マガジンのカバー画像

本のこと

11
読書についての覚え書き
運営しているクリエイター

記事一覧

【新刊】『人形歌集 羽あるいは骨』 川野芽生/中川多理

【新刊】『人形歌集 羽あるいは骨』 川野芽生/中川多理

『人形歌集 羽あるいは骨』ができるまで

まさに企画が生まれた瞬間のお話です。
こちらもぜひご覧ください。

川野芽生『かわいいピンクの竜になる』

川野芽生さんから初のエッセイ集『かわいいピンクの竜になる』を御恵贈いただきました。左右社さんでのweb連載を楽しみに拝読していたのですが、この度一冊の本に纏まったとのこと。おめでとうございます!(現在#1のみ無料公開されています。)
#3章 「人形は

もっとみる
#今年のベスト本・漫画・映画

#今年のベスト本・漫画・映画

#2023年上半期の本ベスト約10冊

『サハリン島』チェーホフ
『サガレン 樺太/サハリン 境界を旅する』梯久美子
『春と修羅』宮沢賢治
『薔薇色の脚』中川多理人形作品集
『地図と拳』小川哲
『安西冬衛全詩集』安西冬衛
『タタール人の砂漠』ブッツァーティ
『迷宮遊覧飛行』山尾悠子
『ルイーズ・ブルジョワ 糸とクモの彫刻家』エイミー・ノヴェスキー他
『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』坂本龍一

もっとみる
日々是徒然『人形歌集 羽あるいは骨』 川野芽生 人形◆中川多理/中川多理展「廃鳥庭園~Le Jardin abandonné」頌①

日々是徒然『人形歌集 羽あるいは骨』 川野芽生 人形◆中川多理/中川多理展「廃鳥庭園~Le Jardin abandonné」頌①

 此の歌集には、
飛び去りし春丸をみるみこの眼をする水無月のLighthouseは〈高丘親王〉

の歌がある。中川多理が、澁澤龍彦の「高丘親王航海記」に寄せて制作した高丘親王の人形を詠んでいる。M音の長閑き音律があって、最後に出てくるLighthouseは、展示のときの、船に乗った白い親王が、幻想を表するものたちの一つの指針/灯台のようになっていることをどこかで写しているようにも思える。人形と原作

もっとみる
メルカリ転売者②・続き

メルカリ転売者②・続き

ヤフオク・メルカリ等、フリマ系プラットフォームを悪用した、第三者による不当な転売が後を絶ちません。

メルカリには出版社直販で作品集を卸しています。直販(一次販売)で適正価格で出品する事によって、転売屋の商品に手を出す人が実質居なくなる事を目的としています。 

この辺りはこちらも併読ください。様々な転売屋対策に皆頭を悩ませています。
(「サイン本を1万冊制作して物理で価値を下げる」が豪腕でした…

もっとみる
メルカリ転売者①:anyaネコネコ

メルカリ転売者①:anyaネコネコ

1:事の起こり

こちらの記事のメルカリアカウント:anyaネコネコは「松井冬子サイン入り夜想」の頃からパラボリカ・ビスを狙い打ちし、作家サイン本を展示会場で入手しては高額転売を繰り返しています。

フリマアプリ「メルカリ」で anyaネコネコさんが販売中

素知らぬ顔で展示会場に現れては、作品のファンの素振りをしつつ会場限定本を入手して、メルカリで高額転売しています。

作品を観に来てくださった

もっとみる
日々是徒然○[映え]と[転売]

日々是徒然○[映え]と[転売]

チョコジーは浅草千束通り、中頃左側にある週末だけ開いている乙女カフェ。開いているのは週末だけ。それでも時々は休みになる。長野で農場を作ってもいるのでその作業でお休みのこともある。今週のスケジュールを木曜日に確認するのが習慣になっている。インスタグラムに上がると、「お客さんは1人でおいでください。常連の方は今まで通りで…」というようなことが書かれてある。
また何かあったのかなと少し憂慮する。

チョ

もっとみる
『サガレン 樺太/サハリン 境界を旅する』より宮沢賢治『春と修羅』へ

『サガレン 樺太/サハリン 境界を旅する』より宮沢賢治『春と修羅』へ

梯久美子:著『サガレン 樺太/サハリン 境界を旅する』は、ある想いを持ってサハリンを目指した作家達の軌跡を辿る旅の記録です。目指すというよりも、その時樺太/サハリンへ行かざるを得なかった作家としてチェーホフ、そして宮沢賢治の道程を追っています。



以前、宮沢賢治の詩から連想して「薄明穹(はくめいきゅう)」をテーマに「水琴窟」という鈍色に光る眼の、方舟のような作品を制作しました。賢治の詩には何

もっとみる
『ゴールデンカムイ』からチェーホフ『サハリン島』へ

『ゴールデンカムイ』からチェーホフ『サハリン島』へ

PASSAGEの書棚で「樺太/サハリン」特集を組んでいます。
昨年完結した『ゴールデンカムイ』連載を追いかけながら、いつかロシア”極東の玄関口”ウラジオストク、あるいは”樺太”サハリンを訪れてみたいと思っていました。

しかし、ロシアによるウクライナ侵攻が始まり、それも叶わぬ事となりました。サハリンはビザこそ必要なものの、稚内からコルサコフまで定期連絡船で4時間半、往復36,000円で行けたのです

もっとみる
『私が選ぶ国書刊行会の3冊』

『私が選ぶ国書刊行会の3冊』

国書刊行会創業50周年記念小冊子『私が選ぶ国書刊行会の3冊』に寄稿いたしました。錚々たる顔触れの選者の一人として加えて頂き光栄です。創業40周年の記念冊子を手にしていた時は(あれから10年…!)まさかこんな日が来るとは思ってもいませんでした。

私が選書したのは
・『山尾悠子作品集成』山尾悠子
・『腐爛の華』ジョリス=カルル・ユイスマンス 田辺貞之助訳(新装版)
・『ネクロフィリア』ガブリエル・ヴ

もっとみる
PASSAGEーポール・エリュアール広場2番地

PASSAGEーポール・エリュアール広場2番地

このたび神保町PASSAGE by ALL REVIEWSで一棚書店の店主になりました。
ポール・エリュアール広場2番地(入り口右手3列目・1番上)です。その時気になっている本、好きな本を紹介しています。是非訪れてみてください。

以前から気になっていたのですが、ポール・エリュアールの棚が空いていたので思わずゲットしました(書架の一番上で、おそらくちびっ子には脚立必須なので、良き場所が空けば引っ越

もっとみる
川野芽生『無垢なる花たちのためのユートピア』 読了

川野芽生『無垢なる花たちのためのユートピア』 読了

読書についての覚え書き。

はっきりいって裁判中は、膨大な訴訟関連書籍・資料の読み込みと組み立てに脳のリソースを使うので、同じ文章といえど、文学や物語を読むことが全くできませんでした。その中において、山尾悠子さんの作品を賜り、薔薇色の脚を制作できたことはとても有り難かったです。何度も読んだ大好きな作品だからこそ、するすると身体に入っていくし、物語と接するリハビリとなりました。(今現在は慣れたので、

もっとみる