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「妄想邪馬台国」12

「ほら、異能くん、邪馬台国から離れちゃったじゃない」治子がため息をついた。
「自分だってあんだけノって話していたじゃないか?」異能がふくれっ面をすると、治子が舌を出して笑った。
「コノハナサクヤヒメとイワナガヒメの例は、天武天皇の奥さんとなる鸕野皇女(うののひめみこ)は、と太田皇女(おおたのひめみこ)だと思うんだ。ウノノヒメミコは、のちの持統天皇だ」
「このふたりは天智天皇の娘なのよ」
「へえ。兄弟…といっても養子ってことだけどね」

「ウノノヒメミコは、斉明天皇三年(657)、13歳の時に姉のオオタノヒメミコと一緒に大海人皇子(天武天皇)に嫁いだ。当時は血を絶やすことがないように姉妹で嫁ぐのは珍しくなかった。オオタノヒメミコは大津皇子(オオツノミコ)を産み、ウノノヒメミコは草壁皇子(クサカベノミコ)を産んだ…」

「ウノノヒメミコはコノハナサクヤで、オオタノヒメミコはイワナガヒメというわけだ」
「ウノノヒメミコは、父である天智天皇に義父を粛正され、天智が死んだ(天武による暗殺説あり)あとに兄の大友を夫である天武天皇に殺された」
「壬申の乱ね」
「オオタノヒメミコは天智存命中に死に、ウノノヒメミコは天武が死んだあとに持統天皇になるが、オオタノヒメミコの子であるオオツノミコを粛正してしまう」
「そうなんだ」
「自分の息子の方が可愛いでしょ?」
「でも、クサカベノミコは27歳で死んでしまう」
「そのあとは?」
「持統のあとは、クサカベの息子である文武、元明(クサカベの妻・女帝)、元正(クサカベの娘・女帝)、聖武(文武の息子)、孝謙(重祚して称徳、聖武の娘)と続くけど、次の光仁天皇(大友皇子・弘文天皇の息子)から天智天皇の濃い血統に戻るんだ」
「天武がウノノヒメミコを選んだゆえに、半島からの養子である天武天皇の血が孝謙天皇で途絶えてしまう…それをコノハナサクヤとイワナガヒメの話に充てたんじゃないかな?」
「なるほどね。本当の永遠の命という話ではなく、血統の話なんだね」
「僕はそう思うんだ」
「私も同じよ」
「気が合うね」
「邪馬台国は?」
「ああ、忘れていた」

つづく

参考資料:「歴代 天皇・皇后総覧」(新人物往来社)、「集英社版 日本の歴史 古代王権の展開」吉村武彦(集英社)、「らくらく読める古事記」島崎晋(廣済堂出版)、「日本書紀 上・中・下」山田宗睦 訳(ニュートンプレス)、「歴史のなかの天皇 吉田孝」(岩波新書)、「日本の古典をよむ(3) 日本書紀 下 風土記」(小学館)、「詳説 日本史研究」(山川出版社)


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