#小説
短編【待ってて、チャオ】小説
私の全てだったロック・バンド『メテオストライクス』のチャオが死んだ。このビルから。三年前の今日。チャオは飛び降りて死んだ。
チャオのギターの旋律を失った『メテオストライクス』は程なくして解散した。この三年間、私の心の拠り所は『メテオストライクス』が残した三枚のアルバムだけだった。毎日毎日、私は聞き続けた。チャオのギターを。私の頭の中では、いつでも、どこでも、チャオのギターが鳴り響いている。
ど
短編【ストレス発散秘密倶楽部】小説
私は大手デパートのクレーム処理課に勤めて15年になる。毎日毎日さまざまなお客様のクレームを私は対処している。
クレームと言っても会社をより良くする為の材料が隠れているので、おざなりには出来ない。クレーマーとは私にとって会社を、いや、私自身を成長させてくれる有難い存在なのだ。だが常識では考えられないクレームを言いつけてくるお客様もいる。
この前も大福の中に金属が入っていたというクレームがあったが
短編【味覚障害】小説
「ちょっと、痩せたんじゃない?」
佐和子は義理の弟、義光の少しやつれた顔を見て言った。
体調を崩したという連絡があり、義理の姉である佐和子が義光のアパートまで様子を見にきたのだ。
佐和子がわざわざ義光の様子を見に行ったのは、義光が独り者であるという理由もあるが、もう一つ、ちょっとした不安があったからだ。
その不安とは義光がこのアパートに十日前に引っ越しをしてきたという事。
とにかく家賃の安い