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『角田輝夫の運命の女性』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年6月22日オンエア分ラジオドラマ原稿)

ああ、恋がしたい!無償に恋がしたい!素敵な女性と恋に落ちたいぃ~!

・・・冒頭からごめんなさい。これが今の、私の心の叫びです。私の仕事場は男ばかりで、女の子との出会いなんてありません。だから女性と恋するチャンスが無いのです。かといってマッチングアプリとか、どうもやる気になれないし、キャバクラとかにも行く気にはなれない・・・。このまま一生女の子と出会わないんじゃないか?そんな不安が毎日押し寄せてきます。あ、申しおくれました。私の名前は角田輝夫。これは私の物語です。
 

 
日々悶々としていた私は、ついに角田大作戦を決行することにしました。角田大作戦とは、地元のバーに行き、そこのお店の常連になり、やがて素敵な女性と出会うという作戦です。駅前のビルの路地裏に、目星のバーがあります。一見さん以外は入りづらい門構え。私は、こういうお店に一人で行くのは初めてでした。


 
ふー、落ちつけ。大丈夫だ。
なんてことはない、ただお店に入るだけだ、角田行け!
頑張れ角田!扉を開けるんだ角田輝夫!


(勢いよく扉を開ける)

 
思った以上に強く扉を開けてしまった。
バーのマスターは驚いた顔でこちらをみた、が落ちついた声でこう言った。

 
「いらっしゃい」
 

 
落ちつけ落ちつけ角田。私はゆっくりカウンターに座った。


「○×△○×△?」
「え?」
「○×△○×△?」
「あ、えっと・・え?」
「なに飲みますか?」
「あ、飲み物?あ、えっと・・じゃあ、モスコミュール」
「○×△」
 

マスターは恐ろしいほど滑舌が悪かった。

 

「○×△○×△」
「ああ。はい・・」
「○×△○×△」
「・・なるほどですねぇ・・・」
 


すごい話しかけてきてくれるけど、全然わからない。どうしよう
・・と思ったその時、彼女が現れた。
 
 


「マスターモスコ~」
「あいよ」
「ああ!お客さんも同じもの飲んでる~!やっぱ王道のモスコミュールだよね~」
 


彼女はすでに酔っぱらっていた。
どうやらここの常連のようだ。

そして、同じ飲み物を飲んでると言う理由で、私の隣に座った。
顔も、雰囲気も、私のタイプだった。

 
「乾杯~」
「あ、か、乾杯~」
 
 

んん?

これはひょっとして、かなり良い展開なんじゃないか?
こんなにも早く理想の展開になるなんて!
これはあれだ!
恋のはじまりってやつだ!

 
「私、まりな!お兄さんは名前はなんていうの?」
「あ、角田です。角田輝夫」
「角田輝夫って!略してカクテルじゃん!」
「え?あ、初めて言われました」

「マスター!この人カクテルさんだよ~」
「○×△○×△」
「なんでよ!失礼じゃないよ~」
「○×△○×△」
「わかってます~」
 

マスターと普通に会話をしている。
すごい。
さすが常連だ。


とその時、彼女の足が、コツンと私の足に当たった。
ふと、彼女をみる。

マスターと話しているが、チラッとこっちを見てニコッと笑った。


・・え、どういうことだ?


・・・そしてもう一度、彼女の足がコツンと私に当たった。そして彼女は再びこちらを見て、微笑んだ。


・・・え、どういうメッセージ?


・・・胸がドキドキしてきた。


今度は私から、彼女の足をコツンとしてみた。すると今度は、彼女が自分の足を私の足にくっつけてきた。
私の心臓は破裂しそうになった。
今、この店で、カウンターの下で、彼女と、私の足はくっついている。
これは、これはもう、足のキスではないか!足キスだ!今、私は彼女と、足キスをしている!これは恋の始まりか?
それとも、私のただの思い上がりの勘違いか?。


そんな事を思っていると彼女は。
 
「トイレ!」
 

と、トイレへ行ってしまった。
ふー、ドキドキした・・。
 


「す、素敵な女性ですね」
 

私は、滑舌の悪いマスターに思わず話しかけていた。

 


「とても明るくて、話してて元気がでます」
「○×△○×△」
「なんか、いいなって思っちゃいました」


「まあ、俺の彼女だけどね」
「・・え?」
「俺の彼女だけどね」
「あっ、え?あ、あ、そうなんですね、あ、へ~、なるほど・・・」
 


あの子は、マスターの彼女だった。
滑舌の悪いマスターだけど、それだけはハッキリと聞こえた。なんだよ、彼女かよ。
なんだよそれ。
あのコツンはなんだったんだよ、あの足キスはなんだったんだよ。
なんだか急に空しくなってきた。
それから私たちは、しばらく三人で話をした。お酒のせいなのか、開き直ったせいなのか、かなり盛りあがってしまい、いつしか私はこのお店の常連になった、あれから数カ月がたち、マスターの滑舌もなんとなく理解し始めたころ、私はついに、運命の女性と出会うのであった・・・。
 


 
「いらっしゃい」
 


おしまい



今回の作品はゲスト脚本によるイシダカクテルでした。

作:山口森広

舞台「夜は短し歩けよ乙女」出演

俳優/ナレーター/劇団 ONEOR8 / 所属 レプロエンタテインメント /ナ・ポリプロピレン /ジ・シゲキーズ / 

Twitter:https://twitter.com/shigeyamaguchi
Instagram:https://www.instagram.com/shigehiroyamaguchi/
Blog:https://ameblo.jp/shigehiro-yamaguchi/



※こちらの小説は2021年6月22日放送(21:00~21:30)
LOVE FM こちヨロ(こちらヨーロッパ企画福岡支部)でラジオドラマとしてオンエア https://radiko.jp/share/?sid=LOVEFM&t=20210622210000

 
 

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