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「妄想邪馬台国」6

異能は「高天原は朝鮮半島に決まっているよ」自信たっぷりに言い切った。

「私もそう思うわ。古事記は神話って言うけれど、ある程度は事実をもとに書かれているはずだもん。高天原と地上を何度も往復してるってことは近くってことだからね。だから半島が高天原って説には大賛成」
「九州ってのは?」
「九州は邪馬台国だから違うよ」
「邪馬台国は出雲だってば…」
「ふふふ、あくまでも候補ということだよ」
「ふん、じゃあ、あたしが邪馬台国イコール出雲説ってのを解説するわよ」と言うと、治子は、こたつから出て、部屋の隅に置いていた自分のカバンのところまで歩いて1冊のノートを取り出した。しかし、コタツから立ち上がる際にミニスカートがまくれて再びピンクのパンティと筋肉質の美脚が露わになった。治子はそれに気づいていない。カバンからノートを取り出す際には立派なお尻が丸見えになった。それを、間近で見ていた異能は、しばらく治子のソレから目が離せなくなってしまった。その異能の視線で、自分のおかれた状況に気づいた治子は慌ててスカートを素早く修正すると、持っていたノートで異能の顔を思い切りひっぱたいた。

「この、変態野郎っ!」バンと大きな音がして、異能はそのままコタツに脚を入れたまま倒れた。

「バカはほっといて出雲のことを話すわ」
「そのノートは?」
「ああ、小学生の頃から古代史について書き続けてるのよ」
「小学生の頃から?」
「うん、ええっと…朝鮮半島が高天原だってとこだったよね。異能くんの話は…っと…ああ」

今度は治子が長い話を始めるのだった。

663年に朝鮮半島の白村江で百済・倭国(日本)連合と新羅・唐(今の中国)連合が戦うと、百済・倭国連合軍は敗退しちゃう。すると当時の天皇の天智は、新羅・唐連合が倭国まで進駐してくると恐怖して、九州や四国に水城を作って、自分は大和(奈良)を放り出して、琵琶湖畔の大津(滋賀県)に遷都するんだけど…」
「アレって、情けないよね。いくら怖いからって大津まで引っ越しちゃうなんてさ」いつの間にか異能が復活している。
「そうそう、不思議だよね。それほどに白村江の戦いが恐ろしかったってことだけどね。まぁ戦争はおっかないけどね」治子も話に乗っているから異能の復活を素直に受け入れてしまう。
「んで、その後、天智天皇は死に、あとを継いだ大津皇子も壬申の乱で天武天皇にやられちゃって、天武天皇の治世になる。天武が古事記を作る…」
「でさ、朝鮮半島が高天原だってのは?」なかなか高天原や邪馬台国に話が進まないから僕はイライラしていた。
「稗田くんは気が短いのね。意外だわ。うん、今、説明するわよ。ところで稗田くんは家系図ってある?」
「え、何だよ、藪から棒に…ええっと、ないと思うよ」
「祖先は誰で何者だったのかはわかる?」
「何者?」
「武士とか農業だったとかってことよ」
「え、知らないよ」
「だよね、じゃあ日本人が文字を使い始めた時代はわかる?」
「まさに天武天皇の時代なのさ」異能が口を挟んだ。
「それがどうかしたのかい?」
「普通の人ならば祖先が何者なのかなんて知らないのよ。しかも文字がなかったらどうやって記録するの?だからね、いくら天皇だからって自分たちの祖先の事なんかわからないのよ。それを…あ」
「稗田くんは稗田阿礼(ひえだのあれ)の子孫だっけ?」
「名字が同じだからと言って親戚に結びつけるのはどうかな?」また異能が口を挟んだ。
「稗田氏というのは、そう、たくさんはいないよ。稗田くんが知らないだけで、実は先祖は稗田阿礼だったかもしれないよ」異能が笑った。
「古事記を編纂したのは稗田阿礼だと言われているのよ」

つづく



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