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「妄想邪馬台国」4

豊葦原では大きな争乱があった。

アマテラスが高天原の天の浮橋から地上を見ると、騒がしいので、八百万の神々を集めて「地上は争いが絶えぬようだから、これを治めるにはどの神を地上に降ろせばいいのか?」と神々と相談した。

結局、天菩比神(あめのほひのかみ)を地上に降ろすと、アメノホヒはオオクニヌシに媚びるばかりで、彼からは三年も音沙汰がなかった。

天若日子(あめのわかひこ)を地上に降ろしたが、彼はオオクニヌシの娘、下照比売(したてるびめ)と結婚して、オオクニヌシの国を自分のモノとしようと考え、八年経っても高天原には何の連絡もなかった。

高天原から鳴女(なきめ)という雉を地上に飛ばして、アメノワカヒコに連絡しようとしたが、アメノワカヒコは、雉の言葉に耳を貸さないばかりか鳴女を射殺してしまう。

矢は雉を貫いて高天原まで飛んだ。矢に血がついていたので事を察した高御産巣日神(たかみむすびのかみ)は矢を地上に返すと、アメノワカヒコの胸に突き刺さった。

アマテラスは建御雷神(たけみかづちのかみ)を天鳥船神(あめのとりふねのかみ)伴わせて地上に降ろした。

ふたりはオオクニヌシに会い「お前の国は私の子が治めるべきだが、お前はどう思う?」と問うと、「私は答えられない。私の子の事代主神(ことしろぬしのかみ)が返事をするでしょう」と言うので、アメノトリフネがコトシロヌシを呼び寄せると、コトシロヌシは父のオオクニヌシに「この国は天つ神の御子にお譲りしましょう」と言って、乗っていた船を靑芝垣(あおふじがき)に変えて、その中に隠れてしまった。

タケミカヅチがオオクニヌシに「他に意見を述べるような子はいるか?」と聞くと、「建御名方神(たけみなかたのかみ)がいます。他にはおりません」と答えているときに、そのタケミナカタが大岩を手に載せてやって来た。

タケミナカタはタケミカヅチに「力比べをしよう」と言ったが、結局はタケミカヅチの力に恐怖して科野国の州羽の海(しなののくにのすわのうみ:今の長野県諏訪湖)に逃げてしまった。追いかけてきたタケミカヅチに恐れをなして「この国を献上しますから殺さないで下さい」と言った。

オオクニヌシは「息子たちが従ったのだから私も背くつもりはありません。この葦原中国を献上いたしましょう」と言い、さらに「せめて私の住むところだけは天つ神の御子が住むような立派な宮殿を建てて下さい。私たちは宮殿に籠もって暮らしましょう」と言った。

長い話だったが、以上の内容を異能が説明し終わると僕はため息をついた。

「これがオオクニヌシの国譲りだよ」
「長い話だったな。神話だからか、モラルのない裏切りの連続で、善人がひとりもいない救いのない話だよな」
「昔の人にモラルなんてないわよ」治子が珍しく怒っている。
「今だってモラルのあるような世の中じゃないわ。男尊女卑、民族、経済的な差別が続いているこの国でさ、そんな国の古代にモラルのモの字もあるはずがないのよっ!」と言ってコタツを叩いた。
「まあまあ…」異能が治子の肩をなでてなだめようとすると、治子が「何すんのよっ!」と言うや異能の右頬に治子の平手打ちが決まった。
「ぎゃあっ!」異能が自分の後ろにある本棚に頭をぶつけると、本棚が揺らいでたくさんの本が落ちてきた。

つづく



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