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#radiko
『better bitter』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年12月21日(再放送:12月25日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
無知性と無理解を開き直り、現代美術館で作品を鑑賞しながら笑い合う。映画、500日のサマーの様なデートに憧憬を抱き続けていた俺は、あの日、その小さな夢を不意に叶えた。その日出逢った女と。
俺はあの日、鴨川に座っていた。大失恋で脳が揺れている状態の人間は、平気でベタをやってのける。鴨川に腰を下ろした俺は、失恋の傷を一度深く抉るためミスチルのサインを聴く、という禁断のベタも躊躇いなくやってのけた。
『整う恋』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年12月14日(再放送:12月18日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
(居酒屋のざわめき)
女「さっきからその、整うってなんですか?」
男「交感神経と副交感神経っていうのが自律神経にはあるわけさ」
女「はあ」
男「働いてるときや緊張してるとき、ストレスがあるときは交感神経、寝てるときとかリラックスしてるときは副交感神経が働いてるの」
女「こうやってお酒飲んでるときは?」
男「交感神経だね」
女「私リラックスしてますけど?」
男「けど、アルコールは副交感神経を低下さ
『テキトーな会話』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年9月14日(RE:9月18日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
残業を終えた彼女が店に入ってきた。
フライデーナイトの店内は、いつもより賑わいをみせていた。
男 「おつかれ」
女 「パンパンよ」
男 「終わった?」
女 「どれ?」
男 「いや、あれ?」
彼女が言葉を発する前に、表情で答えはわかった。
女 「どう思う?」
あえて聞き返してきた彼女。
やりきったという表情だ。
そして、これ以上は愚問だ。
女 「それで?」
男 「いや~」
女 「そうな
『猫と彼女』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年9月7日(RE:9月11日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
夜中に一人、部屋でボウモアをロックで飲んでいると飼い猫が話しかけてきた。
猫「最近彼女来ないね」
やれやれ。
このシングルモルトは40度もあるんだ。5杯も飲めば猫が話しかけてきてもおかしくない。
猫「どうして彼女は来なくなったんだい?」
猫は大きな目をしてこっちを見ていた。
「君にまだ言ってなかったね。彼女とはもう終わったんだ」
僕は猫に伝えた。
猫は悲しい顔をした。
猫「つまり彼女
『バルコニーからの眺め』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年7月27日(RE:7月31日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
「はい」
「ちょっと冷たいよ!」
「キンキンに冷えてるでしょ」
彼女はいたずらっぽく僕の頬に缶ビールを押し付けた。
(缶ビールを開ける音が2回なる)
「かんぱーい」
「んーおいしい!」
バルコニーのデッキチェアに座って僕らは緑の缶ビールを飲んだ。
彼女はいつも緑の缶ビールだった。
「うん、ビール飲んでるって感じする」
そう言って今度は自分の頬に缶ビールを押しあてた。
その日はとて
『隣の席』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年7月13日(RE:7月17日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
(博多座のロビー)
(開演前)
友人に連れられて博多座にきた。
九州のとある港湾都市にある造船所で働く男。造船会社で巻き起こる様々な逆境や二人の子供を育てる家庭の問題に立ち向かいながら笑いと涙で描く愛の物語、だそうだ。主演の博多華丸さんが和太鼓やタップダンスに挑戦しているというのも話題だ。
お芝居を見に行くのは何年ぶりだろう。僕は友人に連れられてやってきたのだった。
「ちょっと、トイレ」
『もとに戻らず、前に進む』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年7月6日(RE:7月10日)オンエア分ラジオドラマ原稿)
夜が、記憶の夜より、暗いのは夜のせいじゃない。
ましてや、夜が短いのは、夜がそうさせたわけでもない。
いつからだろう。
何かに怯えながら
毎日を過ごすことに慣れてしまったのは。
どこからだろう。
僕たちは、まっすぐ続くと思っていた道が、
スタートもゴールもわからない道になっていたのは。
いまとなっては、何もかもが思い出せない。
でも、きっと僕らは、また…。
(ふたりは居酒屋のカウン
『角田輝夫の運命の女性』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年6月22日オンエア分ラジオドラマ原稿)
ああ、恋がしたい!無償に恋がしたい!素敵な女性と恋に落ちたいぃ~!
・・・冒頭からごめんなさい。これが今の、私の心の叫びです。私の仕事場は男ばかりで、女の子との出会いなんてありません。だから女性と恋するチャンスが無いのです。かといってマッチングアプリとか、どうもやる気になれないし、キャバクラとかにも行く気にはなれない・・・。このまま一生女の子と出会わないんじゃないか?そんな不安が毎日押し寄せてき
『彼女の推し』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年6月15日オンエア分ラジオドラマ原稿)
僕の彼女には推しがいる。
しかも推しは男だ。
自分の彼女に僕以外に好きな男がいるというのはいささか問題な気もする。
「大丈夫、推しと恋人は別もんよ」
と口ではいうものの、
「推しと結婚したい。どうしたら結婚できるだろう」
というようなことは言っている。
とはいえ彼女は推しとは結婚はできない。
なぜなら推しは徳川家康だからだ。
「とにかく家康さんって人ができてるの。人がいい。戦国武
『君と飲むソジュ』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年6月8日オンエア分ラジオドラマ原稿)
彼女は韓国料理店でチャミスルを振っていた。
「チャミスルってなんで開ける前に振るか知ってる?」
「あー、ドラマでよく振ってるから振ってました(笑)」
彼女はチャミスルを振るのをやめて笑った。
「あれはね、昔チャミスルの瓶の底には不純物が良く溜まっていたんだ。だから振ってそれを浮かせて、上に上がってきた不純物だけ最初にこぼして捨ててから飲んでたんだよ」
「えーそうなんですね?」
「だから今は
『彼女の横顔』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年6月1日オンエア分ラジオドラマ原稿)
~マイフェイバリットシングスが流れている~
ジャズの流れるバーでは、その店のマスターはたいていおしゃべりである。
「うまいだろ?このラムはネグリタというフランスのラムでね。日本に初めて入ってきたラムなんだ」
そう言ってマスターはネグリタのボトルを僕に見せた。
「このラベルに描かれた少女の横顔がとても人気になったそうだ。何人もの男がこの少女に酔わされたってことさ」
そう言ってマスターは笑っ
オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル『カレーの口』(2021年5月25日オンエア分ラジオドラマ原稿)
僕らはこの春から同棲を始めた。
「好きな食べものは?」
「カレー、ゴーヤチャンプル、あと焼肉。いや~、ごめんね、全然可愛くないよね」
彼女は恥ずかしそうにそう言って笑った。
「全然いいと思うよ。まあ確かにかわいい食べものではないね」
「あと、お味噌汁かな。これも可愛くないか」
「ていうか、かわいい食べ物ってなに?」
「えーパスタとかパエリアとかパクチー」
「パが付いてるだけじゃん笑」
「キム