自炊について:カスのブイヨンで作るカスのリゾット

自分でいうのもなんだが、金を稼ぐこと以外は生活力があるほうだと思う。中でも自炊は得意だ。それも、スパイスカレーに凝ったりやおら蕎麦打ちに没頭するタイプの料理好きではなく、スーパーで安くなっているものと冷蔵庫の中のものを組み合わせて適当に食べるという感じの自炊家である。なので「料理家」ではない。究極のチャーハンやペペロンチーノは大学のころに卒業しており、いまは乳化に興味はなく火力も中火くらいでやらせてもらっている。

今日は私がよく作るカスのブイヨンと、それで作るカスのリゾットについてお教えしたい。

固形ブイヨン(およびガラスープなどベースを底上げする調味料)を使いたがらないシェフが多いのは、単に化学調味料アレルギーというよりも、全部同じ味になるからだと思う。ウェイパーも非常に強力な調味料なのだが、だんだん「ウェイパー味」に飽きてくる。そういう理由でここ何年かはコンソメを買っていない。私はカスのブイヨンを作ることができるから不要なのだ。

ブイヨンは香味野菜と肉を煮て作るだしのことである。本来はフレッシュな野菜やハーブを使用するのだが、そんなことをしていたら固形コンソメを買うより高くつく。よって普段の料理で出る野菜くずを冷凍しておいて、安い鶏ガラを見つけたらその都度ブイヨンを取る。

例えばアブラナ科の野菜の芯や端材。ネットではあまり向かないとされているが、個人的にアブラナ科植物の香りが好きなので関係ない。ブロッコリーの茎は食べるようにしているが、その周りにある硬い皮や、そもそも茎に”す”が入っている場合はそのまま冷凍庫にインしておく。キャベツの芯や周りのしなびた葉もいい。

ネギの青い部分も使わないなら冷凍庫にイン。葉をしごきとったローズマリーの枝。アスパラガスの皮。古くなったハーブ。玉ねぎの硬い皮。梅肉を取り去った梅干しの種。ニンジンのへた。なんでもポンポン入れていき、たまったら鶏ガラを買ってきて水と一緒に煮て、タッパーに入れて冷凍しておく。丸鶏とフレッシュな香味野菜で作るプロのブイヨンには遠く及ばない貧乏人のブイヨンだが、十分旨い。

このしみじみとしたうまさを感じられるのがリゾットだ。ここで作るのもプロのリゾットではない。プロのリゾットは、横でブロード(だし)を温めておき、それを少しずつ加えて作る。そんなまどろっこしいことはしていられない。

適当な野菜を細かく切り、油で炒める。そこに生米を投入して油となじませ、そこにタッパーに冷凍しておいたカスのブイヨンをドゴーンと投入していったん強火で溶かす。このとき動物性のたんぱく質が恋しかったらツナ缶でも入れておけばいい。溶けたら中火で適当にほったらかす。時間なんか計ったことがない。とにかくいい感じになったら食う。ここにちょっといいオリーブオイルやちゃんとしたチーズを加えるともちろんおいしいが、高いので入れない。リゾットは生米を油で炒める工程をちゃんとやっておけば、ブロードを温めておかなくてもそこまで失敗しないものだ。逆にここをさぼるとおじやみたいになるし、米から出るデンプンの粘度で吹きこぼれるので面倒くさい。テフロンパンで作ると洗い物も楽でいい。

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