝦夷が邪馬台国を形成していたけれど、それが大陸から渡ってきた天皇の先祖たちに侵略駆逐されて、ホツマツタエの歴史まで奪われてしまったというイメージだな」
「本当の話ならばね」
「で、邪馬台国出雲説ってのは?」
「ったく、異能くんが話を脱線させるからよ」治子は異能を睨んだ。異能は頭を掻きながら「ごめん」と言って舌を出したが、開き直るように僕を見て「脱線させ

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「妄想邪馬台国」9

「妄想邪馬台国」9

「ホツマツタエ?」
「ええ、それはダメだよ。話がかえってややこしくなるじゃん」
「稗田くんの知識を増やしたいのさ」
「異能くんの自己満足じゃん。私が邪馬台国だと主張しているのは出雲なんだからね」治子がまたふくれた。
「一応知っておいてもらおうよ。ホツマツタエとは真実を伝えるという意味さ。これは縄文時代に作られたヲシテという神代文字で書かれているんだ」
「ふーん」
「これによるとね、高天原は東北にあ

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「妄想邪馬台国」8

「妄想邪馬台国」8

「話が複雑になってきたから一度整理してみようね」治子は自分のノートを取り出してさっきまでの話をまとめだした。
「ええっと、テキトーに書きだしてみるね」
「うん」
「あとで時系列に並べりゃいいからね」異能が頷いた。
「うん」治子がボールペンで書き出した。

①高天原=朝鮮の伽耶、百済
②葦原の国=日本=出雲=邪馬台国
②アマテラス=卑弥呼=神功皇后=皇極天皇=持統天皇
③スサノオ=卑弥呼の弟?もしく

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「妄想邪馬台国」6

「妄想邪馬台国」6

異能は「高天原は朝鮮半島に決まっているよ」自信たっぷりに言い切った。

「私もそう思うわ。古事記は神話って言うけれど、ある程度は事実をもとに書かれているはずだもん。高天原と地上を何度も往復してるってことは近くってことだからね。だから半島が高天原って説には大賛成」
「九州ってのは?」
「九州は邪馬台国だから違うよ」
「邪馬台国は出雲だってば…」
「ふふふ、あくまでも候補ということだよ」
「ふん、じゃ

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「妄想邪馬台国」3

「妄想邪馬台国」3

「多分、もう少しで終わるから我慢しなよ」治子が笑った。
「稗田は短気なんだよ」異能が僕の肩を叩きながら治子を見て笑った。
「じゃあ、もう少し我慢するから話を続けてよ」僕はふてくされてコタツの上に頬杖を突いた。
「どこまでいったっけ?」
「天岩戸よ。タヂカラオがアマテラスを引っ張り出すところ」
「そうだった」

岩屋の外の騒ぎが気になったアマテラスは天岩戸を開けて身を乗り出した。それを見て、タヂカラ

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「妄想邪馬台国」5

「妄想邪馬台国」5

異能は本棚から落ちてきた分厚い本が頭にぶつかって倒れた。
「だ、だいじょうぶ?」治子が異能のそばに駆け寄った。すると治子のミニスカートがまくれ上がってピンク色のパンティが丸見えになった。治子はそのことに気づかない。
異能は、それを見て、気絶したふりをしながら薄目を開けて治子のパンティを凝視した。

「大丈夫なの? ねぇ、異能くん、ねぇ…。ねぇ稗田くん、救急車呼ぼうか?」治子が本気で心配している。

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「妄想邪馬台国」4

「妄想邪馬台国」4

豊葦原では大きな争乱があった。

アマテラスが高天原の天の浮橋から地上を見ると、騒がしいので、八百万の神々を集めて「地上は争いが絶えぬようだから、これを治めるにはどの神を地上に降ろせばいいのか?」と神々と相談した。

結局、天菩比神(あめのほひのかみ)を地上に降ろすと、アメノホヒはオオクニヌシに媚びるばかりで、彼からは三年も音沙汰がなかった。

天若日子(あめのわかひこ)を地上に降ろしたが、彼はオ

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「妄想邪馬台国」2

「妄想邪馬台国」2

「出雲国譲りって知らないの?」
「うん」
「古事記を読んだことはあるでしょ?」
「ごめん、ないんだ」
治子が呆れている。
「出雲国譲りとは天津神(天照大神)が国津神(大国主命)から葦原中国(出雲)を譲り受ける神話のことよ」
「へぇ」
「天津神は高天原にいるでしょ? 国津神は日本にいる。私が思うに高天原とは朝鮮半島のことで、半島から渡ってきた人びとによって、出雲を治めていた先住民族が駆逐されてしまっ

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「妄想邪馬台国」1

「妄想邪馬台国」1

1978年の初冬。赤城おろしが吹く季節になった。

群馬県伊勢崎市連取本町の平和荘。地元の国立大学に通う異能清春の部屋だ。異能の部屋の北側には歴史書、法律書や犯罪心理学書、それにどこから持ってきたものか気味の悪い死体検案書や犯罪者の陳述書のコピーなどが積まれ、西側には探偵小説や怪奇小説が同じように積まれている。いずれもカビ臭く湿気を伴っていることから相当に古いものだ。本以外は布団がかかったコタツし

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