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【第7話】底辺クリエイターからディズニーのクリエイティブディレクターへの道

TVCMへの挑戦

一橋グループ大手出版社の映像制作チーム「A社」に入社して約1年経ったある日…
とあるプロデューサーが「TVCMの競合プレゼンに挑戦したい人いる?」と皆に募った。

競合プレゼンの相手は大手広告代理店のクリエイティブディレクターや有名CM監督ばかりだ。

普段「映画」や「アニメ」ばかり制作しているチームメンバーは皆「畑が違う」と沈黙していたが、私と先輩Mさんの2人が手を挙げた。

私はキャリアパスとして「CGという特定ジャンルのクリエイター」で終わるつもりが無かった。

企画プレゼンも出来る、絵コンテも描ける、デザインもできる、CG制作もできる、実写撮影もできる、音楽制作もできる、ポスプロ作業もできる、結果検証もできる…

そうして
クリエイター▶︎ディレクター▶︎プロデューサー▶︎チーフクリエイティブorブランディングオフィサー
となっていく「20年計画」を立てていた。

クリエイターなど「一部の天才」を除いては、いつか若い才能に駆逐されるもの。
そう考えていた。

今回は明らかに「チャンス」なのである。

競合プレゼンに向けて

私と先輩Mさんは1週間後に「企画コンテ」を提出する事になった。

それから1週間はレギュラーの仕事の合間に「企画コンテ」を描きまくった。

おそらく50案位は描いたと思う。

そして提出日の金曜日夜。
私と先輩Mさんはひとりずつ会議室に呼ばれた。

私は前日の晩に徹夜して厳選した「3案」を持ってプロデューサーの待つ会議室へ入った。

20人が座れる大きな会議室に、テーブルを挟んで対峙する私とプロデューサーの2人きり。

企画コンテ3枚を渡すと、約1分間の沈黙の後に
ビリビリビリ…

プロデューサーは私の企画コンテを破り捨てた。

「こんなの細かく見る価値もない」
「今回はMの企画をブラッシュアップして挑む」
「お前はこんなんで良いと思ってんの?」

私は一瞬呆然としたが「ああ、ひとりのプロデューサーを納得させる事さえできなかったんだなぁ」と自分が情けないと同時にとても悔しかった。

ただ自然と…
「企画はMさんで承知しました」
「ただ、厚かましいお願いで大変恐縮なのですが、今夜企画を再考しますので明日朝イチで見て頂けますか?」

とお願いしていた。

プロデューサーは
「見るだけだったら良いよ。でも見る価値のある企画にしろよ」
と言った。

私はデスクに戻ると早速企画を再考し始めた。

正直、徹夜2連チャンで頭はボーっとしていた。

一方で、私の企画は「自分が面白い・やりたい事が優先で、クライアント・商品が二の次になっていないか?」と考え始めた。

商品価値を最大限に引き出す印象的に魅せるストーリーは?演出は?カット割りは?コピーは?レイアウトは?予算内で可能な事は?

全てをゼロから見直して、翌朝8時に新企画を厳選「5案」用意した。

朝10時、出社したばかりのプロデューサーを捕まえ、再考した企画を見てもらう。

プロデューサーは一言…
「どれも良い企画だよ。頑張ったな」
と告げた。

私のTVCMへの初挑戦は、
競合プレゼンどころか、社内の競争にすら勝てなかったが、
徹夜で考え抜いた「TVCMとは」は今でも価値のある経験だったと思う。

そして次の日プロデューサーから
「今回はMのアシスタントとして競合プレゼンに同行しな」
と言われた。

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