見出し画像

短編【ハチノス】小説

「うわぁ。先輩…」
「どうした」
「これは、また…」
「びびってんのか」
「いえ、びびってるっていうか、でっかいですね~。写メ撮っていいスか?」
「駆除してからな」
「それにしても、でかいですね」
「うん。俺もココまででかいスズメ蜂の巣は見たことない」
「入りますかね、収納ボックスに。割って入れますか?」
「いや、たしか四号サイズのボックスが有った筈だから、それに収納しよう。ここまで立派だと壊すのは勿体ない。綺麗に洗浄して、オフィスに飾ろう。社長、喜ぶぞ」
「そうスね。いやぁぁ、ほんとにでかいすね。10キロは有るんじゃないですか?」
「俺も害虫駆除の仕事をして長いけど、ここまででかいスズメ蜂の巣は初めてだな」
「しかし、こんなにでかいと気持ち悪いですね」
「脳味噌みたいだな」
「え?」
「いびつな球体に、この波打った模様。なんか脳味噌みたいじゃないか?スズメ蜂の巣って」
「ん~。言われてみれば、そんな感じはしますけど」
「俺、前々から思ってたんだよな~。スズメバチの巣って脳味噌みたいだって」
「変なこと考えますね」
「よし!この馬鹿でかい蜂の巣をボックスに入れて次の現場に行こう。壊さないように入れろよ」
「はい」

驚いたな。まさか感づいてしまう地球人がいようとは。女王蜂が蜂達を支配していると地球人たちは思っているが、実は違う。蜂達を支配しているのは、我々、ハチノスなのだ。女王蜂は兵士達を製造する工場にすぎない。我々はこの美しい星、地球を支配する為にやってきた。この星の原住民の言葉を借りれば、エイリアンだ。なぜ、我々が支配に踏み切ったのか?それは、この星、地球が望んだからだ。人類は地球を破滅に導いている。もう、人類に地球を支配させるわけにはいかない。まず、我々は手始めに社会性と序列が整っている生物、スズメ蜂を支配した。スズメ蜂のDNAに入り込み、世界中のスズメ蜂を殲滅し、生態を乗っ取った。そして、スズメ蜂の巣に身体を変えて、スズメ蜂達をコントロールしているのだ。つまり、【スズメ蜂の巣】の形をした我々は、蜂達の司令塔、脳味噌といってもいい。今、全世界にある【スズメ蜂の巣】は全て、我々べッチョ・ベロンチョ・ベロマッチョ・パパポイ・ポポイ・ポポマッチョ星人なのだ。我々べッチョ・ベロンチョ・ベロマッチョ・パパポイ・ポポイ・ポポマッチョ星人はスズメ蜂の巣に姿を変えてこの地球を、うげ!!

「あ!!」
「どうした」
「すみません。ボックスに入れようとしたら蜂の巣、割れちゃいました」
「も~。気をつけろって言ったのに!」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?