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短編小説

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2022年6月の記事一覧

短編【科学者の幸福論】小説

短編【科学者の幸福論】小説

幸福とは何か?いにしえから多くの哲学者や宗教学者が、この出口の無い迷宮に入り込み、答えのない答えを模索して来た。ソクラテス然り、アリストテレス然り。

ソクラテスの幸福論は『生きる事以上に、良く生きる事』を重視した。つまり、ただ日々を生きるのではなく、正しく物事を知る事が即ち幸福であると説いたのだ。

しかし、本当にそうだろうか?知ると言う事は幸福以上に不幸を招くものだと私は思う。悩みというのは知

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短編【回るゴーストライト】小説

短編【回るゴーストライト】小説

一幕。

僕は小説を書いて生計を立てているプロの物書きだ。大学を卒業して、ある小説家に弟子入りをしたのは五年前。今時、小説家になるために弟子入りをするなんて珍しい。だけど、僕はどうしても安西武彦先生の下で文学を学びたかった。僕は安西先生の弟子となり、安西先生の小説のサポートをした。初めは資料集めや取材の手伝いだったけど、いつしか先生の作品も書かせて頂くようになった。つまりゴーストライターだ。僕が書

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短編【バックミラー・ピーピング】小説

短編【バックミラー・ピーピング】小説

《花澤能景の場合》

会社までは車で片道45分の道のり。その間、信号機は9つ。一日平均5回は信号待ちをする。いまの会社に務めて6年になるが、9つ全ての信号機に引っかかるというミラクルは一度しかない。

運転中に信号待ちをするのは軽いストレスになるらしいが私にとって、止まらずに信号機の下を通過する方がストレスになる。いつも信号機に近づく度に『赤になれ!赤になれ!止めてくれ!』と呪文のようにつぶやく。

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短編【節約と倹約の果てに】小説

短編【節約と倹約の果てに】小説

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節約とは無駄を省いて切り詰める事をいい、倹約とはお金や物を遣わない様に努める事を言う。ならば、無駄を省いて切り詰めつつお金を遣わない様にする事を何て言うかご存知だろうか。…それは、ドケチと言う!

私の妻がまさにドケチなのだ!妻は昔からドケチだった訳ではない。結婚当初は、それはそれは可愛い女だった。私の財布の中身をチェックして小遣いが足りなければソッと入れ足していたりもしていたのだ。

そん

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短編【レッテル】小説

短編【レッテル】小説

一年間の講演回数42回。取得した資格は134。執筆した本は180冊以上。

私がこれまでどんな本を書いてきたのかというと【頭が良くなるイメージ将棋】【三日坊主ジョギング入門】【細胞から変える、超深呼吸美容法】。将棋の本を書いたりジョギングの本をかいたり美容法の本をかいたり、とにかく色んな本を書いている。

だから、周りの人から「先生は子供の頃から頭が良かったんでしょうね」と言われる。だが、実は小学

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短編【ネット検索】小説

短編【ネット検索】小説

「突然だけど、今日、お前の家に泊めてくれないか?」
ゼミ終了後、宮川了に飲みに誘われて大学近くの居酒屋【春夏酔陶】にやってきた平田篤史は、開口一番に言い放った宮川の言葉に少し驚いた。

「え?いいけど、いきなりどうした?その年で家出か?」
「みたいなもんだ」

宮川了と平田篤史は大学で同じゼミナールに通う二年次生で気が合い、いつしか互いに飲みに誘う仲になっていた。平田は地方から出てきてアパートに住

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短編【お婆ちゃん店員】小説

短編【お婆ちゃん店員】小説

「合計で713円になります。レジ袋は」
「あ、結構です。ありがとうございます」
そう言って綾部美香は千円札を出した。そして「大変ですね、お疲れ様です」と、つい言ってしまった。

言われたレジ店員は、照れ笑いなのか苦笑いなのか微妙な笑顔を作って「287円のお釣りでございます」と言った。

綾部美香はお釣りと商品を受け取って、なんだか居た堪れない気持ちになった。目の前のレジ店員が、自分の亡き祖母と同じ

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短編【願いが叶うまで】小説

短編【願いが叶うまで】小説

「まだ、胃は痛みますか?」
「少しは良くなりましたけど、まだ少しシクシク痛みます」
「夜は眠れますか?」
「最近はあまり眠れません」
「そうですか」
「先生、この胃の痛みは何なんですか?」
「ストレスですね」
「ストレス?」
「少し、お仕事を休んで、のんびり過ごしてみて下さい」

ストレスぅぅぅ!!冗談じゃない!自慢じゃないけど、俺は今まで一度もストレスを感じた事はない!思った事はズバズバ言うし、

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短編【左の親指】小説

短編【左の親指】小説

「佳乃とこうやってカフェでお茶するのも久しぶりだね~」
「ほんと。高校以来だね」

日曜日の昼下がり。梓と佳乃は四年ぶりに会った。都内のお洒落なオープンカフェで待ち合わせて舌は満たされるが腹は満たされないカロリーの低いランチを食べ終わり、デザートが来るのを待っている。互いが互いに綺麗に垢抜けちゃって、なんて思っている。

「まさか同じ区内に住んでいたとは。フェイスブックがなかったら知らないまま過ご

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短編【蘇った猫】小説

短編【蘇った猫】小説

「どうします?これ・・・」
「どうしますって・・・。お前がちゃんと持たないからこうなったンだぞ!」
「ええ!何言ってんすか!先輩がドンドン進むからでしょ!」
「何をぉぉぉぉぉ!」

ヤツとパートナーを組んだ時からいやーな予感がしていた。ヤツの体重は俺より23キロも少ない54キロ。こんなもやし野郎に勤まるほど引越し屋は楽な仕事じゃない

いやーな予感はずばり当たった。二人で箪笥を運んでいる時に、手が

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短編【英雄の嘘】小説

短編【英雄の嘘】小説

『氷上のチェス』と呼ばれるスポーツをご存知だろうか。その名はカーリング。氷の上で行われるウィンタースポーツだ。4人1組で行ない、4人のうち1人がストーンと呼ばれるカーリング専用の玉を滑らす。ウィーパーと呼ばれる2人が氷の床の表面をカーリングブラシで掃きながらストーンをコントロールし、ハウスと呼ばれる円の中に入れる。最後の一人が司令塔になり、戦略を考えて指示する。

『氷上のチェス』と呼ばれるのは、

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短編【聖母の秘密】小説

短編【聖母の秘密】小説

「先生!私たちは愛し合っているんです」
「だけど先生、僕たちの間には大きな壁があるんです。その壁を先生の力で消してください!」
「お願いします!」
「お願いします!」

私の目の前に座っている患者は典型的な解離性同一性障害。つまり二重人格だ。彼女が私の所で診察を開始してから半年になる。非常に稀な症例で、彼女は第二の人格『エイジ』を恋愛の対象としてみているのだ。そして、『エイジ』も、彼女のメイン・パ

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短編【ハチノス】小説

短編【ハチノス】小説

「うわぁ。先輩…」
「どうした」
「これは、また…」
「びびってんのか」
「いえ、びびってるっていうか、でっかいですね~。写メ撮っていいスか?」
「駆除してからな」
「それにしても、でかいですね」
「うん。俺もココまででかいスズメ蜂の巣は見たことない」
「入りますかね、収納ボックスに。割って入れますか?」
「いや、たしか四号サイズのボックスが有った筈だから、それに収納しよう。ここまで立派だと壊すの

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短編【多人称小説】小説

短編【多人称小説】小説

貴方は小説が好きで暇つぶしに、この小説を読んでみようと思った。もちろん面白くなければ途中で読むのをやめようと思っている。面白かったから『スキ』マークくらいは送ってやってもいいと思っているし、フォローしていなければ、してやっともいいと思っている。この小説の作者は他にもいろいろ書いているみたいだから、暇があれば読んでやってもいいとも貴方は思っている。

小説には『一人称視点小説』と『三人称視点小説』と

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