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老いという名の幻肢痛
執筆時点で34歳。まだまだこれからだといわれる一方で、老いの足音も少しずつ聞こえている。肩や腰がミシミシと鳴る。頭は冴えているほうだと思うが、寝不足の時などは言葉に戸が立つことがたまにある。老いというものについて考えることも増えた。
少し前に若年の落語家さんたちと一緒にお笑いライブをした際に、桂源太さんが噺の中で演じていた女性が妙に艶やかで、なんなら少しHな気持ちになった。対して高齢の落語家さん
自炊について:カスのブイヨンで作るカスのリゾット
自分でいうのもなんだが、金を稼ぐこと以外は生活力があるほうだと思う。中でも自炊は得意だ。それも、スパイスカレーに凝ったりやおら蕎麦打ちに没頭するタイプの料理好きではなく、スーパーで安くなっているものと冷蔵庫の中のものを組み合わせて適当に食べるという感じの自炊家である。なので「料理家」ではない。究極のチャーハンやペペロンチーノは大学のころに卒業しており、いまは乳化に興味はなく火力も中火くらいでやらせ
もっとみる論破のハイウェイを逆走する
論破という言葉は辞書においては「議論して相手の説を破ること。言い負かすこと。」などと説明されているが、最近では「敵対者を閉口させる」ための手段として、半ば政治化している。今後、論破の手段はさらに共有され、論破術のようなものが広く流布するようになると予想されるが、お笑いを含めてコミュニケーションに付加価値が生まれるような場面では論破術はむしろ反面教師となる。他人の口が半永久的に開いたほうがよいのだか
もっとみる関西最大のホームセンターで心がションベンになってシャイニングしかけた話
大阪府は松原市にあるハンズマンというホームセンターがすごいらしい。並大抵のホームセンターとは大きさが桁違いで、店内はテーマパークみたいな内装になっているという。これは行くしかない。
住んでいる西成区から松原市までは自転車で1時間半ほどかかる。このくらいの時間は全く気にならない。自転車を走らせながら考え事をしたり、沿道の植物を調べたり、目力看板を探したりすれば一瞬だ。途中に大和川という大きな川を横
感情に順序を埋め込む
順序と争い
芸人の世界には結構明確な序列があって、結局のところ「いくら稼いでいるか」であらかたの批判やヘイトを吹き飛ばすことができる。酒を飲みながら「あいつは面白くない」とくだを巻いたって、結局稼いでないのなら負け犬の遠吠えになる。「過去に賞レースで結果を残したが、今は稼いでいない人」の話をすると、たいてい芸人は苦い顔をする。やはりプロップスよりも収入が正義の世界なのだという感じがするし、しかし
神話と西洋的マゾヒズム 『オッペンハイマー』感想(ネタバレあり)
クリストファー・ノーラン監督の映画『オッペンハイマー』を見た。先輩芸人の森田GMさんから「見たら草山の感想が聞きたい」と言われたのだが、LINEで送るには文章が多くなりすぎるので、いっそのことnoteに書いてしまおうと思った。
たぶんかなりトンチンカンで変なことや、逆に「そんなことその辺の考察ブログに書いてるわ!」という初歩的なものも書いていると思う。あんまり映画や漫画の考察は読まないようにして
「シェア語」のふるい
M-1の公式YouTubeアカウントで去年の決勝の動画がアップロードされた。
上のヤーレンズさんの動画のコメント欄を見ると、タイムスタンプとともにどのボケが好きかを書き込んでいる人が多い。「(投げっぱなしを含めて)とにかくボケ量の多い漫才」はこういうYouTubeのコメントとの相性がとてもいいと再確認した。ナイチンゲールダンスさんやタイムマシーン3号さんがYouTube ShortsやTikTo
霊現象に関する立ち位置と最終完全回答
芸人をやっているので、幽霊に関する仕事やライブの話が来たりする。始めたての頃は何でもチャレンジしたほうがいいと思って受けたりしていたけど、最近は逆に避けるようにしている。あるいは、これは仕事に関係なく「幽霊を信じているか?」という質問をされることがあって、毎回おんなじ回答をして、似たような問答に発展するのが面倒くさいので、全部書いておくことにする。今後「これ読んどいて。全部書いてるから」と渡すため
もっとみる皮肉の責任は誰にあるか
ここはとあるレストラン。テーブルにはメニューもなく、値段もわからない。客はその場に運ばれてきた料理を食べ、請求された金額を支払って出ていくシステムになっている。
あなたは初めてその店に来て席に着いた。周りを見ると、黙って食べている人もいれば、困惑している人や、顔を真っ赤にしている人もいる。しばらくして運ばれてきたのは、高級そうな皿に、見慣れた食パンがひときれと、およそ食べ物とは思えない見慣れない
10/29 M-1三回戦@祇園花月レポ
はじめに:祇園花月の予備知識京都にある祇園花月という劇場は八坂神社のすぐ近くにある。M-1三回戦を控えた芸人が気もそぞろに早く上京し、時間つぶしのために参拝する風景がよく見られる。しかし、これをやっている芸人はその年に初めて三回戦に進んだ芸人だとバレてしまう。なぜならば八坂神社への参拝はM-1が終わると自動的になされるものであり、わざわざ鳥居をくぐる必要はないからだ。
「芸人」に用いられる芸の字
家でキャベツが待ってるんで
去年から家でザワークラウトを常備している。ザワークラウトはキャベツを乳酸発酵させてつくる漬物のことで、ドイツ語で「酸っぱいキャベツ」を意味する。「クラウト」はキャベツのことで、「ザワー」は英語の「サワー」と根っこでつながっている。
発酵というと難しそうに感じるかもしれないが、要は「よくない菌が繁殖する前にいい菌に先に征服してもらう」という発想なので、その「いい菌」が強大な軍事力を持っている場合、